グリーンカラーへのキャリア転向

シーナ・ストーン氏が「自分のキャリアが明確に見えた瞬間」を迎えたのは、ネパール・ヒマラヤでトレッキングをしていた時だった。「ネパールは世界でも五本の指に入る貧しい国です。ですから、大手の洗剤ブランドの看板を見た時に、強い違和感を覚えました。着るものをきれいにしておくかどうかなんて、ネパールの人たちが生きるうえで、たいした問題ではないでしょう。そこで私は商業マーケティングの多くがいかに不適切かに気づいたのです」

それから6年後の今、マーケティング分野での16年のキャリアを後にして、ストーン氏はHeritage Lottery Fund(ヘリテージ・ロッタリー・ファンド)のプロジェクトを管理するという新たなポジションに就いたところだ。そこで重点が置かれているのは、環境、保護、再生、スコットランドのクラックマナジャー・カウンシルにおける地域の取り組みである。先週まで彼女は、スコットランドの西海岸沖にあるビュート島で、コミュニティーが一丸となって進める二酸化炭素排出量削減活動の先頭に立っていた。

多くの人は、このようなキャリア転向をうらやましく思うだろう。だが実は、仕事人生の半ばにおいて、環境に深く関わる職業で自分を活かす道を見つけるプロフェッショナルは増えていて、ストーン氏はその1人にすぎない。

長引く不況が多くの業界に重くのしかかり、公営事業の縮小がそれに拍車をかけている。そのような状況の英国では、キャリア転向は非常に関心の高い問題だ。ガーディアン紙と保険会社ユーナムの依頼で最近、ICMが行った調査によると、就労者の40%が「再出発ができるなら、まったく異なるキャリアを築きたい」と回答しており、しかも5人に1人は、「今後5年以内にキャリア転向を計画している」ことがわかった。

長期的にみて、環境分野が有望であることは容易に理解できるが、「グリーンカラー」の仕事に転向するのはどれほど容易なのだろうか? 環境マネジメント・アセスメント協会 (IEMA) の会員調査で先週、示唆に富む現状が報告された。それによると、環境分野に従事する回答者の約3分の1が、関係のないセクターから転職してきた人たちだ。それはたとえばエンジニアリング、建設、製造、IT、通信といった分野で、彼らはまったく異なるビジネススキルを携えて環境関連の仕事に就いたのである。

環境分野の可能性

景気の先行きは相変わらず不透明ながら、環境問題に取り組むことにメリットを感じる企業は増えている。2009年に全米太陽エネルギー協会が実施した調査によれば、米国では2030年までに、5人に1人が再生可能エネルギー業界および省エネ業界に従事すると予測されている。一方、英国のグリーンエコノミーは急速に成熟している。現ビジネス・イノベーション・技能省のレポート によると、2009年には環境関連業はGDPの5%以上を占め、英国全体で90万人の雇用を創出している。

IEMAの会員サービス担当ディレクター、クレア・リー氏は、複雑な環境問題を読み解くことができる人材への需要が高まっていると強調した。「気候変動や資源の有用性から業務上のコンプライアンスの問題、資源効率まで、企業はさまざまな環境問題に対処する必要があるからです」とリー氏は指摘する。

環境関連の仕事に転向するコツとして挙げられるのは、自分が築き上げてきたスキルに広い意味で適したキャリアルートを選ぶことだ。人材スカウト会社、GreenJobs.co.uk(グリーン・ジョブス)の戦略担当ディレクター、ジョナサン・カイル氏は、「自分が進みたい方向を明確にすることです」と言う。

「環境もあればエコロジーもある、それに太陽光、風力、スマートメーター……これらはすべて別個のスキルを必要とします。たとえば、カーボンマネジメントのようなことをやりたいなら、もう一度スタート地点に立ち返り、必要な資格を一から取っていかなければなりません。でも、マーケティングなど、これまでのポジションを続けても満足なら、新たな組織でも、おそらく同様な役割を担うことができるでしょう」

IEMAは環境分野のキャリアを考える人たちの悩みを解決する一助として、 環境スキルマップ を考案している。「足を踏み入れたばかりの初期の段階からマネジメントに至るまで、プロフェッショナルが歩む道を示すようにしました。どのような知識とスキルが必要かが分かります。まずはそれを知ることです」とリー氏は言う。

環境分野にしても不況の影響は相応に受けており、特に建設業界の低迷が連鎖的な悪影響を及ぼした。しかし一方では、より革新的なアプローチで環境に優しい製品が生み出されている。小規模太陽光発電はとりわけ需要が高まっている分野だ。最近、英国政府は再生可能エネルギー戦略への投資を削減したため多くの人が戸惑ったが、最近アーネスト&ヤングが行った調査によると、39%の回答者が、投資は今年度また増加するだろうと思っている。

その見方に賛同する経営者の1人が、ウォリックシャーを拠点にする太陽光発電パネル製造会社、EOS Energy(EOSエナジー)の最高経営責任者、ゲイリー・サマーズ氏だ。製品需要が大きく伸びる中、同社は30~50人の人材を新たに必要としている。職種としては、電気設計技師、設置技術者、評価技術者、積算技術者、総務部長職、建設部長職など、実に幅広い。

