あなたにとって生物多様性とは?

「種やその生態系が失われる時、私たちの生存条件を守るのに欠かせない基盤も同時に失われています」

上記は2009年5月に国連大学を訪れた著名な科学者・教育者であるホセ・サルカン・ケルメス教授の言葉である。

ほぼ間違いなくこの「基盤」は銀行やウォール街もしくは自動車業界よりも重要だ。しかし人々はこの現実に目を背けている。そして金融業界や自動車業界に与えられたような救済措置は生物多様性には存在しない。

この地球上で覇権や権力を求める種は1種しかない。

認識と関心の欠如

残念なことに、人々の無関心を改めようとするサルカン教授や彼と同じ志を持つ人々のただならぬ努力にもかかわらず、その唯一種である大部分の人類の日常生活にとって生物多様性の問題はたいした意味をもたない。

こうした理由から、読者の方々がサルカン教授のインタビュービデオを最後までご覧いただき、ご自分なりの結論を導き出されることをお勧めする。もしかすると何らかの刺激を得ることができるかもしれない。

彼は過去数十年間の種の絶滅速度がいかに凄まじいものであったか、2050年までには絶滅種の割合が全体の30%に達する可能性を語る。

彼は生物多様性喪失の4つの主原因を浮き彫りにする。現代農業の破壊性、都市化の拡大、侵入種、地球温暖化がその原因である。

未来について語る中でサルカン教授は希望を捨てていない。そしてこう警告する。「私達の最大の課題は今世紀半ばには90億人になる世界人口を支える食糧をどう確保するかです。しかも1人あたりの消費量が増え現在の倍の食糧生産が必要になります。どうやって用意するのでしょうか?」(Our World 2.0 関連記事をご参照ください)

ミレニアム生態系評価

サルカン教授は2001年に開始されたミレニアム生態系評価運営委員会のメンバーである。ミレニアム生態系評価の目的は「人間の幸せのために生態系を変えることがもたらす結果、そして生態系の保護と持続可能な利用を促進するために必要な行動の科学的根拠」を評価することだ。

世界中から推定1300人以上の専門家がこの評価に参加した。彼等は2005年に調査結果を発表し、地球規模の生態系喪失の悲惨な状況の概要を公表している。そして彼等は「生態系の悪化は今世紀前半に著しく進行するかもしれない」と警告している。

2002年4月に各国は「貧困の緩和と地球上の全生命への貢献として、現在の生物多様性喪失の割合を地球・国家・地域レベルで大幅に削減する」ことを2010年までに達成すると宣誓した。これは一部ミレニアム生態系評価の結果を受けて行なわれたものである。

「大幅な削減」の範囲は明確に規定されておらず人により解釈が異なるあいまいな言葉だ。また、生物多様性喪失を測定し防ぐことができない人類の無能さを突きつけている悲しい言葉でもある。基本的に、現段階の目標は生物多様性喪失の速度を遅くすることにある。

竹内和彦教授(国連大学副学長)が最近行なったアフメド・ジョグラフ氏(生物多様性条約事務局長)へのインタビューの中でジョグラフ氏はこの目標ですらも達成することができない理由を述べている。

もし最初に成功しないのなら・・・・・・

しかし、ジョグラフ氏は依然楽観的で次のように主張する。「2010年目標は有効な方法です。生物多様性喪失の削減に向けた一層の努力を求め各国の元首を含む国際社会をまとめることに成功したからです」

彼は、来年、愛知県名古屋市で開催される第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)にて国際社会は今までの成果を評価し、新たな目標を設定すると楽観している。

世界の関心は2010年以降の目標に推移し始めている。しかし、blogpost on the Countdown2010で指摘されているように新たな目標の設定には注意が必要だ。

「目標を設定することには以下の効果があると言われています。まとまらないことで有名な政治的関心をまとめる、問題への関心を集める、予算策定の目安を供給する等です。間違いではないと思います。しかし、私はある程度の目標値を設定すべきだと思います。目標値を下回った場合に私達は失敗を認識し、公表し、反省することができるからです」

国際社会が2010年目標を達成できないこと、また現在の問題に真剣に取り組み批判を分かち合うこの機会を逃すべきでないことは明らかである。ただ国際社会がそれを実行する可能性は控えめに言っても少ないだろう。目標が多国間協力を促進する程度のものであることは国際的なレベルで行なわれる「良い政治」とは言えない。

生物多様性への重点的取り組み

サルカン教授とジョグラフ氏との会談から刺激を受け、また生物多様性が国連大学の高等研究所サステイナビリティと平和研究所における主要研究テーマであることから、2009年7月よりOur World 2.0 では取り上げる主題のひとつとして生物多様性を加え、4つの主題を軸とした。

今後数ヶ月のうちに私たちは生物多様性、気候変動、食糧安全保障、ピークオイル問題の間に存在する相互関連性を調査する考えだ。

私たちは生物多様性に関連した国連大学の研究を紹介し、サルカン教授やジョグラフ氏のような優れた専門家が意見・見識を共有できる場を提供したいと思う。

この提案に対するあなたのご意見や、その他の発言だけでも、ぜひコメント欄へ。

何も待つ必要はない。行動を起こすのは今しかないのだから。

国連大学の生物多様性研究の詳細はこちらへ

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著者

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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