予断を許さないアマゾンの運命

ブラジル議会の特別委員会は、土地利用や森林伐採の規制緩和に繋がる新たな提案書の採決を目指している。

ワールドカップで熱狂する人々がリオデジャネイロの街に繰り出す中、選挙戦がスタートした。しかし、この問題に寄せられる人々の関心は不十分だ。公正さを確保するため、提案書の採決を来年まで延期する必要性が高まっている。しかし、はびこる政治工作や政治家の利己主義に押され、今年の7月16日の本会議で改正法が承認されてしまう可能性がある。

“ブラジルは農産物や商品生産物の輸出大国だ。そして、同時に世界で最も生物多様性に富む地域を複数有する国でもある。”

ではなぜ、法改正が重要なのだろうか。ブラジルは農産物や商品生産物の輸出大国だ。そして、同時に世界で最も生物多様性に富む地域を複数有する国でもある。

ブラジルの将来は、これら2つの利益のバランスをどう取っていくかにかかっている。だからこそ、環境法はブラジルの発展にとって重要なのである。カカにとってワールドカップが大切であるのと同じように。

ブラジルの森林法

ブラジルの森林法は1965年に制定され、世界で最も進歩的な環境法の一つとして広く知られてる。同法は生物多様性が豊富な地域における土地の利用に厳格な制限を設けている。アマゾン地域に土地を所有する地主は、その土地の80%を野生の状態に維持することが義務づけられており、セラード(サバンナ地帯)の土地は35%、マタ・アトランティカ(大西洋岸森林)の場合は20%を自然のままの状態で保持しなければならない。

同法改正をめぐる複雑な問題は、賛否両論の激しい論争を招き、Ruralista(農業推進派)として知られるブラジルの有力農業ロビー団体と、現行の森林法を支持する政治家やNGOらの環境活動家との対立に発展した。

農業推進派は長年にわたって森林法改定を提唱してきた。彼らは、現行法が経済成長を妨げ、農業部門における競争力を損なっていると主張している。現在の森林法は不公平であり、自給自足の農民や先住民を「環境犯罪者」にしているというのだ。

ブラジル地理統計院(Brazilian Institute of Geography and Statistics、IBGE)の推定では、現在ブラジル国民の30%以上が貧困の状態にあり、そのかなり多くがアマゾンに居住している。約2000万の人々が暮らすアマゾン地域の生活水準向上は、国にとって緊急に取り組む必要のある課題である。

“あるデータによれば、ブラジルのアマゾン地域の4分の1で、すでに不法な伐採や破壊が行われている。”

しかし、森林法改定は実際にアマゾンの貧困層を救うのだろうか。皮肉に聞こえるかもしれないが、森林法を急いで廃止することで最も得をするのは、農業ビジネスのように思われる。また、環境資源の悪化は、貧しい人々、とりわけ自給自足の農民に多大な影響を及ぼすことを忘れてはならない。

実際のところ、森林法は施行されてから一度も満足に機能したためしがないのだ。地主たちは規制を守らず、不法な森林伐採が頻繁に行われている。あるデータによれば、ブラジルのアマゾン地域の4分の1で、すでに不法な伐採や破壊が行われている。

新しいシステムか、昔のままか?

違法行為を減らすため、今年の1月には新しい土地登記システムが導入された。ブラジル政府は写真データベースを利用して土地利用を監視しており、違反者には罰金が科せられるようになった。森林法が頻繁に無視されている中、高額の罰金はブラジルの一部の有力者たちにとって悩みの種となっている。土地の不法利用に罰金が科されると同時に、森林法の改定を急ぐ動きが持ち上がったのは、ちょっとした偶然のようにも見える。

“今は時期が悪いと懸念の声が高まっているにも関わらず、委員会は来週にも投票を断行しようとしている。”

ブラジル共産党のアルド・レベルド氏によって作成された特別委員会の最終報告書には、森林法を緩和するための11の変更が盛り込まれている。これらは、各州が独自に土地利用を規制し、地主がより多くの土地を開墾することを認めるよう働きかけると同時に、違法な森林伐採ですでに罰金を科せられている土地所有者に対する「恩赦」を与えることを提案している。

この報告書提出のタイミングに関して懸念の声が高まっているにも関わらず、委員会は来週にも投票を断行しようとしている。特別委員会の半数以上は農業推進派が占めているという。

環境活動家たちは、森林法改定によりアマゾン地域の最大80%の森林が伐採されてしまう可能性があるとして、同報告書にレッドカードを出した。グリーンピースとIpam(Instituto de Pesquisa Ambiental da Amazônia、アマゾン地域環境研究所)の推定では、このような規模の伐採が行わた場合、アマゾン地域だけで250億〜310億トンもの炭素が排出され、2020年までに炭素排出量を39%削減するという、コペンハーゲン会議におけるブラジル政府の公約も危うくなる。また、不法な森林伐採を行った者に恩赦を与えるという方針も強い批判を受けた。このような制度は、法を遵守してきた人々の不利益になるでだろう。

“環境活動家たちは、森林法改定によりアマゾン地域の最大80%の森林が伐採されてしまう可能性があると警告する。”

この1ヶ月間の激しい論争は、緑の党から大統領選に出馬するマリーナ・シルバ氏の名を世に知らしめた。シルバ氏は、極端に意見の分かれるこの法律の投票を大統領選のさなかに行うべきではない、と強い懸念を繰り返し主張している。政治家たちは、票数や選挙資金の確保を急ぐ中、賛否両論分かれる問題に対する立場を慎重に決めている。

この議論がブラジル国内で抑圧されているのは否定できない。しかし、アマゾンの運命の行方を見過ごすことはできない。アマゾンの未来は農民にも環境活動家にも同様に重要であり、ブラジルの将来にとっても重大な問題なのだ。

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この記事はguardian.co.ukに2010年7月3日土曜日に掲載されたもの。

翻訳:森泉綾美

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著者

サイアン・ハーバート氏はフリーランスの研究者であり、アルゼンチンのラテンアメリカ社会科学大学院の研究生である。

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