砂漠での食料栽培が世界の食料危機を救う?

オーストラリアのアデレードから3時間の距離にあるポート・オーガスタの郊外には、わびしい砂漠地帯が続いている。その光景はオーストラリアの観光パンフレットで目にするようなものとは趣を異にする。石炭火力発電所、鉛製錬所、鉛採掘場が遠くに見える、この海岸沿いの地域には、低木がところどころに生えている。これらの木は、アルカリ性の土壌にしみこんだ塩気を含んだ水が少しでもあれば育つのだ。猛毒を持つオーストラリアブラウンスネーク、セアカゴケグモ、風変わりなカンガルーやエミュは時折姿を現すだけだが、ハエは常に飛んでいる。数頭の羊を飼っている地主は、このさえない土地を売る機会があれば、どんなに安くても飛びつく。この地で唯一の天然資源は太陽光だけなのだ。

しかし、この地域が特別な理由がある。というのは、ヨーロッパ、アジア、北米の若き頭脳集団が、この将来性のない辺鄙な場所でかなりの面積の敷地を購入して、実験的な温室を建設したのだ。その温室は、世界の食料問題の解決につながることが現実的に期待されている。この頭脳集団のリーダーは、元ゴールドマン・サックスの銀行員だった33歳のドイツ人だが、発案者は62歳のロンドンの劇場照明技師である。

実際、サンドロップ・ファームズ(彼らは自らをこのように称している)がオーストラリア南部で実行し、そしてカタールでも開始した事業は、もはや実験段階を超えている。彼らは、何もないところから何かを得るという、農業の究極の快挙を達成したらしい。それは、太陽光を用いて、海水を灌漑用に淡水化し、温室の温度を必要に応じて調整し、殺虫剤を使用せずに高品質な野菜を一年中、安価で、しかも採算が合う量で栽培することだ。

これまで、同社はトマト、トウガラシ、キュウリなどをトン単位で生産してきたが、こうして実証された技術は今後、魔法のように適用の範囲を広げて、何もないところからさらに多くの収穫物を限りなく生み出しそうである。この技術によって魚や鶏肉といったタンパク質食品を生産することも夢ではない。しかも、真水は使わず、化石燃料の使用もゼロに近い。説明するまでもないが、海水は一切費用がかからず、豊富にある。それどころか、この頃では氷冠が溶けてきたために過剰なほどだ。

サンドロップの18ヶ月にわたるプロジェクトが大きな成功を収めているのを見て、投資家やスーパーマーケットチェーンが最近、ポート・オーガスタに続々と押し寄せている。そのせいで今や、数軒しかないモーテルで部屋をとることはもちろん、地元のパブのカレーレストランで席を見つけることさえ困難だ。農業学者や主流派の政治家、それに環境活動家は先を争って、サンドロップの後ろ盾になろうとしている。そして、サンドロップの科学者、起業家、投資家は、800万ポンドをかけて20エーカーの温室を建設しようとしている。これは現在の温室の40倍の規模で、そこでは年間280万キロのトマトと120万キロのトウガラシを生産し、現在、独占契約をめぐって争っているスーパーマーケットに提供する予定である。

これは心が躍るプロジェクトで、世界で行われている他のどのようなものよりも重要と言えるかもしれない。地球上の乏しい真水を、農業は60~80%も使用している。したがって、真水をまったく使用しない食料生産はまさに奇跡である。

干ばつが続いているこの時代においてはとりわけ、砂漠で食料を生産するというアイデアはかなり奇抜であり、またサンドロップの革新的な栽培技術は、「最善のアイデアは最もシンプルなもの」という原則も無視している。コンピュータを活用したサンドロップの栽培システムは簡単な理屈で説明できるが、実際に方法を策定するのは複雑で、経済的に採算が合うかどうかはきわどいところだった。

75メートルにわたって並ぶ放射線状の電動ミラーは一日中、太陽を追いかけ、その熱でパイプを温める。パイプの中には油が密閉されており、温められた油は次に近くの海水タンクを温める。その海水は地下数メートルからくみ上げられたもので、海岸までは100メートルしか離れていない。

