森林への理解を世界で高めよう

2011国際森林年が2012年2月に閉幕する。国際連合森林フォーラム(UNFF)事務局長のジャン・L. マックアルパイン氏が、様々な出来事のあった1年について感想を述べた。国際森林年のおかげで「地球上の70億人の人々の経済的、精神的、肉体的健康は、森林と関連している」という明確なメッセージを広めることができたと話す。

国連経済社会局(DESA)広報とのインタビューで、マックアルパイン氏は国際森林年のハイライトと、世界の森林管理や保護および持続可能な開発を推進する森林フォーラム事務局の活動について話してくれた。彼女は「私たちを毎日支えてくれる森林の健康を確保する上で、人間が重要な役割を担っている」こと、そして持続可能な開発を実現するためには分野や組織を横断した戦略が必要であることを強調した。

国際森林年を振り返って、この1年の成果や、森林の重要性の伝えられ方に満足していますか?

「国際森林年(森林2011)はまさに、グローバルな政策議論における森林への関心の高まりを示す証しでした。森林や樹木と私たちの関係について人々の意識が高まったため、政策においても社会的意識においても見通しは変わりつつあります。私は経済社会局事務次官の沙祖康氏のサポートに感謝しています。彼は、森林への関心を行動に移すために森林2011を活用することが重要だと指摘してくれました」

「歴史を通じて森林は、森林に依存する人々の暮らしに直接的な影響を与えてきました。しかし森林2011は、もはや無視できない明確なメッセージを発信しました。それは、地球上の70億人の経済的、精神的、肉体的健康は、森林と関連しているというメッセージです」

「森林は世界人口の4分の1を超える人々に生計を与え、3億人に生活の場を提供し、木製および非木製製品の3分の1を生み出しています。森林が持続可能な方法で管理、利用されている場所では、貧困の緩和や、森林を基盤とした事業やサービスの創造に森林が大きく貢献することができます」

“歴史を通じて森林は、森林に依存する人々の暮らしに直接的な影響を与えてきました。しかし森林2011は、もはや無視できない明確なメッセージを発信しました。それは、地球上の70億人の経済的、精神的、肉体的健康は、森林と関連しているというメッセージです。”

「私がよく指摘するのは、森林はランドスケープ全体の要石だという点です。ランドスケープには湿地、農業、山、乾燥地、川、生物多様性、そして人間も含まれます。持続可能な開発を実現するためには、こうしたランドスケープの多様な側面を分野や組織を横断した戦略に取り入れるアプローチを利用しなくてはなりません」

国際森林年で個人的に印象に残る出来事はありますか?

「国際森林年を記念する刺激的なプロジェクトが世界中の国連加盟国から誕生し、政策立案者や消費者、NGO、市民社会、ビジネス界、若者、科学界から持続可能な森林管理を促進するための行動を引き出してくれました」

「特に注目すべき出来事として印象深かったのは、森林2011の開幕時に、ルワンダが国土全域のランドスケープ再生という目標計画を発表したことです。ポール・カガメ大統領閣下の公使としてスタニスラス・カガンジ環境・国土大臣は、今後25年にわたり全国的な環境修復に尽力すると発表しました」

「つまり、中央アフリカの小さな国における劣化した土壌や水、土地、森林資源を再生するということです。ルワンダの環境と国民は1990年代の内戦によって大打撃を受けました。ルワンダはUNFF事務局、国際自然保護連合(IUCN)、地球環境ファシリティー(GEF)などの協力機関とともに、持続可能な農業生産、低炭素経済の発展、適切な水とエネルギーの供給、農村の生計のための新たな機会創出を実現する計画を2015年までに策定する予定です。森林の破壊と劣化を逆転させるという大胆な目標は、間違いなく周辺諸国を刺激し追随させることになるでしょう」

「もう1つ、個人的に印象深かったことは、今回の国際森林年を共同努力の1年にしてくれた前例のない協調的精神です。森林に関する協調パートナーシップ(CPF)の尽力と支援なしには、国際森林年の開催は不可能だったでしょう」

国際森林年の結果として、世界の人々にどのようなメッセージを覚えていてほしいでしょうか?

