新たな経済の物語:産業革命3.0

インターネット技術と再生可能エネルギーが結合し、パワフルで新しいインフラストラクチャーを創出しつつある。経済学者のジェレミー・リフキン氏は、第3のエネルギー・コミュニケーション革命の5本の柱が、経済成長の新たな大波を引き起こす基盤をどのように創造するのか論じる。

私たちの産業文明は岐路に立っている。産業に支えられた生活を可能にする石油やその他の化石燃料エネルギーは減少しつつある。さらに、そのようなエネルギーによって作られ、推進された技術は時代遅れとなった。化石燃料の上に築かれた産業インフラストラクチャー全体が老朽化し、荒廃している。その結果、世界中で失業率が危険なレベルにまで高まっている。政府も企業も消費者も借金で首が回らず、生活水準は世界各地で急落している。10億人という記録的な数の人々、すなわち人類の7分の1近くの人々が、空腹と飢餓に直面している。

さらに、化石燃料を基盤とした産業活動による気候変動は間近に差し迫っている。科学者たちは地球の気温と化学現象に大変動が生じる可能性を警告している。私たちは今世紀末までに植物や動物の大量絶滅を迎えるという危機に立たされているのかもしれず、そうなれば種としての生存を脅かされるかもしれない。より平等で持続可能な未来に私たちを導く新たな経済の物語が必要だということが、ますます明らかになっている。

コミュニケーションとエネルギーの新たな収束

化石燃料が推進する産業革命はピークを迎え、人為的な気候変動が途方もない規模の世界的危機を招いているという証拠は、1980年代までに山ほど蓄積されていた。私は過去30年間、ポスト炭素時代の案内役を担えるような新たなパラダイムを模索し続けてきた。そして、歴史上で大きな経済革命が起こった時期は新しいコミュニケーション技術が新しいエネルギーシステムと出会った時であるとの認識に至った。新しいエネルギー体制は、より相互依存的な経済活動と拡大した貿易の創造を可能にし、より緊密で包括的な社会関係を促進する。それに付随するコミュニケーション革命は、新しいエネルギーシステムから生まれる時間的および空間的な新しいダイナミクスを組織し管理する手段となる。

19世紀、蒸気印刷の技術が通信媒体となり、第1次産業革命の初期における石炭を動力とする鉄道基盤と国内市場を操作した。20世紀になると、電子的コミュニケーション(電話と、その後のラジオとテレビ)が通信媒体となり、第2次産業革命における石油を動力とするオートメーション時代と大衆の消費者文化を操作し、売り出した。

「エネルギー・インターネット」

1990年代中盤、私はコミュニケーションとエネルギーの新たな収束が間もなく実現することに気づいた。インターネット技術と再生可能エネルギーが結合し、パワフルで新しいインフラストラクチャーを創出しつつあった。きたるべき時代には、何億もの人々が自宅や会社や工場でグリーン・エネルギーを発電するようになり、ちょうど現在の私たちが情報をインターネットで作り出したり共有したりしているように、電気を「エネルギー・インターネット」を使って共有するようになる。エネルギーの民主主義化が実現すれば、同時に人間関係が根本的に見直され、企業経営、社会の統治、子供たちへの教育、市民生活への参加に影響を及ぼす。

2006年、私は欧州議会のリーダーたちと共に、第3次産業革命の経済発展計画の草案を作り始めた。そして2007年5月、欧州議会は公式の宣言書を発表した。この宣言書は第3次産業革命を、長期的な経済的展望と欧州連合(EU)のためのロードマップとして承認している。現在、欧州委員会内の様々な機関だけでなく、加盟諸国の組織が同宣言書を実行に移しつつある。


5本の柱

第3次産業革命のインフラストラクチャーが整えば、何千もの新たなビジネスと何百万の雇用機会が創出され、21世紀における持続可能な世界経済の基盤が築かれるだろう。しかし注意も必要である。通信やエネルギーのインフラストラクチャーの歴史に見られるすべての例と同様に、第3次産業革命の幾つかの柱を同時進行的に築かなければ、基盤は崩れてしまう。なぜならば、どの柱も他の柱との関連性の中でしか機能できないからだ。第3次産業革命には、以下の5本の柱がある。

