討論会2.0:石油と引換えに補償金?

先日、エクアドル政府と国連は、豊富な石油が眠るエクアドルのヤスニ国立公園を保全するため、法的拘束力のある重要な協定に調印した。

協定によると、驚くべき生物多様性に富む地域を守るため、赤道直下の貧困国エクアドルに対して経済的に裕福な国が36億米ドルという多額の資金を提供することになる。アマゾン川流域に位置するヤスニ国立公園には、外界から孤立して暮らすいくつかの先住民部族(そのうち2部族は外部との接触を絶っている)が暮らしており、また、在来(原産)の樹木が数百種、絶滅の危機に瀕する動物が数十種、存在している。

エクアドル政府が進めるヤスニ・イニシアティブのウェブサイトによると、この協定は、イシピンゴ・タンボコチャ・ティプティニ(ITT)の各地区に埋蔵されている約8億4600万バレルの石油の開発を永久に断念し、4億トン以上の二酸化炭素の排出を防ぐことを意味するという。

二酸化炭素の排出量削減と生物多様性の保護のため、資源から得られるはずの利益と引き換えに補償金を支払うというやり方は、新たに国連が進めている「生態系サービスへの支払い」として知られる取り組みの一例だ。

開発の新たな枠組み?

9月7日、東京の国連大学で、エクアドルのカリスマ的人物、ラファエル・コレア・デルガード大統領が、第17回ウ・タント記念講演を行った。コレア大統領は、エクアドルが試みる経済開発の新たな枠組みについて熱く語った。

「これまで行われてきたような方法で開発を行うことはできません。ネオリベラリズムでは、経済開発を成し遂げることはできませんでした。私たちは、富を平等に分配するために、社会正義と社会政策の実現に向けてきちんとした仕組みを持つ必要があります」

コレア大統領のビジョンの中心となるのは、多国籍企業による資源開発ではなく、アマゾン川流域を例とする、大統領がいうところの「天然資源の民主化」である。実際に、テキサコ社(現在はシェブロン社の所有)を相手取った訴訟で、大統領が明らかに原告側を支持していることにも、大統領のこの考えが現れている。アメリカの巨大石油企業であるテキサコ社は、環境と先住民社会の生活を破壊したとして告発されており、その様子は数々の賞を受賞したドキュメンタリー映画、「Crude: the Real Price of Oil(原油:石油の知られざる代償)」に描かれている。

「この地域の油田開発をしないことで、生物多様性を守ることができ、吸収量4億トン分の二酸化炭素吸収源を失わずに済みます。しかし、我が国の決断に対して、国際社会は経済的な補償をすべきです」 コレア大統領は、集まった外交官や国連関係者に向けて語った。

ヤスニ国立公園のケースでは、「生態系サービスへの支払い」として提供された資金は、すべて信託基金の形で積み立てられ、エクアドルの環境を守り、先住民社会の貧困を減らすために使われる。

長い間この取り組みの実現を呼びかけてきたAmazon Watch(アマゾン・ウォッチ)などの環境保護団体は、当然のことながらYasuni ITT Agreement(ヤスニITT協定)を歓迎している。しかしこれに対して、さらなる関与を求めるいくつかの地域団体と、充分な補償金を集められないのではと懸念する人々からは、批判が上がっている。

[確かに、昨日のニュース速報が告げた警察官による暴動で、エクアドル政治の未来はいくぶん不透明なものになる可能性がある。ことによると、ヤスニ・イニシアティブは成功の機会を妨げられるかもしれない]

それでもなお、今週の討論会2.0では、「生態系サービスへの支払い」が良い考えであるかどうかを問いたい。

ヤスニ・イニシアティブは、いわゆる「資源の呪い」――鉱物資源と石油を豊富に持つ開発途上国が貧しさから抜け出せずにいる一方で、資源を採取する外国企業の懐(ふところ)が豊かになり、汚職が助長され、独裁者が力を増し、環境が破壊されるというパラドックス――に終止符を打つ方法の、テストケースとはなりえないのだろうか?

それとも、このようなやり方は、ボリビアのエボ・モラレス大統領が先日述べたように、「自然を商品化する」もう1つの手段でしかないのだろうか?

「生態系サービスへの支払い」を行わないとすれば、どうやって環境を破壊せずに貧困を減らすことができるだろうか?

翻訳:山根麻子

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討論会2.0:石油と引換えに補償金? by マーク・ノタラス is licensed under a Creative Commons Attribution-NoDerivs 3.0 Unported License.

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著者

マーク・ノタラスは2009年~2012年まで国連大学メディアセンターのOur World 2.0 のライター兼編集者であり、また国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)の研究員であった。オーストラリア国立大学とオスロのPeace Research Institute (PRIO) にて国際関係学(平和紛争分野を専攻)の修士号を取得し、2013年にはバンコクのChulalpngkorn 大学にてロータリーの平和フェローシップを修了している。現在彼は東ティモールのNGOでコミュニティーで行う農業や紛争解決のプロジェクトのアドバイザーとして活躍している。

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