しくみ解明:熱く湧き上がる地熱エネルギー

今、最も注目の自然エネルギー、地熱。地球の中心部から発生するその熱は、古くはローマ時代から料理、浴用、暖房などに利用されてきた。現代では有望なクリーンエネルギーのひとつであり、今後は化石燃料の使用を更に減らしてゆく手段として、地熱の活用に大きな期待が寄せられている。

地熱資源は80カ国以上の国々で確認されており、そのうち約70カ国が地熱を直接使用している。アイスランドでは暖房に使用するエネルギーの90%を地熱でまかなっている。レイキャヴィクやアークレイリなど、ほとんどの都市に温水パイプラインがはりめぐらされ、地域全体の建物暖房だけでなく、歩道の雪を溶かす熱としても利用されている。

また、24カ国では地熱を用いて発電を行っている。うち5カ国では地熱由来の電力が10-22%を占める。発電所の増加や生産能力の向上により、地熱を利用した発電量は年率3%で伸びている。

国連大学では世界の地熱利用をさらに促進させるため、地熱トレーニングプログラム(United Nations University Geothermal Training Program。以下「UNU-GTP」。UNU-GTPはアイスランド国家エネルギー公社Orkustofnun協力のもと行われている)を開催している。

UNU-GTPは地熱探査・開発分野の専門家を育成することで途上国を支援している。30年の実績があるこのプログラムでは各国の状況に適した6カ月間の専門教育をおこなっており、地熱科学もしくは地熱工学の理学修士を取得することも可能である。

熱の利用

地熱エネルギーは風力、太陽光、水力と異なり気象条件に左右されることのない安定した供給が得られる。地熱の源は地下およそ6,000Km、地球の中心核にある。地核では、放射性元素がゆっくりと崩壊する過程で太陽の表面温度を上回る高熱が絶え間なく生み出されている。

地殻は14のプレートからなり、それぞれ異なる方向へ異なる速度で動く。プレートの境界には断層、地震、火山活動などの特徴が現れる。環太平洋火山帯沿いに見られるように、地熱地帯の分布は火山活動の起こるプレートの境界上にあるのが一般的である。

従来の地熱構造を簡略化すると図の通り表せる。地殻の割れ目を伝って地中に浸透した雨水が地中深部の熱源(マグマ溜まりなど)の近くに溜まる。溜まった水は熱せられて比重が軽くなり、地殻の割れ目を通じて地表へと上昇する。熱水となった水はその流路が交差する場所に掘られた穴から抽出され地熱資源として利用される。このような地熱開発は最も深いところで地下3,000メートルの深部で行われている。

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Courtesy of the Geothermal Education Office提供

熱はどのように利用されるのか

地熱資源は温度によって2通りに分けられる。火山活動地帯で発生する150℃以上の高温資源と、体積盆地や死火山帯で発生する150℃以下の低温資源がある。

高温資源は発電に使われ、低温資源は冷暖房、浴用、魚の養殖、温室での野菜栽培などに直接利用される。

発電には主に高温資源を利用し、水蒸気でタービンを回転させる方法が用いられる。地熱発電所には次の2種類がある。

・ドライスチームプラント:地熱で発生した水蒸気で発電機のタービンを回転させ発電する。(地熱発電機の第一号は1904年にイタリアのトスカーナで製造された)

・フラッシュスチームプラント:熱水を加圧し発生した水蒸気で発電機のタービンを回転させ発電する。蒸気の温度が下がると、余分な水分は再び地中にしみこんでゆくか、暖房等で直接利用される。ほとんどの地熱発電所がこのタイプである。

高温資源が主流ではあるものの、低温資源を発電に利用できる方法もある。バイナリープラントでは沸点の低い流体(アンモニアなど)を熱水で沸騰させ、その蒸気でタービンを回転させて発電する。

この他、地上と地中の温度差を利用するタイプの地熱エネルギーもある。地中熱ヒートポンプを地面に埋め込み地中の温度を活用するもので、実際に地熱資源がなくても成り立つため、世界的な利用の伸びが期待されている。地上の温度が日々変化する一方、地中ではほぼ一定の温度を保っている。地上に比べ土の中の温度が冬には暖かく夏にはひんやりしていることを生かし、ヒートポンプを通して冬場は地中の熱を室内に取り込み、夏場は逆に熱を地中に放出するのである。

二酸化炭素排出量の削減

地熱流体には窒素、二酸化炭素、硫化水素などのガスが不定量含まれており、地熱地帯が存在する場所によりその量は異なる。しかし、ほとんどの化学物質は地熱貯留層に回帰する水の中に凝縮され、再び地熱エネルギーになるまでのサイクルを繰り返す。

高温資源で発電した電力から排出される二酸化炭素の量は、化石燃料を用いた場合のおよそ10分の1である。低温資源を直接利用する際に至っては、さらにわずかな排出量で済む。レイキャヴィクの低温資源に含まれている二酸化炭素の量は、冷たい地下水に含まれている二酸化炭素量よりも少ない。

また、地中熱ヒートポンプを使用することでも更なる二酸化炭素排出削減の可能性がある。それだけでなく、そのポンプの作動に水力や地熱といった再生可能エネルギー資源を使えば、二酸化炭素排出量はゼロになる。

打開策を探る

大気中の二酸化炭素はこうしている間にも増加し続けている。差し迫る気候変動のリスクを少しでも緩和するためには大気中の二酸化炭素の濃度を350ppt以下に安定化させる策を講じなければならない。世界で地熱資源開発を進めることは、電力生産が環境に与える負荷を抑える対処法になる。

レイキャヴィクでは地熱が気候変動の緩和に重要な役割を果たしている。暖房に利用していた石炭や石油を地熱に置き換えることで二酸化炭素の排出量削減を実現したのだ。今では世界一空気の澄んだ都市のひとつである。

喜ばしいことに、中国(現在、地熱資源の直接利用がもっとも盛んな国)やケニアなどの途上国がアイスランドをお手本にしようとしている。

「ケニアでは電力の需要が高まり続けており、水力発電や化石燃料といった従来のエネルギー資源が逼迫しています。」そう話すのは、ケニアの地球科学者で、2009年度UNU-GTPフェローのシルビア ジョアン マリモ氏である。現在はKenya Electricity Generating Company, KenGen社で働いている。「ケニア政府は現在使用している電力資源を補うため地熱地帯の探査を進め、現状の10倍にまで地熱の設備容量を増やす予定です。」

専門家によれば、「地熱利用システム」の開発はまだ初期の段階ではあるが、さらに研究が進みシステムが向上すれば地熱の力は計り知れないものになると言われている。高温岩体やマグマに蓄えられた熱エネルギーを抽出するような新技術があれば地下の水蒸気や熱水の貯蔵を持たない土地でも地熱を利用できるようになるかもしれない。

こんなにクリーンでアツイ資源は間違いなく利用価値があると思うが、どうだろう。

翻訳:浜井華子

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著者

地質学者およびエディターとして国連大学・地熱トレーニングプログラムに勤務(常勤4名のうちの1人)。2003年にオルフス大学(デンマーク)の地質科学で修士課程を修了。アイスランド、レイキャヴィクにある火山学会の特別研究員。

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