絶滅のおそれのある生物種のレッドリスト

人類は、捕獲が絶滅につながることについてはある程度の教訓を学んできたが、世界中の多くの場所で生計を脅かされている人たちがいるからには(その一方、多くの場所で避けようのない欲があるからには)、その問題が片付いたというわけにはいかない。

私たちは新たな時代に足を踏み入れている。一部の人に言わせれば、今は人類が引き起こした新たな地質学上の時代、いわゆる人新世だ。多くの科学者が、世界は第6の大量絶滅期に入ったのかもしれないと言い出すほど、世界の種の多様性に関して懸念が高まっている。そのような中で、心強いニュースは常に喜ばしい。

堂々とした姿が印象的なアラビアオリックス(Oryx leucoryx)はその好例だ。一時は狩猟が横行して絶滅寸前だったが、IUCN (国際自然保護連合)が発表した絶滅のおそれのある生物種のレッドリスト™の最新版によると、「絶滅危惧IB類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)」から「絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)」に持ち直した。アラビア半島だけで見られるこのアンテロープの一種は、現地ではアル・マハという名で知られており、最後の野生の個体が射殺されたのは1972年と考えられている。

アラビアオリックス (Oryx leucoryx). Photo: © David Mallon.

アラビアオリックス (Oryx leucoryx). Photo: © David Mallon.

IUCNによると、「野生絶滅(飼育・栽培下で、あるいは過去の分布以外に、個体(個体群)が帰化して生息している状態のみ生存している種)」のカテゴリーに一時的に属しながらも、そこから3段階の回復に成功した種はアラビアオリックスが初めてだ。現在の野生の個体数は約1000頭である。

アブダビ環境庁のラザン・ハリファ・アル・ムバラク長官は「アラビアオリックスを絶滅の淵からここまで引き上げたのはまさに大きな勝利であり、これこそ保護のサクセスストーリーです。他の絶滅危機種についても、同じことが起きてほしいものです。これはレッドリストのデータが現地の保護活動に生かされ、目に見える成果につながった典型的な例です」と述べている。

憂慮すべき発見

朗報がある一方で、IUCNは毎年のことながら、憂慮すべき新たな発見もあったと述べている。今年度は、両生類(カエルやサンショウウオなど)の19種がリストに追加された。そのうち、ペルーに生息するヒキガエルの1種であるAtelopus patazensisや、グアテマラに生息する小型サンショウウオの1種であるDendrotriton chujorum など、8種が「絶滅危惧IA類(ごく将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)」に分類されている。

両生類は数年来、最も絶滅が危惧される分類群の1つで、41%が生息地の消失、公害、病気、外来種などの脅威により、絶滅の危機に瀕していると推測されている。両生類は地球上で最も長い歴史を持つ生命体で、いずれも数百万年前に起こった過去4回の大量絶滅を乗り越えてきている。生物学者によると、現在の絶滅率には警戒が必要だという。

サンフランシスコ州立大学生物学部のヴァンス・T・ブランデンブルグ准教授は、「過去の絶滅を生き延びた古代種は、今という時代には何かおかしいところがあると私たちに伝えようとしている」という。

“ニューカレドニア(太平洋南西部メラネシアにある諸島)固有の爬虫類は、67%にあたる種が絶滅の危機にある。”

オウカンミカドヤモリ (Rhacodactylus ciliatus). Photo: © Tony Whitaker

オウカンミカドヤモリ (Rhacodactylus ciliatus). Photo: © Tony Whitaker

他にも、今年度のリストで明らかになった衝撃的な事実の1つとして、今回初めて評価が行われたニューカレドニア(太平洋南西部メラネシアにある諸島)固有の爬虫類は、67%にあたる種が絶滅の危機にある。主な原因は、ニッケル採掘業の開発が今も続いているために、生息地の消失や分断が絶えず起きていることにある。また、導入種の影響もあり、例えばシカやブタは残された生息地に被害を与え、ヒアリ(外来生物)はトカゲの個体数を激減させ、一部を絶滅に追いやっている。

IUCNの種の保存委員会を率いるサイモン・スチュアート氏は、「絶滅の危機を阻止するカギは、絶滅のおそれがある種とその環境が直面している主な脅威の撲滅に注力することです。そこで初めてそれらの種の将来の安全が確保できます」と説明する。

IUCNのレッドリストが目指しているのは、まさにそういった努力を後押しすることだ。スチュアート氏いわく、レッドリストは政策担当者に「現在の種が置かれている状況だけでなく、既存の脅威と必要な保護活動についても、豊富な状況を提供するもの」なのである。

情報不足

もちろん、世界の生物多様性を評価する作業には終わりがなく、地球上に無数の種がいることからすると、私たちの知らないことの方が知っていることよりはるかに多い(世界の既知の種の数は約180万で、地球上のすべての種の数は300万から1億という大きな幅をもって推定されている。)

それでもIUCNはさらなるデータを収集するために、専門分野に特化したパートナー(バードライフ・インターナショナル、植物園自然保護国際機構、コンサベーション・インターナショナル、ネイチャーサーブ、キューガーデン、ローマ大学サピエンツァ校、テキサスA&M大学、ワイルドスクリーン、ロンドン動物学協会など)と力を合わせて活動している。

実際にレッドリストは、絶滅のおそれがある生物種の名前が危機の程度順に分類されている一覧表というだけではない。そこには、さまざまな種にとって脅威となっているもの、それらが生態学上で必要としていること、生息している場所、絶滅を食い止めるために講じることができる保護対策などについて、豊富な情報がまとめられている。

