COP15「気候変動に対する先住民の証言」映画祭

コペンハーゲンで開催されるCOP15の温暖化交渉における議論の活性化に少しでも貢献するために、国連大学は他の協力団体と共に映画祭を企画し、その準備に力を注いでいる。コペンハーゲンのデンマーク国立博物館にて開催予定の「“気候変動に対する先住民の証言”映画祭」(12月9日~13日、午後4時~6時)である。

この映画祭では、世界中の先住民族コミュニティから数々の切実なストーリーが集められ、現在進行中の気候変動が各々の地域に実際に及ぼしている影響とその適応策について、生々しい現実が浮き彫りにされる。

今日、急速に進行しつつある気候変動によって、先住民たちの生活は著しく影響を受けている。住まい、生計手段、文化、そして生死に直接関わってくるエコシステムを失う者たちが出てきているのだ。気候変動による損失が増加の一途をたどっていることは科学者たちが数字で示している。だが同時に我々は先住民たちの気候変動に対する見方が極めて貴重なものであると気づかされる。

多くのコミュニティのなかで伝承されてきた知識には、地球のシステムやサイクルと人間との、古代から続く深く精神的な関係が内包されている。伝統的な歌・言語・衣服・建築・食料・モチーフ・日々のしきたり・神話などから、その土地に伝わる、生き抜くための知恵が読み取れるのだ。さらに先住民文化の多様性が、自然の中で人々が平和に共生していくための、独自の洞察と示唆の数々を提供してくれている。

気候変動に対する脆弱性と適応策についてこのような先住民族のストーリーを共有することは、それぞれの適応戦略に込められた祖先の英知についての知識を分かち合うことにもなる。そして伝統的知識の価値を尊重することは、気候変動への最適な適応方法の発見につながり得る。

「気候変動に対する先住民の証言」映画祭

デンマーク国立博物館、コペンハーゲン
12月9日~13日
16時~18時
入場無料

当映画祭で上映される映画のうち15本は、下記のプレイリストで観ることができる。映画祭用にカスタマイズされたyoutube映画祭用にカスタマイズされたyoutubeのビデオだ。左から2番目のボタンをクリックすることで観たい映画を選ぶことができる。

上映作品(アルファベット順)

ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE BY MPHUNGA VILLAGERS IN MALAWI
マラウイのムプンガ村の気候変動への適応策
(2009年、7分33秒、マラウイ赤十字社)
コミュニティにおける様々な活動をシンプルな方法で気候変動に適応させ、ムプンガのコミュニティは回復力を高めている。例えば農作物としてトウモロコシを植える代わりに米にしたり、家畜をニワトリではなくアヒルにしたり(洪水の際、アヒルは泳げるが、ニワトリは溺れてしまう)といった方法である。

バカに住む人々――カメルーン

BAKA PEOPLES – CAMEROON
(2009年、12分、Conversations with the Earth)
コミュニティが作成した一連のビデオ。中央アフリカ熱帯林における気候変動の影響をリポートする。

荒れた海に立ち向かう――バングラデシュ

COPING WITH ROUGHER SEAS, BANGLADESH
(2009年、5分、UNU)
低地にあるバングラデシュには、世界で最も気候変動の被害を受けやすい人々が暮らしている。その人々が革新的な気候変動への適応策を講じている。

気候変動とイランの先住遊牧民たち

CLIMATE CHANGE AND INDIGENOUS NOMADIC TRIBES OF IRAN
(2009年、9分46秒、Cenesta)
干ばつ、それは生命の死。かつては肥沃だった土地からの証言。

気候変動難民――カーテレット諸島、パプアニューギニア

CLIMATE CHANGE REFUGEES, CARTERET ISLANDS, PAPUA NEW GUINEA
(2009年、6分37秒、UNU)
海面上昇が起こるなか、ニコラス・ハカタと彼の家族は、魚とココナッツを糧にし、マラリアに感染した沼地の蚊と闘いながら、これまで生き延びてきた。飢えと失望感に苛まれた島の人々は、自ら移住計画チームを結成し、家族をより安全な場所へと移動させる緊急課題に取り組み始めた。

パミール高原に住む人々のためのエネルギー――タジキスタン

ENERGY FOR THE PAMIR MOUNTAINS, TAJIKISTAN
(2009年、6分40秒、UNU)
「世界の屋根」として知られている山岳地帯にすむ人々が、生活のための燃料確保に苦闘。