油は海水を160度まで熱し、ここからの蒸気がタービンを回転させ、電力を供給する。このプロセスから生じた温水の一部は、砂漠の寒い夜に温室を温めるのに用いられ、残りは淡水化プラントで使用される。淡水化プラントでは1日に1万トンの淡水が生産され、施設全体の必要量を十分にまかなっている。生産者が得る水は不純物を含まず、栄養成分を添加するのに適した状態になっている。温室の中では温度の上昇が抑えられ、湿度は適切に保たれている。これは蜂の巣構造になっている段ボール製の蒸発パッドの壁に水を含ませ、その壁越しに風とファンで空気を送り込んでいるからだ。システムは何から何までハイテクで、温室は人里離れたところにあるが、きわめて熱心に生産を担当している27歳のカナダ人、デイブ・プラット氏は、数トンもの作物を生産する温室の栽培条件をiPhoneのアプリで楽々と管理している。町に出ている時やオンタリオの自宅にいる時も問題ない。

例えるなら、聡明な未来学者が21世紀に向けて予想していたことが現実になったような感じだ。実際、砂漠からサンドロップの温室に足を踏み入れると、太陽光を集めるパラボラ鏡が映画のセットのように並ぶ通路を通りながら、典型的な未来世界に入り込んだ気になる。温かく、湿気のある空気は熟れたトマトの香りを帯び、室外の過酷な光景とは対照的だ。外の空気は年中、大抵はからからに乾燥して、気温は40度にもなる。あまりにも差が大きいので、自然と経済が見せる残酷な一面はまるで嘘だったかのようにさえ感じる。だが、数十億人もの人に健康的で安価な食料を提供し、地球を救うのに貢献し、財を成すことなどできるだろうか?どこかに落とし穴があるに違いない。

しかし、落とし穴があると感じている重要人物は一人だけのようだ。そして、やや奇妙なことに、その人物こそがこの技術の考案者、前述した英国の照明技術者、チャーリー・パトン氏その人である。彼は現在、彼自身の実験温室の中か、ロンドン東部、ロンドン・フィールズの端の方にあるハックニーで、元パン屋だった3階建ての建物の上にいる。彼は、1万メートルの彼方、フリンダース山脈とスペンサー湾の間の砂漠に起きていることを誇りに思っているが、少なからず居心地の悪さも感じている。

環境問題に熱心な人であれば、パトンという名前にピンとくるかもしれない。彼は、環境保護の世界の紛れもないアイコン、シーウォーター・グリーンハウスの創設者として数々の名誉に輝いている。同社は設立21年になる家族経営の企業であり、太陽光と海水だけを用いて作物を栽培するというアイデアの生みの親は、この会社である。今月初め、パトン氏は英国王立芸術協会から名誉あるロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー(Royal Designer for Industry)の称号を与えられた。また、さらに数ヶ月前、シーウォーター・グリーンハウスは、気候変動問題に貢献した人に贈られる英国最大の賞、クライメット・ウィーク(Climate Week)の最優秀製品部門で1位を獲得した。サンドロップ・ファームズが世界展開をすれば、魅力あふれる理想主義者のチャーリー・パトン氏はナイトの称号、さらにはノーベル賞すら授与されるかもしれない。安価で安全な食料を砂漠で無限に生産するという彼の発明の価値はそれほどまで大きいのだ。

しかし、こういったことの中でも1つだけ問題がある。パトン氏と家族はオーストラリア南部に自らの手で温室を建てたが、サンドロップはきわめてシンプルなパトン氏の技術の細部をことごとく打ち捨ててしまった。「あまりにもヒース・ロビンソン(英国の挿絵画家で、ナンセンスな機械を描いた漫画で有名)的」で、採算がまったく合わないという言い分だった。パトン氏が手作りした木製枠のソーラーパネルの一部はまだつながれていて、ファンを回すのに用いられているが、すでにガタがきている。施設のその他の部分はほぼすべてハイテク製品に置き替えられているが、その精神の父であるパトン氏はそれを軽蔑している。彼は、サンドロップが16万ポンドをかけて取り入れた、きらきらのドイツ製ミラーや、がたがたと音を立て続けるスイス製の脱塩プラントと熱交換タンクを「投資家の気をひくためのお飾り」だと切り捨てる。サンドロップとシーウォーターは共同で事業を行うのをやめた。パトン氏は、サンドロップは「商業的に成功したいという欲に溺れて持続可能性を放棄した」と非難している。彼が特に苛立ちを覚えるのは、曇りの日が数日続いても作物を問題なく維持するための予備ガスボイラーの設置だ。

