中国におけるe-waste問題の評価および改善

浪費しなければ、窮乏することもない。残念ながらこの古い金言は、最新にして最高の消費者向けガジェットを求める傾向が大きなうねりとなって世界を席巻する中では、すっかり影を潜めてしまった。急速な技術の進歩、商品の種類の拡大、それに計画的陳腐化が、「それほど古くはなくても、そんなものは捨てて、新しいものを手に入れよう」と消費者に圧力をかける。では、どんどん増えていく「古いもの」の山はどうなるのだろうか?

世界最大の電気・電子機器(EEE)生産国で消費国の1つでもある中国は、廃棄されたそれらの製品、すなわちe-wasteの主要な最終目的地でもある。e-wasteは環境、社会、経済に大きな負担になるものだが、中国は国内のe-waste排出量が年に約20%増えているという現実に取り組みながら、世界で排出されるe-wasteの主要な廃棄場の1つとしての役割も担っている。

国連大学のオペレーティングユニットであるSCYCLE(持続可能なサイクルを意味するSustainable Cyclesを短縮した名称)は最近、中国のEEE廃棄物の現状について詳細な調査結果を発表した。同報告書は米国環境保護庁、中華人民共和国環境保護部、そしてUNUが設立したStEP (電子廃棄物問題を解決するイニシアチブ)の協業から生まれたものである。

調査では、EEE消費、国内および国外からのe-wasteの流れ、e-wasteの回収・リサイクル業界、法整備、e-wasteのステークホルダーについて分析が行われている。当初の目的は2012年7月に北京で開催された 「Stakeholder Workshop & StEP Open Meeting in China(中国におけるステークホルダー・ワークショップおよびStEPオープン・ミーティング)」で議論された内容を公開することだった。議論の場を設けることを目的とするワークショップでは、さまざまな政府機関や企業および技術研究所など、広範囲に及ぶステークホルダーの役割と責任を明確にすること、ステークホルダー間の協力を促進すること、コミュニケーションを活発にすること、取り組みの重複を避けることなどが話し合われた。

最終報告書(本記事のサイドバーからダウンロードが可能である)にはまた、ミーティングの結果も盛り込まれた。その中には、ワークショップを通して提案および討議された事柄、すなわち中国におけるe-waste管理を今後改善していくうえで何を優先すべきかも含まれている。

量と排出源

中国の国内市場は急成長を続けており、調査の結果、主要な家電製品に対する需要は1995年から2011年にかけて急激に増加していることがわかった。2011年に中国の消費者は、2億5000万台の携帯電話に加えて、なんと5660万台のテレビ、5810万台の冷蔵庫、5300万台の洗濯機、9480万台のエアコン、7390万台のコンピュータを購入している。そして同年、中国国内では362万トンのこれらの製品が廃棄されている。

しかし、中国のEEE廃棄物の排出源は決して国内市場だけではない。中国は2000年、e-wasteの輸入を全面的に禁止する法律を施行したが、合法的な越境流入の抜け道は残っている。そもそも「一国二制度」政策により、e-wasteは本土領域には入らないが、香港の港では認可されていれば輸入が可能なのである。香港からはe-wasteを他国に輸出でき、また本土領域にも容易に(かつ合法的に)移動させられる。

越境して香港にe-wasteが流入する経路をさかのぼれば、さまざまな排出源にたどり着く。その中でも主要なところは北米、ヨーロッパ、日本である。報告書では香港を経由した不法輸入の多くの事例が挙げられているが、研究者は「中国に不法に輸入されるe-wasteおよびEEE中古品の実際の量は、体系的な計算と直接的な調査が行われていないため、推定が困難である」と語っている。

非正規および正規の処理ルート

正確な排出源がどこなのかという疑問を別にしても、中国でe-wasteが増え続けているのが現実であるからには、最も差し迫った問題は処理の仕方をめぐるものだろう。回収およびリサイクルのネットワークは複雑で、その中では業者を正規か非正規かで分けるのが最も明快だが、中国では持続可能な方法でe-wasteを処理するという課題に立ち向かうにあたって、それぞれが独自の役割を担っている。

正規の回収業者は通常、納税事業者の一部に含まれるので、中国政府が定める法規制を成功させるうえでは、重要なつなぎ役として位置づけられる。特筆に値する例としては、国家発展改革委員会が行ったe-waste回収のパイロットプログラム(2003-2006年)がある。このプログラムの中心は4つの重点地域にリサイクル施設を建設することであった。そして、そこで直面した重大な課題は、適切な回収システムを確立して廃棄物の安定供給を確保しなければ、リサイクル施設を恒常的かつ効率的に稼働させるのは難しいということだった。

その点で成功したのが「Home Appliance Old for New Rebate Program(家電買い替え割引制度)」(2009–2011年)である。この制度によると、消費者は買い替えに際して、政府が補助金を出している回収業者に古い家電を出せば、新しく購入する製品の価格の割引を受けられる。正規の回収業者は、認可されたシステムにより「回収したe-wasteが環境に悪影響を及ぼさない方法で処理されるように合法的なリサイクル業者に届ける」。

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>中国では2011年、正規の業者によって回収および処理された6130万台の家電(そのうち84%はテレビ)のうち、80%以上が「家電買い替え割引制度」を利用したものだった。