「森林2011から誰もが受け取ることのできる最も重要なメッセージは、私たちを毎日支えてくれる森林の健康を確保する上で、人間が重要な役割を担っているということです。私たちが飲む清潔な水から、私たちが吸うきれいな空気にいたるまで、森林が私たちを支えているのです。森林は、進化し続ける人間の欲求を映し出す鏡であり、動的で変化し続けるものです」

“気候変動を緩和し、薬や住居や原材料を供給し、世界中の何十億もの人々の暮らしを支える森林は、私たち人間が生きていくための中枢なのです。”

「私たちはよく統計を使って、人間にとっての森林の重要性を伝えようとしますが、森林の本当の価値を理解するには、人々の現実の生活に森林が及ぼす影響という視点が必要です。気候変動を緩和し、薬や住居や原材料を供給し、世界中の何十億もの人々の暮らしを支える森林は、私たち人間が生きていくための中枢なのです」

世界各地を訪れた1年を振り返り、優れた実践例として特筆したい森林関連の活動はありましたか?

「世界各地を訪れて、私は人々と森林のダイナミックな関係を何度も目撃しました。私たちはこの1年間、環境問題や社会問題を世界に伝える優れた方法として、人間に注目してきました。そうした問題から、先住民族の物語や、コンゴ民主共和国、インドネシア、ブラジルのサンパウロなど森林に依存するコミュニティーの物語が明らかになります。それは世界経済によって周辺へ追いやられた人々の物語です。森林は農村部の貧しい人々にとってセイフティーネットとして機能しており、だからこそ森林が貧困削減で重要な役割を果たすのです」

「昨年5月、私は太平洋地域の森林会議ANZIF 2011に参加するため、ニュージーランドを訪れました。マオリ族の歓迎を受けた後、ンナティ・ツワレトア族の最高首長サー・ツム・テ・ヘウヘウ氏が正式な開幕を告げました。私は光栄にも、ニュージーランド政府とロトルアのンナティ・ツワレトア族のゲストとして迎えられました。そして人々が文化や精神的信条を生活に取り入れる様子、すなわち持続可能な開発という概念の縮図をじかに見ることができました。私はニュージーランドで、この概念を何百年にわたって定義づけ、内在化してきた社会を見たのです」

国際森林映画祭もあなた自身も、名誉ある賞を受賞しています。受賞についてお話しいただけますか?

「昨年9月、歴史的な建造物であるアーヘン市庁舎で開催された記念イベントにおいて、私はGerman Forest Association(ドイツ森林協会)からFernow Award(フェルノウ賞)を授与されました。UNFF事務局の業績や国際森林年関連の活動、さらに環境や貿易や社会の問題と取り組んできた30年間に及ぶ私個人の活動が認められた結果です。同賞は、国際的な森林問題における優れた業績を認め、UNFF事務局の成功や、私たちが森林のために促進してきた有望なパラダイム・シフトを反映するものです」

「ジャクソン・ホール野生生物映画祭(JHWFF)の実行委員長であるリサ・サムフォード氏と私が国際森林映画祭を最初に構想した時、30カ国以上から165作品もの応募があるとは予想していませんでした。映画というパワフルな媒体を通じて世界の人々に森林問題を伝えることができたのは、サムフォード氏の独創力とJHWFFの多大なサポートのおかげです」

「最優秀賞を獲得した「The Queen of Trees」は、私のお気に入りとして常に頭に浮かんでくる作品です。この作品はエジプトイチジクとイチジクコバチの共生関係を丁寧に描いています。アフリカの草原じゅうで多くの植物や動物、人間の生活に影響力を及ぼす、1本の木という小宇宙の中で繰り広げられる犠牲と再生の物語です」

「また、中国の黄土高原のやせた土地の再生を描いた「Hope in a Changing Climate」もお気に入りの1つです。この映画は、土地管理における人々の役割やその効用に関する考え方を変えるのに役立っています」

「昨年6月5日、国際森林映画祭は International Association for Environmental Communication(AICA、環境コミュニケーションのための国際協会)の「市民とのコミュニケーションによる環境改善」部門賞を授与されました。私はヨーロッパの主要な環境映画祭 CinemAmbiente に招待され、賞を受け取りました。アル・ゴア氏のドキュメンタリー映画「不都合な真実」を製作したパーティシパント・プロダクションズが以前に受賞した賞です。

ガバロン財団との協賛で子どもアート・コンテストが開催されています。この活動への抱負は?