チャーリー・パトン氏については後でもう一度触れることにしよう。ただ、おそらく、残念ながら、オーストラリア南部におけるめざましい成果に比べれば、発案者の疑念や労苦は影が薄いものになってしまうだろう。おおいなる進展があったのは間違いない。オーストラリア政府からの資金援助を受けて淡水化研究所を率いるニール・パーマー氏は、「彼らは勇気と冒険心を持って、自分たちにできると信じていることをやり遂げたのです」と述べている。

「彼らはリスクを冒さずに食料を生産し、洪水、霜、雨だけでなく、水不足による問題まで解消し、今や水不足は問題ではなくなりました。それに加えて、低コストで増設が可能で、無限に拡張できます。ここでは太陽の光と海水が不足することはありません。実に素晴らしいことです」

サンドロップでプロジェクトマネジャーを務めるオランダ出身の水処理技術者、レイニアー・ヴォルタービーク氏は、「空に限界がないように、私たちに限界はありません」と語っている。「第一に、私たちは全員若くて、大きな志を持っています。それが新しいチームメンバーを選ぶときの基準です。私たちは、現実的に困難に立ち向かう姿勢を持つ園芸家、経済学者、スーパーマーケットのバイヤーに、私たちが役に立てること、そしてそれが商業的にも意味があることを示してきました。今では、外部から隔離され、管理が行き届いた温室環境で、タンパク質食品を生産できる可能性もあります。これで世界に確実に食料が供給できるのです」

サンドロップのシステムには想定外のおまけもあった。何かというと、そこでは野菜が年中収穫でき、しかも、スーパーマーケットが望むように傷がなく、見た目も良いのだが、それだけでなく、実質的に有機栽培なのである。土で栽培されるのではなく、「水耕栽培」なので、(少なくともオーストラリアでは)有機栽培とは言えないが、殺虫剤はまったく使用せず、純粋な栄養成分だけが与えられている。殺虫剤不使用という点は、オーストラリアのスーパーマーケットにとってはセールスポイントになる。すでにポート・オーガスタの青果店では、倫理的にも環境的にも優れた高級品として販売されている。

サンドロップの温室を設置する砂漠が不足することはない。したがって、サンドロップの温室は周辺に何もないところに建てることができ、害虫の被害も受けにくい。こっそり入り込んでも自然に排除される。この閉じられたミクロ世界では、デイブ・プラット氏と信頼できるiPhoneアプリは神のように振る舞うことができる。デイブは温室内で果たすべき役割を持っているハチの行動を把握しているだけでなく(ハチもまた、デイブが管理する完璧な環境で、捕食者もなく、快適な生活を楽しんでいる)、ハナカメムシと呼ばれる「益虫」の一群をも操っている。これらの益虫は作物に被害を与えるアザミウマなどの害虫を殺す。しかも、自然には風変わりなことがあるもので、それは捕食のためではなく、言ってみれば娯楽のためなのである。つまり、アザミウマに同情を感じない限り、あるいは食料は神自身の土地で栽培し、神自身の疫病にさらされなければならないと信じているのでない限り、サンドロップで生産される食料は純粋かつ倫理に叶う。よほど神経質な環境保護論者以外は満足するだろう。

一方、サンドロップの創設者でもあるCEOは、一見したところでは、典型的な環境保護活動家というわけではない。実際、倫理にかなった有機栽培をちょっと齧っただけで知識人ぶる人たちはたくさんいるが、経歴を見る限り、フィリップ・ザウムウィーバー氏はコメディなら必ず嫌われ者に仕立て上げられるタイプだ。彼は裕福で、ゴードンストウンで教育を受けたドイツ人で、ハーバードでMBAを取得し、完璧なマナーを身につけており、米語のアクセントがあり、ドイツ人らしく合理主義で、ゴールドマン・サックスとヘッジファンド業界を経て、ミュンヘンを拠点に家族が経営する農業投資会社に移ったというキャリアの持ち主だ。しかし、それを紋切型に受け取るのは誤りだ。実際のザウムウィーバーは人柄も良く、話し方も柔らかく、明快なビジョンを持っているうえ、素晴らしいけれども欠陥も多いアイデアを実現し、英国の魅力あふれるアムストラッド(イギリスで一時代を築いたエレクトロニクス企業)的な技術を、園芸界のアップルに匹敵するまでに発展させたのだ。