研究者は、非正規の回収システムも同じく(ただし異なる形で)重要な役割を果たしていると結論づけている。その理由は次の通りだ。「個人の回収業者は、一軒一軒の家庭をほぼくまなく効率的に訪問できる。一方、都市部の生活者(消費者)は古くなった家電製品を廃棄すれば現金が得られ、同時に自分で廃棄する時間と手間が省けるので、一石二鳥とばかりに回収業者に家電廃棄物を売る。非正規回収システムの特長は、リユースや部品リサイクルに回る割合が高いことだ。こういったものを一般の廃棄物の流れに乗せないことにより、後でリソースを分離回収する必要性を下げることができる」

ただし、リサイクルについては、非正規のシステムは分が悪いようだ。非正規のリサイクル業者は「一般的に、標準に満たないプロセスを用い、人間の健康と環境を守る適切な施設を持ち合わせていない……標準に満たない非正規のリサイクル手法は……作業員の健康と地域の環境に直接的なリスクをもたらす」

人間および環境へのこのような影響は近年よく知られるようになった。それは、不法なe-waste処理の実態が克明に報道されるようになったためだ。具体的に取り上げられた場所の例としては、香港との境界に近い貴嶼鎮が挙げられる。

しかし、非正規リサイクル業者の横行が続いても、報告書には「この5年においてはパイロットプロジェクトが順調に推移し、国内のe-waste関連法も整備されてきたため、正規のe-wasteリサイクル業界は処理能力および質の両面でおおいに伸びている」と記されている。その結果、2011年には、約6100万台の主要な家電が正規のリサイクル業者によって回収および処理された。

E-wasteに関する法規制とプロジェクト

正規業者の成長を促すため、中国政府はこの10年間、数多くの環境法や規制、技術指針を策定しながら、国内外のe-wasteプロジェクトに協力してきた。調査では、以下の通り、e-waste処理に関して主軸となる5つの方針および法律が取り上げられている。

しかし、これらの方針は実効性が伴わなくては意味がない。たとえば、香港経由などの合法的な抜け道を塞ぎ、その他の陸上および海港の境界を越えて廃棄物が不法に流入してくるのを阻止するためには、通関制度の大々的な改革が必要だ。

e-waste改革推進努力の一環として、この10年間には多くのパートナーシップ事業が実施され、国内外のコミュニティから専門能力が提供された。調査では、スイスと中国の初期事業が重点的に取り上げられている。報告書によると、このプロジェクトは「新興国における深刻な環境問題は、協調外交、知識の共有、技術移転を通して改善が可能である」ことを示している。

スイスと中国の協調の成功を基盤として、他のパートナーシップ事業にも弾みがついた。その中にはStEPイニシアチブのBest-of-2-Worlds(ベスト・オブ・2ワールズ)プロジェクトが含まれている。その目的は「環境、健康、安全基準を遵守し、既存の法的必要条件をすべて満たしながら、e-wasteリサイクルを実践する、エコ効率の良いアプローチを見つけること」である。また、UNEPおよびオランダ政府との協調関係をさらに進めたことは、技術の進歩を促進したほか、中国における固形廃棄物管理の問題において協力するために、国内外の教育・研究機関、民間セクター、政府機関を結びつける基盤を構築することにもつながった。

中国のe-waste問題をめぐるステークホルダーには、さまざまな組織、機関、研究者、民間企業、業界団体が含まれている。この調査の重大な成果の1つは、「中国でe-waste管理に携わるステークホルダーの相関図」を詳細に示したことである。この登場人物分析は、中国におけるe-waste問題関係者の規模、役割、影響力を体系的に評価するのに役立った。

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中国におけるe-waste問題の近年の状況を幅広く分析したこの調査からは、e-waste問題の障害を克服するためには、まだまだやるべき仕事がたくさんあることが明らかになった。提言には次のようなものが含まれる。

StEPの調査で示されているように、「中国は今ではどうやら世界最大のe-waste廃棄場であり、米国、ヨーロッパ、そして日本や韓国などの近隣アジア諸国からe-waste廃棄物を受け入れている」。それゆえに、中国のe-waste管理およびe-wasteに関する将来の法的枠組みは、中古および廃棄された電子機器が環境に及ぼす影響に、国内だけでなく国際的なレベルでも、重大な意味を持つ。一方で、中国および世界の電気・電子機器消費は増える一方である。

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本記事の全文をご覧になりたい方は、UNU-ISP SCYCLEのサイトから英語版あるいは中国語版がダウンロードしてください。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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中国におけるe-waste問題の評価および改善 by ダニエル・ パウエル is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

ダニエル・パウエルは国連大学メディアセンターのエディター兼ライターであり、Our World 2.0担当エディターに名を連ねている。東京の国連大学に加わる前は8年間、東南アジアを拠点に過ごし、農業、生物多様性、水、市民社会、移住など、幅広いトピックを網羅する開発・研究プロジェクトに携わっていた。最近では、USAID(米国国際開発庁)がカンボジア、ラオス、ベトナムの田園地帯で行った水と衛生に関するプログラムにおいて、コミュニケーション・マネジャーを務めた。アジアで活動する前は、米国林野局に生物学者として勤務、森林の菌類学および地衣学の研究を行っていた。

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