討論会2.0:富裕層による償いは可能か

「ウォール街を占拠せよ」というデモが少し前のスペインやギリシャ同様、世界中でトップニュースとなっている。いずれも「アラブの春」での人民蜂起を受けてのことだ。

とはいえ、最近のこの動きに対し批判的な人々も同様に声高に叫んでいる。右翼メディアは、個人の「占拠」活動家がインタビューされ、受け売りで説得力のない動機を語る様子を見て大喜びだ。(バンクーバーのコラムニストは先日「金持ちが貧乏になり、貧乏人が金持ちになるまで戦う」という表現を引用していた。また別の写真にはこんなポスターを掲げる者も見られる。「そのうち貧乏人は食べ物がなくなって金持ちを食べるしかなくなる」)

また、「99%の人々」という表現を生み出した数字の根拠とデータの解釈について屁理屈をいう者もいる。これは、「世界の40%の富」(2006 世界開発経済研究所UNU-WIDER の研究による) を持ち、アメリカでは34.6%の富を所有する1%を除いた残りの人々をさす。そもそも北米は世界の他国と比べれば間違いなく生活しやすい。それにも関わらず不満を言う北米人は皆泣き事を言っているだけだと発言する者までいる。

現実には長期的な失業と明るい兆しの見えない経済のせいで、世界的に陰鬱なムードが漂う。そして人々の怒りは、反企業(多くは金融機関)と反富裕層への動きとなって表出している。2008年の金融危機を引き起こした主要因は企業の欲望だとみられている。おそらくそれが原因となり、最近行われた10カ国での調査では、消費者は以前より厳しく企業倫理に目を向けるようになっていることがわかった。

別の問題は、大富豪の中には気候変動のように切迫した問題への対応努力を阻もうとする者がいるという点だ。彼らは自分の富の一部を失うより、人に優しい気候を失うリスクのほうがマシだと考える。

ある意味で、こういった問題で活動家の雑誌「Adbusters」が取り上げる根本的テーマの説明がつくのかもしれない。彼らは「ウォール街を占拠せよ」の発案者であり、それは現在の世界の生態系や自然資源の危機に直面して、富裕国に住む99%の人々の多くが必要と感じているメッセージと共鳴するようだ。

「世界経済のボトムアップ型への転換から、食生活、移動手段、生き方、愛し方、コミュニケーションのとり方に至るまで、あらゆることについて……。現在のグローバルシステムのコアを占拠するのだ。この世紀を定義する欲望を追い出そう」最近の行動への呼びかけはこのように熱く語りかける。

償いは可能か?

人々の不満の表明によって、「1%」の人々から環境に優しい方向性を引き出すことは可能だと考えるのは希望的観測に過ぎないだろうか。これは多くの人々も願っていることだ。上記の調査によると回答者の34%が経済的発展を社会的に最も優先順位が高いと考えており、21%が環境を第一と考えている。つまり環境関連の仕事に投資すれば、これらを合わせた55%の願いをかなえることになる。

こういう状況の中、来月のCOP17気候変動会議に向けて、世界最大の投資家285人が、低炭素技術など気候変動対策に対する民間セクターからの投資を刺激するような早急の政策措置を求め、声明を発表した。この団体が同じ声明を発表するのは初めてではないようだが、今回は国連環境計画・金融イニシアティブとの協力で制作されたレポートの裏づけがあり、気候変動対策の内容についての詳細が記されている。

投資した金で何が得られるか。ここに1つの具体例がある。この285人の投資家は20兆米ドル程度の財産を所有している。例えばグリーンピースのEnergy (R)evolutionシナリオのように最も大胆な提案に投資するとしても、コストは17.9兆ドルしかかからない。それによって2030年までに世界の80%を再生可能なエネルギーに転換することが可能である。

こういった種類の支出は、気候変動対策を支援するだけでなく、エネルギーの安全性を高め、雇用も創出する。このような投資は新たな富を生み出すとともに、世界の電気がない14億の人々に電気を供給することができる。

1992年リオで開催された地球サミットの時にも繰り返し聞いたことだが、気候変動対策やクリーンエネルギーに必要な資金は大掛かりな政策に比べるとまったく大した金額ではない。それなのに、これまで達成できたことはほとんどない。

「ウォール街を占拠せよ」の参加者たちは、社会的優先順位の見直しが始まったことを暗示しているのだろうか。

そして、投資家たちは、「1%」による償いは可能で、彼らが欲にまみれた救いようのない人々ではないことを示せるのだろうか?

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Debate 2.0: Can Creating a Green Economy Redeem the 1%? by キャロル・ スミス and ブレンダン・ バレット is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリストで、グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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