ヨーロッパの蝶の10%が絶滅の危機に

何百種ものチョウ、甲虫、トンボが、ヨーロッパ中で絶滅の危機に瀕しており、435種生息するチョウの3分の1近くに数の減少が見られると科学者たちは警告する。

欧州委員会に提出されたヨーロッパのレッドリストによると、ヨーロッパに生息するトンボの14%、腐木食性甲虫類の11%、チョウの9%が、集約農業、気候変動、森林火災、そして観光事業の拡大による生息地の減少によって、危機にさらされている。

「絶滅危惧種というと、人々はパンダやトラといった、もっと大きく、もっと魅力的で存在感のある動物を思い浮かべがちです。けれども地球上の小さな種も、同様に重要であることを我々は忘れてはいけません」と、当報告書を作成した国際自然保護連合(IUCN)のジェイン・スマート氏は言う。

「例えばチョウは、それが生息している生態系において、花粉を運ぶ送粉者として極めて重要な役割を果たしているのです」

暑さと乾燥は害

絶滅の危機にさらされている昆虫の多くが、南ヨーロッパに生息している。この地域では、夏の暑さと乾燥がますますひどくなり、さらに灌漑用の取水も加わって、湿地における動植物の生息環境を干上がらせている。

マデイラのオオモンシロチョウ(学名:Pieris wollastoni)は、レッドリストで「絶滅寸前」(絶滅危惧IA類)の種に分類されている。このレッドリストでは、哺乳類、爬虫類、植物を含むヨーロッパの種、6,000種の絶滅危険性の状況が報告されているのだが、このチョウは、すでに絶滅している可能性がある。マデイラ島で、過去20年間、生息が確認されていないのだ。

マケドニアのジャノメチョウ(学名:Pseudochazara cingovskii)も絶滅寸前種であるが、それは採石業によって生息地域が減少したことによる。他にも Danube clouded yellow(ドナウモンキチョウ 学名:Colias myrmidone)、violet copper(ベニシジミの一種 学名:Lycaena helle), カナリア諸島のオオモンシロチョウ(学名:Pieris cheiranthi)などが絶滅の危機に瀕している。ヨーロッパで見られるチョウには、ヨーロッパ大陸固有のものが142種ある。これらを含めた中で、個体数の増加が見られる種は4%のみである。

豊かな花の地の消失

IUCN報告書のチョウの項目を執筆した一人であり、イギリスのチャリティ団体Butterfly Conservation(チョウ類保全協会)代表のマーティン・ウォレン氏は、ヨーロッパにおける農業の増大と伝統的な農地の放置が草原生息地の減少を引き起こし、その結果、昆虫たちが打撃を受けていると言う。

The large blue (Phengaris arion)

アリオンゴマシジミ(学名:Phengaris arion) 写真提供:Butterfly Conservation/デイビッド・シム/PA

「1950年代と60年代に、イギリスでは広大な生息環境が失われました。消失の勢いは減速したものの、今でもその傾向は続いています。しかしヨーロッパ大陸では、ここ5年から10年の間に、大きな変化が起きています」とウォレン氏は言う。「50年代と60年代にイギリスは花咲き誇る牧草地の多くを失いましたが、今はヨーロッパ大陸においても牧草地が急速に消えつつあるのです」

アリオンゴマシジミは、イギリスでは1979年の絶滅の後、デヴォンとサマセットで再導入され、その結果、保全に成功した珍しいケースだ。しかしアリオンゴマシジミはヨーロッパ全体では危機に瀕しており、イギリスを除いては、このチョウのいるすべての国で減少の一途をたどっている。

他にも危機にさらされている種として、は、Duke of Burgundy(セイヨウシジミタテハ 学名:Hamearis lucina)やLulworth skipper(チャバネセセリの一種 学名:Thymelicus acteon)がある。両種ともイギリスでは昨夏史上最悪の年を経験し、ヨーロッパ大陸全体にわたって多くの国々で減少が見られる。

土地利用の好ましくない変化

いくつかの地域においては、農業の拡大によって動植物の生息環境が破壊されている。一方アルプス山脈やピレネー山脈の山岳地帯では、花々や昆虫が豊富に集まる牧草地が、荒れたまま放置されている。畜産業の採算が合わなくなっていることが原因だ。

ウォレン氏は、チョウなどの昆虫は、環境の変化の非常によい指標になるとし、これらの昆虫を救うため、伝統的な農業システムへの支援を呼び掛ける。

The flat bark beetle (Cucujus cinnaberinus), which lives under the bark of dead and live trees in central and Eastern Europe, is listed as vulnerable by the IUCN. Photograph: Nicolas Gouix and Hervé Brustel/IUCN

このFlat bark beetle(ヒラタムシの一種 学名:Cucujus cinnaberinus)は、朽木や生木の皮の下に生息する中央ヨーロッパや東ヨーロッパの昆虫。IUCNのレッドリストで絶滅危惧II類(危急)に分類されている。写真提供:ニコラ・グイとエルヴェ・ブリュステル/IUCN

森林の朽木に住む腐木食性甲虫類は、栄養分のリサイクルに重要な役割を果たす。この類の昆虫も初めてレッドリストに加えられた。

森林伐採、森林管理の方法の変化、そして成木の数の減少が、violet click beetle (カネコメツキの一種 学名:Limoniscus violaceus)などの種の存在を脅かしているのだ。調査した431種のうち、11%にあたる46種が、ヨーロッパから姿を消す恐れがあり、7%については地球規模の絶滅が危惧されている。またヨーロッパの種の13%が準絶滅危惧種に分類されている。

トンボに関しては、世界の他の地域では見られない18種を含めた、ヨーロッパの137種のトンボが調査対象となった。そのうちおよそ4分の1が、絶滅危惧種、あるいは準絶滅危惧種であると判明した。昨年イギリスでは新しく「トンボセンター」がオープンした。イギリスのトンボのうち、3分の1の種が減少の傾向にあるが、当センターはこの動きを食い止め反転させることを目指す。

この記事は ガーディアン紙のウェブサイトに最初に掲載された。(2010年3月14日 イギリス時間14:47)

翻訳:金関いな

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