彼は、ビジネスとして農業に携わるようになって間もなく、農業は本質的に「ディーゼルを食料に変え、水をつぎ込むこと」を伴うことに気づいたと語る。彼は、無謀な環境活動家であろうと、膨大な数字を相手にする人であろうと、これではいけないと思ったという。彼は次のように述べた。「そこで塩水農業に興味を持ったのです。真水が甚だしく不足している一方で、海水は溺れるほどあります。私は長い時間、図書館にこもって調査を続けました。そこで、チャーリー・パトンの名前に繰り返し出くわしたのです。そこが始まりでした。彼は1991年からこの技術に取り組んでいて、頭もいいのです。彼のアプローチは自家製で、パイロットプロジェクトはいずれもうまくいっておらず、実際にはがらくた化していましたが、それでも彼は無視できないほど有望な何かを持っていたのです」

2月、サンドロップとシーウォーターが袂を分かつことになった時、公開されていないものの、パトン氏には莫大な和解金が支払われた。その金額にはきわめて満足しているとパトン氏は言うが、かつてのビジネスパートナーに敬意を払っているザウムウィーバー氏は、経営に参加していてほしかったと言う。というのは、この究極的に持続可能な技術については、パトン氏はこれまでに会った誰よりも宣伝と売上につながるからだ。

ザウムウィーバー氏は次のように回想する。「私たちがチャーリーのアイデアで気に入っているところは、シーウォーター・グリーンハウスの評価のために呼び入れたエンジニアも同じ気持ちでしたが、水の問題に2つの側面から取り組んでいる点です。彼の考案した温室は、まずは優雅なやり方で水を作ります。そして、海水を使って温室を冷却するシステムにそれを結びつけています」

「私たちが当初気づかなかったことは、おそらくチャーリーも完全には詰めていなかったのですが、乾燥した地域でも寒くて、温室をあたためなければならない日があることです。そこでガスボイラーを導入しました。これは寒い日や曇っている日に補助的に使います。ところが、これでチャーリーは激怒しました。化石燃料を使ってしまうからです。チャーリーは暖房や冷却をしなくても何でも育てられると考えていましたが、そうすると傷がついたり、形がいびつになったりしてしまうので、スーパーマーケットでははじかれてしまいます。彼らの基準に合わなければ、代金は入ってきません。そうでなければ理想的ですが、人間の行動を変えるという難題に取り組むわけにはいかないのです」

「最後には、ビジネスの方向性について、私たちの意見は大きく食い違いました。チャーリーは完璧な土台を得て、これからも試行錯誤や実験を続けたかったのですが、私たちはとにかく生産に入りたかったのです。彼はとても良い人で、環境に関する彼の見解には共有できるところがたくさんあります。それでも、一緒にいるのは無理だったのです」

ロンドンのハックニーにあるパトン氏の感じの良い自宅を訪れると、遠い砂漠におけるガスボイラーの一件だけがサンドロップから離れた理由ではないことがよくわかる。生き方にまつわる深刻な衝突もあったのだ。ザウムウィーバー氏は教育を受けた銀行員で、ロンドン西部の裕福な地域に住んでいる。一方、パトン氏は芸術家肌で、サセックスの森林開拓地で、電気も通っていない木造の家で過ごすこともある。

チャーリーは基本的には素朴で、機械いじりが大好きな人で、科学者というよりは非常に博識な人物だ。また、プライドが高く、自らの発明の価値が、それを次の段階に推し進めるために野心的な若者によって損なわれたこと(彼の目にはそのように映っている)について話し出すと、深いブルーの目は怒りに燃える。

違いは主に理念によるものだった。理想主義と実践主義の決裂であり、労働党と新しい労働党が分かれるのとはわけがちがう。パトン一家は、チャーリー、宝石職人で美術学校の教師でもある妻のマリーン・マッキベン、設計技術者で25歳の息子のアダム、大学院で美術の勉強をしている26歳の娘のアリスの4人家族だが、非常に結束が強く、規律を大切にする家族で、ほとんど毎日、一緒に昼食をとる。食卓に並ぶのは、サウスフォーク・ランチのユーイング一家の手作り全粒パンとパレスチナ産有機オリーブオイルといったところだ。