1. 再生可能エネルギーへの転換。
2. 再生可能エネルギーを現場で集めるために、すべての大陸において既存の建築物を小規模な発電所に作りかえる。
3. 断続的なエネルギーを貯蔵するために、各建築物の内部やインフラストラクチャー全体に、水素やその他のエネルギー貯蔵技術を配備する。
4. すべての大陸の送電網をエネルギーを共有するインターグリッドに作りかえるためにインターネット技術を利用する。このインターグリッドはインターネットのような機能を持つ。
5. すべての輸送手段を電気自動車や燃料電池式の車両に変える。これらの車両は大陸全域を網羅する双方向型のスマートグリッドを通じて電気の売買ができる。

統合し調和させる

2010年秋、EUは、こうした5本の柱を発展段階の各レベルと段階で統合し調和させることが重要だと認識した。欧州委員会のリーク文書は、EUが再生可能エネルギーの流入に対応するための電力網のアップデートに2010年から2020年の間で1兆ユーロ(1兆3000億USドル)を支出する必要があると警告した。この内部文書は「ヨーロッパには、再生可能エネルギーを開発し伝統的電力源と対等に競合させるためのインフラストラクチャーがいまだに欠如している」と記している。

EUは2020年までに電力の3分の1をグリーン電力にすることが期待されている。つまり、何万人もの地域的なエネルギー生産者から送電網に送り出される断続的な再生可能エネルギーを管理するために、送電網をデジタル化しインテリジェント化しなければならないということだ。

当然のことながら、早急に水素やその他の貯蔵技術を開発し、EUのインフラストラクチャー全域に配備することも不可欠である。断続的な再生可能エネルギーが発電量の15パーセントを超えた場合、貯蔵技術がなければ、電力の大部分は失われてしまう。同様に、低金利のグリーン・ローンや貸し付けによって、EU諸国の多くの建築物を小規模な発電所に作りかえるように建設および不動産部門を刺激することも重要である。そのような発電所は再生可能エネルギーを現地で利用すると共に、余剰分をスマートグリッドに送り返すことができる。そして、こうした各ステップを踏まない限り、市場で売り出される準備が整った何百万台もの電気自動車や水素の燃料電池式車両の動力として、EUがグリーン電力を十分に供給することは不可能だ。

5本の柱のうち、他の柱よりも開発が遅れる柱が1本でもあれば、他の柱の開発を阻害することになり、インフラストラクチャーそのものが損なわれるだろう。

新たな経済のパラダイム

再生可能エネルギーを建築物が生み出し、その一部を水素という形で貯蔵し、スマート・インターグリッドを経由して配給し、炭素排出ゼロの電気自動車に供給するという、再生可能エネルギー体制を創出することは、第3次産業革命への扉を開く。システム全体は双方向的で、継ぎ目なく統合されている。上記の5本の柱が一体になると、分割できない技術的なプラットフォーム、すなわちシステムの部分の集合とは質的に異なる特性や機能を持つ新たなシステムが誕生する。別の言い方をするなら、柱同士の相乗効果が、世界を変革する新たな経済のパラダイムを創出するのだ。

第1次および第2次産業革命における慣習的で中央集権的なビジネス活動は、第3次産業革命の分散的なビジネス活動によって急速に包括されていく。つまり、経済や政治の世界で権力を持つ伝統的な縦割りの組織は、社会全体に中継点として組織された水平的な権力に道を譲るということだ。

一見すると、水平的な権力という概念そのものは、私たちが歴史の多くから経験してきた権力の関係性とは矛盾しているように見える。結局のところ、権力は伝統的に、上から下にピラミッド型に組織されてきたのだ。しかし今日では、インターネット技術と再生可能エネルギーの統合によって解き放された協同的な権力が人間関係を根本的に再構築し、垂直方向にも水平方向にも広がる人間のつながりは、社会の未来にとって深い意味を持つ。

何百万人もの若者たちが音楽をインターネット上で共有して10年もたたないうちに企業の収益が暴落するまで、音楽業界は分散的権力を理解しなかった。ブリタニカ百科事典は、世界で有数の情報源であるウィキペディアを作り上げた分散的で協同的な権力を評価しなかった。さらに新聞も、「ブロゴスフィア」(インターネット上のコミュニティー)の持つ分散的権力をまともに受け取らなかった。しかし今では多くの出版社が、倒産するか、出版物のほとんどを電子書籍に切り替えている。人々が開かれた共有空間でエネルギーを共有することは、さらに広い範囲に影響を及ぼす。