「UNFF事務局はガバロン財団およびスペインのソフィア王妃子ども美術館との共同で、2011年国際子どもアート・コンテストを開催しました。子どもの目で森林を見ることによって希望のメッセージを伝えようとするユニークな機会です。コンテストのテーマは『森林を称えよう』です。私たちは芸術、特に子どもたちの芸術がこうしたビジョンを反映する重要な媒体であると信じています」

「同コンテストに応募された芸術作品は、子どもだけでなく大人の心も動かし、将来の世代のために森林を守る行動を起こさせる一助になるに違いありません。コンテストの入賞者は2012年2月に発表されます」

フォレスト・ヒーローズ・プログラムとその賞について少し教えていただけますか?

「1人のカキ養殖業者は養殖場の水質を守るために森林が重要な役割を担うことに気づきました。そして2人のガールスカウトは、自分たちが売るクッキーには持続可能な方法で生産されたパーム油を使うことを求めるキャンペーンを展開しました。こうした世界各地の活動が、私たちの森林に対する考え方を変えたのです」

「国際森林年とは、森林の恵みをより大きな視野でとらえようとする人々の行動そのものです。物静かなヒーローのように森林の育成に貢献している数知れぬ人々に対して敬意を表するため、私たちは第1回国際フォレスト・ヒーローズ・プログラムを開始しました。

「UNFF事務局には、アジア、アフリカ、ラテンアメリカおよびカリブ諸国、ヨーロッパ、北アメリカの5地域、41カ国から、90候補が寄せられました。15人に絞られた最終候補の中から、各地域1人ずつ、計5人が表彰されます。受賞者は、2012年2月にニューヨークの国連本部で行われる2011国際森林年の閉幕式で発表されます」

世界の森林管理、保護、持続可能な開発を促進する活動に携わる中で、どんな時にやりがいを感じ、主な課題は何だとお考えでしょうか? また、森林の未来にどんな希望を託しますか? 国連加盟諸国に伝えたいメッセージはありますか?

「重要な課題の1つは、貧困の削減と食料安全保障の問題を政策作りや森林問題の対策にどのように統合するのかという点です。皆さんは国連が次のような驚くべき事実を発表するのを何度か耳にしたことがあるはずです。それは、16億人の人々が生計や食料、木製および非木製製品の供給を森林に頼っているという事実です。国の発展や貧困の削減や食料安全保障における森林の貢献度について、私たちは常に新たな発見をしています。私たちには、森林に関する分野横断的で360度を見渡せるような視野が必要です。森林保護策は結局のところ、森林と人間の重要な関係にかかわるのだという単純な真実を考慮に入れた視野を身につけるべきなのです。

「社会の発展や人々の生活や貧困の根絶に対して森林が果たす貢献を強化する戦略は、持続不可能な事業や経済危機が健康な森林と森林に依存する人々を脅かし続けている時には、極めて重要になります。しかし、持続可能な森林管理は「万能」ではありません。それは多層的で進化し続けるコンセプトであり、多様な手法と戦略によって実行されるものです。国際森林年が閉幕に近づく今、旧態依然のやり方を超えて、すべての人にとって持続可能な未来を築くための行動計画を作ることが重要です。

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国連森林フォーラム事務局は、国連組織内外の様々なパートナーとの分野横断的なつながりの育成と強化を促進し触媒する役割を担う世界的組織です。2000年の創設以来、UNFFは森林に関する議論を広げる必要性を認識し、森林に関するすべてをあらゆる角度からとらえる視点を推進してきました。森林破壊や植林の問題を超えて、より広義に森林をとらえ、その経済的、環境的、社会的価値の議論を進めています。

翻訳:髙﨑文子

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著者

ジャン・マックアルパイン氏は2008年11月、国連事務総長により国際連合森林フォーラム事務局長に任命された。同事務局はニューヨークの国連本部にある。彼女はワシントンD.C.のアメリカ国務省森林局で上級顧問を務める前に、環境保護局に携わったほか、ホワイトハウスでは持続可能な発展に関する大統領諮問機関に就き、その後アメリカ合衆国通商代表部で林産物および木材の国際取引に関連する問題の交渉担当者を務めた。

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