彼らが今も積極的に進めようとしているシーウォーター・グリーンハウスの方法は、淡水化プラントも、太陽を追って光り輝くパラボラ鏡も使わず、電気を使うものはほとんどない。シーウォーター・グリーンハウスのビジョンは、ローテクかつ安価で始められるもので、自然の風あるいはソーラーパネルの力で動くファンから送られる風で起こる、穏やかな海水の蒸発と凝結の相互作用に頼っている。このモデルがうまく機能せず、何らかの故障で生産に支障が出た時は、見た目は悪くても、まったく問題はないものを食べてもらうように人々を説得するしかない。あるいは収穫が少なくても、持続可能性の基本原則にこだわる姿勢を貫くしかない。

コンセプトは魅力的で、哲学は環境問題に敏感な消費者の気持ちをつかむものだが、シーウォーター・グリーンハウスの設備は洗練されているとは言えない。カナダでトマトを生産していたデイブ・プラット氏は、チームに参加したばかりの時、アダムとアリスが骨を折って組み立てた設備を見るなり、引き返しそうになった。プラット氏は次のように語る。「まるで『じゃじゃ馬億万長者』(一夜にして大金持ちになった一家がビバリーヒルズに引っ越したことから巻き起こる騒動を描いたコメディ映画。原題『ビバリーヒルビリーズ』)3の映画のセットのようでした。1万5千本ものプラスティック製パイプを手作りして、熱交換に使おうとしていたのです。しかし、海水を植物にぽたぽたと垂らしているだけで、もうめちゃくちゃでした」

パトン氏の物の見方はもちろん違う。「フィリップとは意見が合いませんでした。私たちの事業はジョイント・ベンチャーでしたが、多くの点で食い違いがありました。彼は慎重な投資家としてコンサルタントと園芸家を呼び入れました。そして一人が、ガスボイラーを入れなければ、損失が出て生産物が減ると言ったのです。何らかの暖房が必要であることについては納得しましたが、ソーラーパネルでできたはずです。それ自体はたいしたことではなかったかもしれませんが、一事が万事、そういう感じだったのです。フィリップは経営に長けていて、黒字を出すために、あらゆることを急ぎました。利益が出ることは大事ですが、貪欲すぎて、賛同できないところがありました。それでも、彼にはうまくやってほしいと思っていますし、大成功を収めているなら、素晴らしいことです」

では、パトン一家はこれからどうするのだろうか?「そうですね、和解金は十分にもらったので、しばらくはのんびりできるでしょう。カーボベルデ(大西洋中央部に浮かぶ島々から成る共和国)で新しいプロジェクトを始めるのを楽しみにしています。カーボベルデでは食料を生産していないので、興味があるようです。また、ソマリランド(現在は国として認められていないソマリアの一部)でプロジェクトを立ち上げる話もしていますが、宿泊するホテルもないので難しそうです」

チャーリー・パトン氏は、不可能な状況下で限りなく食料を生産するというアイデアの創始者として知られているが、英国伝統の「天才的な趣味人」の仲間入りをすることがほぼ決まっていそうだ。こういう人たちは庭の納屋や作業場から世界を変えるが、商業主義ではなく、むしろ仕事にすることを避けたがるので、最後の一歩が及ばず、大金を手にする機会を逸する傾向がある。

パトン氏は言う。「私たちは断固として私たちのやり方を貫きます。独占することは、それほど考えていません。実際、技術の中心は水に浸した段ボールです。蒸発で冷却するアイデアの特許は取れず、保護することもできません。そのために海水を使うアイデアは革新的でしたが、これでも特許は取れません。重要なことは、今でも拍手喝采を浴びるのは私たちだということです。そして、フィリップにとって最も腹立たしいのはその点ではないかと思います」

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この記事は2012年11月24日にguardian.co.ukで発表されたものです。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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著者

ジョナサン・マルゴリス氏はフィナンシャル・タイムズ、ガーディアン、サンデー・タイムズ(英国)のジャーナリストであり、タイムやその他のオンラインマガジンにも寄稿している。

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