エド・キング氏はResponding to Climate Changeのウェブサイト、Climate Change TV、『Respond Magazine』の編集者である。RTCCに携わる以前は、ジャーナリストとしてBBCラジオ5ライブ局に勤務した。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)で国際関係学および外交の修士号を修得した。
国際連合砂漠化防止条約 (UNCCD)が発表した新しい調査によると、深刻な土地劣化が現在、世界168カ国に影響を及ぼしている。
各国から国連に提出された情報に基づく今回の結果は、1990年代中盤に行われた前回の分析結果から著しく増加している。当時、砂漠化のリスクが推測されたのは110カ国だった。
UNCCDは先週発表した経済分析の中で、土地劣化が現在、年間4900億USドルの損失を生み、毎年スイスの3倍の土地が劣化していると警告した。
「土地劣化と干ばつは世界のすべての国の発展を妨げています」とUNCCDのルック・ ニャカジャ事務局長 はResponding To Climate Change(RTCC、非政府組織) に語った。
「この課題は、各国政府に問題と真剣に向き合うことを迫っています。しかし、どうしたら政府は問題を真剣に受け止めるでしょうか?劣化した土地の再生に関する利益率を示すことは、現世代ができる最も賢明な投資の1つです」
彼は次のように続けた。「砂漠化と土地劣化と干ばつは、市場の失敗の問題です。経済学的な市場評価の欠落が、土地を安価な資源として認識する状況を生み出したのです」
4月中旬 、世界各国の専門家たちはボンで会合を開き、政府や地域指導者に水の保全と農地の保護を促す方法を評価する。
専門家は、求められる食料生産を支えるためには農地をさらに1億2000万ヘクタール増やす必要があると言う。
土地劣化の原因はさまざまだが、多くの場合、干ばつ、気候変動、集約的な農業形態、誤った水管理に起因する。
UNCCDからカナダが最近離脱したことからも分かるように、砂漠化は多くの国であまり注目されていない。しかし、とりわけ急増する人口への食料確保の懸念が寄せられていることから、気候変動や食料安全保障との砂漠化の関連性は政府や企業から反響を呼び始めている。
国連食糧農業機関(FAO)は、食料需要が2050年までに60パーセント増加すると予測している。専門家は、求められる食料生産を支えるためには農地をさらに1億2000万ヘクタール増やす必要があると言う。つまり南アフリカと同じ広さの農地が新たに必要になるのだ。
一方、イギリス気象庁と米国国際開発庁(USAID) による最近の研究は、2011年にアフリカ東部を襲った深刻な干ばつと東南アジアでのコメ収穫量の下落を、人為的な気候変動と結びつけている。
2000年以降、肉、乳製品、穀物、砂糖といった主要食料の価格は2倍になった。これは食料市場の供給網に弾力性がないことを反映した結果だ。
農業生産量を引き上げる対策は、世界的な温室効果ガス排出の主な原因である森林破壊を引き起こすことが多い。
森林破壊は、自然の二酸化炭素吸収源を地球が貯留する能力を低減したり、水貯留などの「生態系サービス」を提供する木々を破壊したりするため、波及効果を伴って問題を増幅させる。
UNCCDはナミビアで今年開催される2013年締約国会議において「2030年までに土地劣化を差し引きゼロにする」という決議を採択したい意向であり、持続可能な土地管理が2015年に策定予定の持続可能な開発目標の1つになる兆しもある。
UNCCDの専門家パネルは、アフリカだけでも、農業の国内総生産(GDP)の4~12パーセントが環境条件の悪化によって失われていると推測している。
先週、前フィンランド大統領で、地球の持続可能性に関するハイレベル・パネルの共同議長を務めるタルヤ・ハロネン氏は、農村部の貧困や食料不足や土地管理の関連性が新たな目標策定に関する「取り組みを導く」べきだと示唆した。
「持続可能な土地管理、土地劣化の防止、土地の再生は、農村部の貧困を根絶する方法として最も費用効率が高く、恩恵が多いものです」と彼女は話した。
UNCCDの専門家パネルは、アフリカだけでも、農業の国内総生産(GDP)の4~12パーセントが環境条件の悪化によって失われており、アフリカ大陸における慢性的な飢餓と紛争の多くの起因となっていると推測している。
こうした状況はソマリア、エチオピア、ジブチ、ケニアで重大である。同地域では、弱体化した政府と気候変動に関連した年間降雨量の減少が相まって、砂漠化のレベルを押し上げている。
中国では4億人以上の人々が土壌浸食の影響を受けており、年間の経済損失額は100億USドルに上る。さらにUNCCDは、インドの劣化報告は「6倍に」増加したと語った。
• ♦ •
この記事はguardian.co.ukで公表されたものです。
翻訳:髙﨑文子
All rights reserved.