生物種は、個体数の変化、個体群の規模、構成、地理的な分布範囲などに関わる基準を満たしているかどうかによって、8つの危機のカテゴリーの1つに振り分けられる。「絶滅危惧IA類」「絶滅危惧IB類」「絶滅危惧II類」に分類された生物種はまとめて「絶滅危惧種」と見なされる。

しかしながら、その他に残念ながら、「情報不足」というカテゴリーがある。これは、十分な情報がないので分類ができないということだ。

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今年度、IUCNのレッドリストに新たに追加された生物種の中に、最近発見されたメガネザルの1種、Wallace’s Tarsier(ウォーレシスターシャ) ( Tarsius wallacei)が含まれている。近い種である Siau Island Tarsier (シアウアイランドターシャ)(Tarsius tumpara)も今年度、リストに初登場したが、こちらが「絶滅危惧IA類」と分類されているのに対して、Wallace’s Tarsierは「情報不足」とされている。この森の住人については、2010年に初めて評価が行われたが、これまでにインドネシアの中央スラウェシのごく限られた2カ所でしか見つかっていない。

同様に、248種類のロブスターの評価が行われ、35%が「情報不足」に分類された。その中にはCaribbean Spiny Lobster(カリビアンスパイニーロブスター) ( Panulirus argus)が含まれている。この種は過剰捕獲の結果、個体数が減少しているとされているものの、その他にわかっていることはほとんどない。IUCNは、海洋生物を食料および生活の糧にしているのは世界で12億人と推定しており、捕獲レベルについて明らかに信頼できる情報が不可欠だ。

IUCNの世界の種のプログラムのディレクター、ジェーン・スマート氏は、「ほとんど知られていない種について、さらに調査を行うことがきわめて重要です。というのは、適切なデータがなければ、絶滅のリスクを見極めることができません。そうなると、完全に姿を消してしまうのを防ぐために効果的な保護対策を計画することも、実行することもできません」と述べた。

重大な局面

生物多様性の喪失は世界で最も懸念されている危機の1つだ。生物種はかつてなかった勢いで減少し、深刻な水準に達している。IUCNによると、気がつかないところでも多くが絶滅しており、「絶滅危惧IA類」に分類される種の数は増加している。

IUCNレッドリストからは、絶滅は「背景」絶滅率、すなわち自然に絶滅する割合の100倍から1000倍の速度で起こっていると推定される。理由は数多くあるが、その中には生息地の破壊、農業や開発のための土地転用、気候変動、公害、違法な野生動物の取引、外来種の拡散などが含まれる。

これらの原因を引き起こしていたり、さらに悪化させていたりするのは総じて人間であり、私たちはそれにブレーキをかけなければならない。そのために私たち一人一人が、自身の行動を見直すことが必要だ。毎年、レッドリストが発表されるのは、その良いきっかけになる。

野生動物の感動的な映像や写真を提供することで、絶滅のおそれのある生物種への認識を高めようとしているIUCNの協力組織、ワイルドスクリーンの最高責任者、リチャード・エドワーズ氏は次のように語った。「多くの種について、状況は予断を許しませんが、レッドリストに掲載されている一部の種の状況が改善しているのは、保護活動が意味のある結果を出していることを示す確かな証拠です」

そして同氏は次のように続けた。「私たちは自然世界との断絶の問題に緊急に取り組む必要があります。そして、絶滅の危機に瀕している種を救うには、まず私たちが、それらの危機的状況、意義、価値、重要性を正しく伝えることが必要です」

翻訳:ユニカルインターナショナル

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絶滅のおそれのある生物種のレッドリスト by キャロル・スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリストで、グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。

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  • Tomoyuki Nakatsuka

    IUCNの種の保存委員会を率いるサイモン・スチュアート氏は、「絶滅の危機を阻止するカギは、絶滅のおそれがある種とその環境が直面している主な脅威の撲滅に注力することです。そこで初めてそれらの種の将来の安全が確保できます」と説明しており、またIUCNのレッドリストが目指しているのは、まさにそういった努力を後押しすることであり、レッドリストは政策担当者に「現在の種が置かれている状況だけでなく、既存の脅威と必要な保護活動についても、豊富な状況を提供するもの」なのである、と記事にある。
    しかし、レッドクロスは少しネガティブなイメージが強すぎないだろうか。つまり世界遺産のように登録されることは名誉であり、世界的な知名度につながり、そしてもちろん世界的な保護や維持にもつながる、というような要素をレッドクロスにも与えることはできないだろうか。確かにレッドクロスに登録されることは名誉というより、ある意味不名誉なことかもしれないが、何もレッドクロスに登録されるということは100パーセントネガティブなことというわけではなく、自然環境、生物、多様性といった人類にとってかけがいのない財産の再認識や、保護、関心を引き起こし、それが地球環境の改善へとポジティブに働きうることもあるのではないだろうか。
    産業革命以降の地球の環境の変化は目覚ましいものがあり、毎年のように絶滅危惧種のレッドリストに載る生物種がいるという今日、この世界的かつ危機的な問題に地球規模で取り組むためには、ただ保護という「守り」あるいはネガティブな姿勢だけではなく、「攻め」あるいはポジティブな姿勢で臨んでいくべきではないだろうか。

  • yuki sasaki

    私は東京都に住むごく普通の中学生ですが
    近年の異常気象に不安を感じ自分なりに地球温暖化と生態系の変化について調べてみました
    すると沢山のデータのヒットがありました

    2006年から2010年にかけての4年間で絶滅するおそれのある動物は2233種増加しており
    当然その中には現在は既に絶滅してしまっている種も多くいるという事です

    私はすごくすごくショックでした
    今はこの一人一人の小さな力で何ができるのか考えています。