エネルギーの民主主義化

私たちの現在の経済活動のあり方に第3次産業革命がどれほど破壊的な影響力を持つかを理解するために、インターネット革命の始まり以降の過去20年に起こった甚大な変化を考えてみよう。情報とコミュニケーションの民主主義化は、現代の初期における印刷革命と同じくらい著しく、世界貿易と社会的関係の性質そのものを変えてしまった。では、インターネット技術で管理されたエネルギーの民主主義化が社会全体で起こった場合、どれほどの影響があるだろうか。

第3次産業革命の発展は、発展途上諸国の中でもさらに貧しい国々にとって、特に関連が強い。私たちが忘れてはいけないのは、人類の40パーセントは今でも1日2ドル以下という非常に貧しい生活を送っており、圧倒的多数の人々は電気のない生活を送っているということだ。電気を利用できない彼らは、実際的にも比喩的にも「パワーレス」のままである。数億人の人々が貧困から脱するための最も重要で唯一の要因は、信頼できるグリーン電力を手頃な価格で手に入れられるかどうかだ。この要因がなければ、その他の経済開発すべてが不可能になる。地球上の誰もが電気を使える状況は、世界で最も貧しい人々の生活を改善するために欠かせないスタート地点である。

再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス)は広い範囲に分散されているため、理想的には、第3次産業革命は発展途上諸国からスタートさせるのに向いている。インフラストラクチャーの欠如は開発の障害と見なされることが多い。しかし、多くの発展途上諸国は送電網の老朽化という問題を抱えていないため、第3次産業革命に「飛躍」できる可能性があることが明らかになってきている。つまり、老朽化した旧式の電力網を修理し続けるのではなく、新しい分散的電力システムをゼロから築き上げることで、発展途上諸国は新しいエネルギー時代への移行にかかる時間も経費も大幅に節約できるのだ。さらに、第3次産業革命のインフラストラクチャーは分散的な性質を持つので、リスクをさらに拡散できる。地域や地方が財源をプールし、ローカルな電力ネットワークを確立し、地域のあちこちにある中継点とつなげるのだ。これこそが水平的な権力の神髄である。

エネルギー体制は文明の性質を形成する。すなわち、文明の組織化、商業や貿易の恵みの配分、政治的権力の行使、社会的関係の構築を決定する。21世紀において、エネルギー生産と分配に関する統制の所在は、化石燃料に基づく中央集権的な巨大エネルギー企業から、再生可能エネルギーを自宅で生産し、余ったエネルギーを情報エネルギーの共有空間で取り引きする数百万もの小規模な生産者に移行するだろう。

しかし、こうした移行を促進するためには、好ましい土俵を用意することが必要である。つまり、金融的支援、技術移転、新興諸国を支援するための訓練プログラムが必要だ。発展途上諸国で起きていることは、歴史的な変革の前ぶれである。一般家庭が電気のない時代から第3次産業革命の時代へ一気に飛躍するのだ。こうしたプロセスは、世界で最も貧しいコミュニティーにおけるエネルギーの民主主義化を反映している。

第3次産業革命は、私たちが今世紀の中頃までに炭素排出のない持続可能な生活を送る時代に到達できるという希望を与えてくれる。私たちには、それを実現するための科学があり、技術があり、ゲームプランがある。そして今や問題は、私たちが未来の経済の可能性を認識し、まだ時間があるうちに目的地まで到達しようとする意志を持てるかどうかにかかっている。

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本稿は世界の産業開発に関する諸問題の議論の促進を目指す季刊誌『Making It: Industry for Development』のご厚意で掲載されました。同誌は国連工業開発機関(UNIDO)が発行しています。

「A new economic reality」シリーズの第2部、「The new economy: inclusive and sustainable」をぜひお読みください。UNIDO事務局長のカンデ・K. ユムケラー氏とモーガン・バジリアン氏6が包括性の問題を論じています。

翻訳:髙﨑文子

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新たな経済の物語:産業革命3.0 by ジェレミー・リフキン is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

ジェレミー・リフキン氏はFoundation on Economic Trends(経済動向に関する研究財団)代表である。過去10年にわたり欧州連合(EU)の顧問を務め、EUの第3次産業革命における長期的な経済的持続可能性に関する計画の中心的立案者である。同計画は世界経済危機、エネルギー安全保障、気候変動という3つの課題への取り組みである。彼は科学と技術の変化が経済、労働力、社会、環境に及ぼす影響に関する著作があり、20冊以上のベストセラーがある。近著に『The Third Industrial Revolution: How Lateral Power Is Transforming Energy, the Economy, and the World』、『The Empathic Civilization: The Race to Global Consciousness In a World In Crisis』などがある。

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