エチオピア:気候変動の中で農民から農民へと伝えあう知識

ETHIOPIA: FARMER TO FARMER LEARNING IN A CHANGING CLIMATE
(2009年、6分40秒、オランダ赤十字社)
エチオピアの農民たちが、気候変動への適応を助ける新しい技術を互いに教え合う。

人工的山火事によりCO2と闘う――アーネムランド、オーストラリア

FIGHTING CARBON WITH FIRE, ARNHEM LAND, AUSTRALIA
(2009年、5分32秒、UNU/ANU/WARDDEKEN)
アボリジニの「火エコロジスト」であるディーン・イバーブク氏が、伝統的なファイヤー・マネージメントの実践によって、いかに国土が何千年も健康な状態に保たれてきたかを説明する。最近、彼のグループが地元の科学者たちと協力して行っているのは、温室効果ガスの排出を抑え、同時に国土を保護するために、伝統的ファイヤー・マネージメントの制度を応用する研究である。

放牧場所を求めて:キルギスタンの羊飼いの家族と牧草の減少

FINDING A PLACE TO FEED: KYRGYZSTAN SHEPHERD FAMILY & PASTURE LOSS
(2009年、8分9秒、UNU)
キリギスタンの天山山脈にある高原牧場で働く羊飼いのドゥートカシーと妻のアナルクルが、一家が見てきたことと共に気候変動への伝統的適応策を紹介している。

イヌイットの知識と気候変動

INUIT KNOWLEDGE AND CLIMATE CHANGE
(2009年、15分、ザカリアス・クヌックとIsuma.tv)
イヌイット族の映画監督ザカリアス・クヌックとIsuma.tvが、イヌイットのコミュニティと猟場の最前線からの最新情報を伝える。

日本の海女:磯笛の響く場所

JAPAN’S AMA DIVERS: WHERE THE SEA WHISTLE ECHOES
(2009年、12分、UNU)
古来より続く日本の女性ダイバー「海女」は、何百年もの間、持続可能な漁を実践している。しかし気候変動が魚の乱獲と相まって、海女たちは見通しの立たない将来と直面している。

クナ・ヤラ、パナマ

KUNA YALA, PANAMA
(2009年、14分、Conservations with the Earth)
代々受け継いできた島の領土が海面上昇の脅威にさらされているなか、パナマの先住民族であるクナ族が、自分たちの文化を守るためにどのように闘い、適応を試みてきたかを一般参加型のビデオを使い紹介する。

マーナ(今)――イヌイット、カナダ

MAANA (TODAY) – INUIT, CANADA
(2009年、6分32秒、フェリックス・ファランド D.)
クリエイティブで面白いショートフィルム。イヌイット族の青年が、彼の住む現代北極のコミュニティにおける二酸化炭素排出量の多さに気づく。

マサイ族と気候変動

MAASAI AND CLIMATE CHANGE
(2009年、14分、Conservations with the Earth)
マサイ族のコミュニティが作成したビデオ。干ばつによる壊滅的な打撃に関するケニアからの報告。

アンデスで溶けゆく氷

MELTING AWAY IN THE ANDES
(2009年、4分、Sacred Lands Film Project)
クスコの南東、アンデス山脈の急な斜面に暮らすケロの人々はイモを育て、アルパカを飼い、コカの葉をかみ、彼らがアプスと呼ぶ山の神々に祈りをささげる。ここ何年かの間たびたびエルニーニョに見舞われるなか、ケロ文化の繁栄のためには、そのつど強靭に立ち直る回復力が欠かせない。地球が温暖化し氷河が溶けゆく今、ケロの人々は気候変動を正面から見すえ、生き延びる模索の最先端にたつ覚悟である。

我々の砂丘との闘い――マダガスカル

OUR FIGHT AGAINST THE DUNES – MADAGASCAR
(2009年、3分、Panos London)
迫りくる砂丘に対する闘いが、フォーカップ・コミュニティの核心にある。1950年代以来、砂丘が彼らの住まい、学校、そして地元の警察署を覆いつつある。

パミール族の女性とタジキスタンの溶けていく氷河

PAMIRI WOMEN AND THE MELTING GLACIERS OF TAJIKISTAN
(2009年、10分07秒、UNU)
パミール山脈の氷河は、中央アジアの水資源の50%を供給している。その氷河が、グリーンランド大陸の氷河と同様の速度で、急速に溶け出している。3世代のパミール族の女性たちが、氷河の融解と水位下降の影響を語る。

