気候変動は私たちの目の前で起きている

凍結と解凍を毎年繰り返す北極の海氷は今年9月、観測史上、最小の面積となり、その後、さらに50万平方キロメートル縮小した。こうした状況に、海氷学者の小さなコミュニティーは衝撃を受けた。前例のない状況であるにもかかわらず、2012年の北極では気象学的な条件に変わった点はなかった。海氷を崩壊させる巨大な嵐や縮小を速める熱波も見られなかった。通常と比べ、氷が冬に拡大せず、夏に解けた原因は、広範囲な大気の温暖化しか考えられないと科学者たちは結論づけた。

世界気象機関(WMO)によると、北極の海氷の縮小は2012年に起こった数々の大きな物理的事象の1つでしかなく、そうした事象によって多くの人は、極端な天候が今や標準だと考えるようになったという。

最も衝撃的だった事象は恐らくハリケーン・サンディだろう。カリブ海沿岸からアメリカ東部で猛威を振るった結果、100人以上が亡くなり、数千人が電気や家を失った。しかし、そのわずか数週間後、恐らくさらに勢力の強いスーパー台風ボーファフィリピンのミンダナオ島を襲い、少なくとも900人が死亡し、数十万もの人々が避難を余儀なくされた。

台風はフィリピンでもアメリカでも珍しくない。しかし上記の2つの事象は共に、標準的な時期や被害地域をはるかに超えていた。

WMOの公式発表によれば、2012年最初の数カ月間は太平洋でのラニーニャ現象により気温は低下したのだが、1月〜10月までの10カ月間は19世紀中旬に観測が始まって以来9番目に温暖だった。さらに、2012年は大気中の二酸化炭素濃度に関する記録が破られた年だった。

各国政府は、ほとんど全ての季節において記録が覆されるのを確認した。米国航空宇宙局(NASA)によると、地球が1951~1980年の平均気温よりも低い気温にさらされたのは、今から28年前だという。世界的には、最高気温を記録した11年のうち、10年が過去11年間に含まれている。

アメリカは観測史上、群を抜いて最も暑い1年となる勢いで、猛暑に関する記録は1万5000件近く更新された。一方、ヨーロッパは観測史上、最も暖かい春を迎えた。

熱波、干ばつ、洪水、ハリケーンが、脆弱な国々を襲った。「危険信号があちこちに見られます。例えば、世界人口の3分の1が中度から高度の水に関する問題を抱える国に暮らしています。土地の劣化は15億人に影響を及ぼしています。氷冠は前例がないほど溶解し、永久凍土層は解け、海面レベルは上昇しているのです」と潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は語った。

アル・ゴア元アメリカ副大統領も同意見だった。「夜のニュースを見ると、実際のところ、ヨハネの黙示録の世界をハイキングしている気分になります」

「広範囲に及ぶ変化が地球の海洋と生物圏で起こっています。気候変動は私たちの目の前で起きつつあり、大気圏の温室効果ガス濃縮の結果として今後も続くでしょう。温室効果ガスの濃度はこれまで絶えず上昇しており、それもまた新たな記録に達しました」と、ジュネーブに拠点を置くWMOのミシェル・ジャロー事務局長は語った。

「ラニーニャ現象のような自然の冷却効果は、人類の活動に起因する気候変動の気温上昇という根本的な長期的傾向を変えることはありません」と彼は語った。

しかし気候変動の懐疑派は、集団ヒステリーがありもしない人為的気候変動への恐怖をあおっているのだと反論する。「賛成派は……人為的な気候変動が多くの悪天候事象を起こすだろうと基本的に宣言しています。悪天候事象は常に生じるため、彼らの予測を裏付ける『証拠』が足りないという状況はありえないのです」とクライメート・デポのマーク・モラノ氏は語った。

「彼らは自身の正当性の証拠として常に悪天候事象を挙げることができます。現在の天候は歴史的に前例がないわけでも、珍しいわけでもないという事実にもかかわらず、あらゆる天候事象が気候変動の賛成派の主張を『裏付ける』ことになるため、誰も地球温暖化の主張を反証できないのです」とモラノ氏は語る。

ところが、アメリカ政府による公式な干ばつ観測によれば、アメリカ本土の約3分の2(65.5%)で9月25日までに、過去に例を見ない「中度から例外的な干ばつ」があったという。深刻な干ばつは6月と7月にロシアやシベリアを襲った。

中国では、雲南省と四川省南西部が冬と春に深刻な干ばつに見舞われた。ブラジル北部では50年間で最悪の干ばつに直面し、オーストラリア全土の4月~10月の降水量は通常より31%少なかった。

アフリカ西部の多くの地域およびニジェールチャドを含むサヘル地域は、7月から9月の間に、非常に活動的なモンスーンの影響による深刻な洪水に苦しんだ。ナイジェリアは異常な洪水に見舞われ、中国南部の一部では過去32年間で最高の降雨量を記録した。パキスタンは9月、壊滅的なモンスーンによる洪水に襲われた。

唯一、世界のサイクロンの発生数だけがほぼ標準だった。しかしWMOによると、標準より強い勢力だったとする証拠もあるという。

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この記事は2012年12月18日、Guardianで公表したものです。

翻訳:髙﨑文子

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著者

ジョン・ヴィダル氏は英紙「ガーディアン」の環境部門の編集者である。フランス通信社(AFP)、ノースウェールズ新聞社、カンバーランド・ニュース新聞社を経て、1995年にガーディアンに入社。「マック名誉毀損:バーガー文化体験 (1998)」の著者であり、湾岸戦争、新たなヨーロッパ、開発などをテーマとする書籍に寄稿している。

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