2012年までに全ての原発停止を

グリーンピースの新しいレポートは2012年までに全ての原発を停止するよう提言している。このレポートは、野田佳彦新首相が就任後初の所信表明演説で、現在定期検査のため停止している原発の全てを再稼動すべきであると述べたのと同時期 に発表された。

グリーンピースのレポート「自然エネルギー革命シナリオ ― 2012年、すべての原発停止で日本がよみがえる」 によると、2011年の8月現在で日本にある54基の原発のうち、運転しているのは12基のみだ。このことから、主著者スベン・テスケ 氏は、日本はこの夏限られた原子力でも十分に対応できたとし、さらに省エネを進め、エネルギー効率を上げれば来年にも全ての原発を停止することが可能であると結論づけている。

Our World 2.0はこれまでに、日本の原子力の段階的停止に関する他のシナリオも見てきた。そのうちの1つが環境エネルギー政策研究所(ISEP)によるものだ (右側の関連記事をご覧ください)。これらには段階的に原発を停止し、2050年までには100%再生可能エネルギーに転換することを目指すものが多い。世界自然保護基金(WWF)もほぼ同じシナリオを作成している。

一方、グリーンピースはそれよりはるかに大胆な提案をしている。テスケ氏は、最終的目標は「原子力による大惨事を再生への転機にする」ことだと主張する。そしてグリーンピースはこれまでも常に原子力反対派を貫いてきており、原子力発電に未来はないと断言する。

抜本的見直しの時期?

グリーンピースの提言は、野田首相には受け入れがたいものかもしれない。彼は日本の原発への依存度を中長期的に減らしたいとしながらも、その日程目標は特定していない。

ここで疑問なのが、日本国民がこの提案についてどう考えるかだ。2012年までの段階的停止について国民投票が行われたら、「賛成」を投じる人の割合はどのくらいだろうか。どれだけの国民や企業が2012年以降原子力事故の危機がなくなり、処理すべき放射性廃棄物がこれ以上増えないように、(この夏のような)節電の努力が必要だと納得するだろうか。

そう言われれば、大多数が提案に賛成だと言うだろう。ただし、それは「従来のやり方」に対し、日本経済がスムーズに機能するだけの電力が確保されるための代替案があり、生活の質が著しく損なわれないことを確信した上でのことだ。

代替シナリオの必要性

現在日本ではエネルギーの未来に関して白熱した議論が行われている。政策担当者が「原子力推進」という従来の考えに固執せず、脇に追いやられたり無視されたりしがちな意見に耳を傾けることが大切だ。全ての様々なエネルギーシナリオが透明性のある方法で存分に比較検討されなければならない。

グリーンピースの提言には、今後の分析の参考になる興味深い点がいくつか含まれている。例えば緊急対策として2015年までに風力発電を現在の220メガワット(MW)から5000MWに増やすことだ。それはつまり約1000基の新しい風力タービンを毎年建設することを意味する。だが、これだけ莫大な量の建設による環境的被害は?建設場所は?

テスケ氏は、他国には風力発電の立地決定、地元コミュニティ中心の再生エネルギー開発、風力発電地帯の環境アセスメントに関して数多くの事例があると指摘し、よってそれらは解決できる問題であると確信を持っている。

太陽光発電は2010年の990MWから2015年の5000MWへの大きな伸びが提案されている。さらにグリーンピースは、原発ゼロのエネルギー社会へ移行するためのカギは、風力・太陽光の不安定な発電を補うため既存の天然ガス火力 発電所を使用することだとしている。長期的目標は、2020年までに43%の電力を、2050年までに85%を再生可能エネルギーによって発電することだ。

グリーンピースによると、これに付随する効果は、2025年までに温室効果ガスを25%削減する公約を果たせることだ。

このシナリオ達成のための大きな難関は、2011年夏の節電対策を今後も継続しなければならないことである。国民は節電対策を大々的に支持しているとはいえ、 9月までという期限付きでのことだった。さらに大規模な節電(2011年から2020年まで毎年1.7%ずつ需要削減)をめざし、既存の対策を強化することも難しい課題だ。グリーンピースの提言はISEPが提案した様々なエネルギー効率化対策を検討している。ISEPは10年以上にわたり電力負荷平準化 や需要ピーク時の特別料金を含む日本のエネルギー政策について研究を行っている。

政治面では化石燃料や原子力エネルギー補助金の段階的廃止の必要性、法的拘束力のある再生エネルギー導入目標の設定、再生可能エネルギーによる発電の送電網建設など多くの障害がある。送電網に関しては、政府が現在の電力会社から買い取って国有化したのち、民間組織に売却しない限り難しいかもしれない。CEOである孫正義 氏が日本の再生エネルギー政策推進の努力を進めているソフトバンクなら買うだろうか。

コストはどのくらいか

日本の財政事情は(多くの先進諸国同様)危うい状況だ。移行のための費用と経済への影響が最重要事項となりそうだ。グリーンピースは、再生エネルギーへ移行されれば、緊急経済対策により2015年までに電力分野の雇用数は32万6000人 となり、2030年には14万4000人に減少するという。原子力産業には比較的多くの労働力が残ることとなる。現存する原子力発電所閉鎖には少なくとも10年かかり、放射性廃棄物の処理の問題もあるからだ。

グリーンピースの提言は移行にかかるコストに関しては詳しく述べていないが、移行当初は現存の化石燃料に依存するよりコストがかかるという。だがここで注目すべきなのは、再生エネルギーに投資するお金は国内に残るが、化石燃料に費やすお金は国外へ流れるという点だ。予想費用の内訳も示してあれば良かったのではないだろうか。

Our World 2.0が行ったインタビューの中でテスケ氏は、コストの面では、これらの対策によってキロワット時単価は0.5円値上がりするが、消費者にとっては大きな増額ではないと話している。

それよりも問題で、数値化しづらいのが、再生エネルギーへの移行を行わないこと、あるいは遅らせることによるコストの方だ。

グリーンピースによると、世界のエネルギー市場において、原発のシェアはわずか2%にすぎず 、再生可能エネルギーは(小規模からのスタートではあったが)最重要セクターであり、今後最も成長が期待されている。そのような中(反対意見もお待ちしています)、過去の遺物となりつつあるテクノロジーではなく、再生エネルギーのように未来志向のテクノロジーを生かすのはビジネス上も理にかなったことであろう。

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2012年までに全ての原発停止を by ブレンダン・バレット is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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