アルタイ共和国における人と自然との関係を再発見する――ロシア

REDISCOVERING ALTAI’S HUMAN-NATURE RELATIONSHIPS, RUSSIA
(2009年、8分33秒、UNU)
スラヴァ・チェルツエフは、テレンギト族のコミュニティのリーダー兼シャーマン。ロシア内の自治共和国であるアルタイの高地にあるコシ=アガチ地区出身の彼は、我々の暮らすこの21世紀の世界を省みて、重要な伝統的知識の復活が大切であると強調する。それは長い年月受け継がれてきた英知であり、その土地の環境と人間の営みとを、互いに尊重し調和のとれた関係になるよう導いてくれる。

コワンヤマの海面上昇――ケープヨーク、オーストラリア

SEA LEVEL RISE IN KOWANYAMA – CAPE YORK, AUSTRALIA
(2009年、6分26秒、UNU)
「海面が上昇したら、我々はどこに行けばよいのか?」コワンヤマ・コミュニティの伝統的知識を受け継ぐ長老インヘルコウィンギナンバナ氏は言う。ビデオでは、彼が地元で土地を管理する人々や伝統的所有者(※注:伝統的知識・文化の担い手)たちと共に、海面上昇によって環境が変化した様々な文化的場所を訪れる。

ソルガム:我々の先祖から伝わる穀物――マダガスカル

SORGHUM: A CROP OF OUR ANCESTORS – MADAGASCAR
(2009年、3分、Panos London)
ソルガムはアンタンドロイ族の穀物であり、アンタンドロイ族に受け継がれてきた遺産である。最近までは、干ばつの際の援助として導入されたトウモロコシに取って代わられ、ほとんど姿を消してしまっていた。しかし彼らの多くにとって、ソルガムは失われたものであっても忘れ去られたものではなかった。マダガスカルのアンドロイ地方では今ソルガムが復活を果たしている。干ばつに極めて強いと判明したこのソルガムのカムバックに多くの農家が意欲的だ。

ダヤック族の禁断の森――ボルネオ、インドネシア

THE FORBIDDEN FOREST OF THE DAYAK, BORNEO, INDONESIA
(2009年、9分5秒、UNU)
ボルネオの原生林の奥地で、セトゥラン・ダヤック族のコミュニティは強い責任感を持って森の木々を守っている。「タナオレン」(禁断の森)に対するこの村の伝統的な戒律のおかげで、村は木材産業からの強まる圧力に何とか抗してきた。今日、急速な開発が進むなか、村は持続可能で森林にやさしい生活を守ろうと懸命の努力をしている。

先祖の魂と共に歩む――オーストラリアの湿地帯で失われつつある生物多様性

WALKING ON COUNTRY WITH SPIRITS: BIODIVERSITY LOSS IN AUSTRALIA’S WET TROPICS
(2009年、6分40秒、UNU)
ククニュングカル族の女性、マリリン・ウォラスは、オーストラリアのファーノースに位置する世界遺産の熱帯雨林に囲まれた故郷で、「先祖の慣習に従った」生活を送っている。すでに季節周期の変化を肌で感じている彼女は、気候変動が彼女の故郷がいかに変化を及ぼし、伝統的なものの見方を変容させつつあるかを語る。

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当映画祭は、国連大学がこの記事で取り上げた先住民グループとの協力により、自信を持ってお届けする企画である。協力団体は、Conversations with the Earth, 赤十字、Panos London, Cenesta, Isuma.tv, Sacred Land Film Project, デンマーク国立博物館、そしてChristensen Fundである。

当映画祭は、現在進行中の「先住民の気候変動アセスメント」と国連大学高等研究所(UNU-IAS)の伝統的知識イニシアチブ(TKI)の研究を補完するものである。

当映画祭のことや、リストの中で気に入った映画のことを他の人にも是非伝えてほしい。詳細については、上記のプレイリストのリンクを参照してもらうか、あるいはOur World 2.0のウェブサイトのこちらからどうぞ。

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翻訳:金関いな

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COP15「気候変動に対する先住民の証言」映画祭 by キット・ウィリアムズ is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

キット・ウィリアムズは情熱的で革新的な映像作家。手がけた映画カンヌ、サンダンス、シドニーそしてムンバイで上映された経験を持つ。

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