「当社は再生可能エネルギービジネスに必要なスキルに長けた人材を求めていますが、キャリアを転向しようという人たちも、もちろん受け入れます。会社として、私たちは教育とトレーニングに多くの投資をしています。私たちが常に求めているのは、年齢に関係なく熱意のある人、仕事に意欲的に取り組む人です」とサマーズ氏は述べた。

不足するスキルを明確にする

しかし、環境関係の仕事に必要なスキルや経験を身につけるには、どこから始めればいいのだろうか? Acre Resources(エーカー・リソーシーズ)で環境分野の人材スカウトを行っているアンドリュー・テュ―氏によると、比較的大手の企業ですでに適職に就いている人であれば、手持ちのスキルでは足りない部分を明確にすることが一番のようだ。

テュー氏は次のように説明した。「ある会社でプロジェクトマネジャーや調査官だった人が、その仕事をやめて別の会社に移り、環境やサステナビリティを担当するマネジャーになるようなことは稀です。こうしたポジションに就く人は、そもそも勤務する組織に環境問題に取り組むチームがない場合が多いのです」

テュー氏は続ける。「その中で、自分から環境への取り組みを積極的に行ったり、エネルギーの保全、ゴミの削減、水の利用などについて上司に提言したりすることにより、会社がそうしたことに取り組むメリットを見出したときに、『その仕事に専従して取り組む気はありますか?』と聞かれ、そうしたポジションに就くのです」

ネパールで突然ひらめいたストーン氏は、当時、エジンバラの住宅協会で商業マーケッターとして働いていたが、やはり同じ道をたどった。

「入居者の中には障害を持つ方が大勢いらっしゃいます。そのような方にとっては光熱費が重い負担になっています。外出もままならず、暖かくしておくためには長時間、より高い温度設定での暖房が必要です。こういう方々の住居の質を上げるための資金提供があるのはわかっていましたし、私自身は個人的に環境への影響を削減することに関心を持っていました。そこで私は住宅協会への説得を始めたのです」

ストーン氏は会社を動かす方法にすぐに気がついた。「気候変動そのものを根拠にしても組織に訴える力は弱いと最初から思っていました。そこで、光熱費の負担が重くなっているという点を強調しました。なぜなら、顧客の福利の問題の方が会社にとっては重要だからです」

シャロン・ラシュリー氏も、すでに勤めている会社でグリーンカラーの仕事に進む道を見つけた。プラスチックパッケージング会社でセールスの仕事に就いていた彼女は、会社が国際的に認められた環境マネジメント規格、ISO 14001 の認証を取得するのに関わった。だがその過程で、この会社は監査でつまずいていた。

ラシュリー氏は次のように語った。「個人的に環境問題には非常に興味があります。環境マネジメントシステムは、持続させることができれば素晴らしいものですが、一度手にしたら気が抜けません。ですから、私はそれらを再び軌道に乗せるために、その管理をする役割を担いたいと自ら手を上げたのです」

「それから会社は再構築のプロセスに取り組みました。私は自分がしていることがとても好きだったので、セールスにはとどまらず、環境分野に進むことを決めました」

その間にラシュリー氏は Environmental Academy(環境アカデミー)から勧誘を受ける。このアカデミーは給付金を受けて中小企業に役立つコースを提供する地域の教育機関だ。ここでラシュリー氏は監査の仕事をしながら、同時に、NVQ レベル4 の環境マネジメント資格を取得した。

この資格を取得することにより、ラシュリー氏はIEMAの会員になることができた。IEMAの会員であるということは、環境関係の企業に高く評価される。経験とコネクションを活かし、彼女は今ではニューキャッスルを拠点に持続可能なエネルギーと再生可能技術に関するソリューションを提供する会社、Community Energy Solutions(コミュニティ・エナジー・ソリューションズ)のプロジェクトマネジャーになっている。

Environmental Academy(環境アカデミー)の最高経営責任者、リタ・カレンダー氏は、環境分野の長期的な展望に惹かれ、あらゆる背景を持つプロフェッショナルが同アカデミーのコースに通うようになっていると言う。彼女は「低炭素経済は私たちの未来で重要な位置を占めており、環境の専門家や環境問題はこれからも非常に重要です」と話した。

Environmental Agency(環境アカデミー)は通学形式のほか、オンラインのコースも幅広く提供している。しかしカレンダー氏は、理想的なシナリオは仕事をしながら覚えることだという。「授業で扱いきれない環境問題はたくさんあります。それが、この分野に入ろうとする人がぶつかる壁でもあります」と彼女は述べた。

ストーン氏は住宅協会に勤務しながら、会社を説得してパートタイムの修士課程で勉強を始め、それが新たなキャリアパスを開くことにつながった。しかし彼女は、多くの点でかつての経験が役に立っていると言う。

「マーケティングスキルが役に立つとは思いませんでした」と彼女は認める。「でも、実現させたいアイデアを顧客に売り込む点は共通しています」

「いま、私は行動変革を進めようとしています。これは、商業マーケティングでもやっていることです。ソーシャルマーケティングと呼ばれる包括的な分野がありますが、たとえば、光熱費を抑えるところから人々の行動変革を進めるのです」

環境分野に転向を志すほとんどの人が共通して必要とし、またメリットが得られる資質はおそらく、環境問題への個人的な情熱だろう。BTグループの地域コミュニケーションネットワーク構築を担うOpenreach(オープンリーチ)でサステナビリティの最高責任者を務めるイアン・ヒル氏の場合もそうだった。

BTのネットワーク構築部門に移るまで、大きくかけ離れた財務部門でキャリアをスタートさせたヒル氏は、「環境問題には個人レベルでも常に興味を持っていました」と語る。

「今の会社では、電信柱を立てる時やケーブルを地下に埋設する時など、環境に注意を払うのが顧客にとって重要であることを感じます。また、企業にとっての重要性にも気づいていますし、環境そのものの重要性もわかっています。そしてそれらをビジネスの文脈で結びつけることができると気がついたのです」

IEMA会員の調査によると、なぜキャリアを転向したのかという問いに対し、45%が「変化を起こしたかったから」、あるいは「環境に個人的に興味を持っていたから」と答えた。また、キャリアを転向した人の内、88%はその後、非常に満足していると答えた。

ストーン氏は、環境問題に情熱を持ってさえいれば、多くの専門家といとも簡単に関係を築けると言う。彼女自身は当初、気候関係の無料イベントで参加できるものには欠かさず参加し、環境問題と重要な役割を担う人物について情報を集めていった。

ストーン氏は言う。「話をした人や内容についてはすべて記録していました。環境分野は、スコットランドでは少なくとも、まだ非常に規模が小さいのです。同じ人と頻繁に会います。これは仕事でもありますが、同時に使命なのです」

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グリーンカラー: どこから始めるか。

転職スペシャリストのPosition Ignition(ポジション・イグニション)の共同設立者、サイモン・ノース氏いわく、特に小規模な企業が環境ビジネスに商機を見出している。彼は「小規模企業の経営者の約半数は、今後5年間、環境分野の成長にはチャンスがあると考えている」と言う。

自分のスキルと経験を評価する。

あなたは、システムやチームを構築できるだろうか?限られたリソースで結果を出せるだろうか? 迅速に実際的な違いをもたらす方法を示せるだろうか? 「ガレージからオフィスにビジネスを持ちこむ能力のようなシンプルなものが役に立ちます」とノース氏は話す。

すべての組織はプロジェクトマネジメントのスキルを必要としている。プログラムマネジメントのスキルを必要とする組織もある。こういったスキルはどのような分野からでも容易に応用が可能だ。まずはIEMAのスキルマップを開いてみよう。

トレーニングを受ける。

スキルや資格を常に最新の状態にしておくことが必要だ。内容だけでなく、形態(オンライン、遠隔学習、通学制、混合型など)も考慮して、自分のニーズに合うコースを探そう。たとえばIEMAはウェブ上に英国の認定トレーニング機関のリストを掲載している。

専門分野を活かす。

専門分野には、購入、調達、計画、エンジニアリング、検査分析、事業開発、営業など、さまざまなものがありうる。ノース氏は次のようにアドバイスする。「自分自身と、自分がこれまでのキャリアで経験してきたことを厳しく見つめることです。自分のスキルを具体的に掘り下げて、活用できる専門能力を具体的に明らかにしましょう」

情熱を見せる。

どれほど真剣にこの分野に入りたいと思っているか、決意を固めているかを示す。この分野についての知識を持ち、自信を持って話す。environmentguardian.co.uk(環境ガーディアン)やEnvironmentalist magazine(環境問題専門家マガジン)といった環境専門紙を読む。関係者について知識を持ち、興味のある部門を見つける。自分の地域内で入社したい企業を見つける。

関わりを持つ。

環境、保護、コンサルテーション、調査などに関わるボランティア活動の機会を探す。これらの活動は履歴書に書くことができる。

ネットワークを広げる。

近所で開催される参加無料の「グリーン」イベントを探して、他の参加者とつながりを持つ。LinkedIn(リンクトイン)のプロフィールを常に更新して、自主的な活動で関係するものを挙げる。求職の応募書類を受け取った企業側はここでしばしば背景情報を探っている。

適切な求人情報を見る。

jobs.guardian.co.uk/environment(ガーディアンが提供する環境分野の求人情報)、GreenJobs.co.uk(グリーン・ジョブス)、 Acre-Resources.com(エーカー・リソーシーズ)、iema.net/jobs(IEMA求人情報)など、専門分野の求人情報を見るようにする。

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この記事は2011年6月24日金曜日、英国標準時23:01に guardian.co.uk で公表したものです。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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著者

グラハム・スノードン氏はサンデー・ガーディアン土曜版の付録紙、Work and Graduate(ワーク・アンド・グラデュエイト)のエディターである。

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