地元の食材を給食に

来年6月の国連持続可能な開発会議(リオ+20)が近づくにつれ、いかに効果的なグリーン・エコノミーを築くかという議論が熱を帯びてきている。だが国連社会開発研究所で最近開かれた会議 において強調されたようにグリーン・エコノミーとは単なる経済と環境の問題ではない。グリーン・エコノミーを構築するには人々と食料や農業との関係を含む経済的、社会的プロセスをより深く再構築することが必要なのである。

1990年代後半、牛海綿状脳症、鳥インフルエンザ、遺伝子組み換え食物、現代の食習慣による健康問題(肥満など)をきっかけに、食の安全に関する議論が起こり先進国、途上国の両方で健全な地元の食材に対する関心が高まった。

“学校給食の安全と質については特に注目が集まっている。主たる消費者(児童)は自分たちが食べる食の質を評価することができないからだ。”

イギリスで今年発表された研究では、学校給食改善の動き(有名シェフ、ジェイミー・オリバー が中心に活動)には健康効果があるだけではなく、テストの点数が上がったり、常習的な欠席の減少にも役立っていることが示されている。

さらに国際食糧政策研究所による最近の教育における食料の研究では、質の良い食材を適切な量確保することが全ての人に教育を施す上で不可欠であることが示されている。これは多くの途上国において、学校給食が、(全てとは言わないまでも)主な食料源であるという児童の数が非常に多いためである。質の良い学校給食は出席率を上げ、教育的効果を高める。

地産食材と地域化

Home-grown School Feeding Programme(地産食材による学校給食)は、国連の世界食糧計画(WFP)が行う国際イニシアティブで、公的機関による食料調達と持続可能な農業を結び付けてグリーン・エコノミーを促進する独自の制度的実験でもある。

WFPが「地産食材」の促進に焦点を絞っている点は画期的といえる。これは給食や教育の質に対する人々の関心と、持続可能な農業開発を結び付けようと意図したものだからだ。特にこのプログラムは食料生産、輸送、消費の「地域化」の促進を目指しており、また消費者(父兄と教師など)と農家が地元の農産物を学校給食に使用するよう当局と交渉を進められるよう発言力を高めることも目的としている。環境の持続可能性という観点から見ても、食のエコロジカル・フットプリントを減らすため、地域化は推進されるべきだろう。

“例えば日本では、食の地域化は「地産地消」と呼ばれ、学校給食プログラムで推進されてきた。”

日本の小学校における地元野菜についての学習

例えば日本では、食の地域化は「地産地消」と呼ばれ、学校給食プログラムで推進されてきた。このシステムにより、学校と地元の農業・漁業とが結び付きを強め、児童が地元の文化、食産業、環境に対する愛着を深めることを目指している。

ブラジルのモデル

ブラジルは地産食材を使った学校給食を制度化したという点で模範的な国とされている。ここでは公共・民間機関の役割を見直し、消費者、農家、様々なレベルの公共団体などが、給食の質を高めるための独自の努力目標を設定することに成功している。

当初ブラジルの給食プログラムは中央集権的なものだった。1950年代以降、中央政府が学校用の食料(ほとんどが保存のきくシリアルや粉末ミルク)を調達し、首都にある倉庫に保管、そこから内陸地域へと配送していた。だが、不適切な交通事情と保管設備が原因で、保存がきくはずの食品や加工食品までもが児童の元に届けられるまでに悪くなってしまうという有様だった。

1997年に地方分権化により、学校給食の予算が中央政府から地方政府へと移されると、各地域において公立学校の食料がを調達されるするようになった。そして2006年、土地なし農民や小規模家族経営農家の運動を支援してきた労働党のルーラ・ダ・シルヴァ大統領 の下、食料保全と栄養プログラムにより良質の食料を十分確保することは政府が守るべき人権であるとの考えが広まった。この考えはすぐに「食の主権」という概念と結び付き、地元の食文化と家族経営農家への理解と感謝につながった。

そして2009年には学校給食を完全に「地産」の食材のみとする新たな法が施行された。これによりブラジル全ての自治体は割り当てられた予算の30%を家族経営農家から直接食材を仕入れることを義務付けられた。それ以降ブラジルに約5500ある自治体の半分以上が自治体・国の教育長官、町会議員、地元PTA代表者で構成される独自の学校給食委員会を設立した。

これらの学校給食委員会は地元の食料の仕入れと、児童と父兄の声を反映した給食のメニュー作りにおいて中心的な役割を背負っている。ブラジル南部と南東部の比較的発展した自治体では、地元で採れた新鮮な野菜と果物を給食に取り入れるための様々なルートが設立された。

例えば2008年、サンパウロ州にあるカンピナス市では、学校給食委員会と自治体公設の中央卸売市場が提携し、500校、164000人の児童に新鮮な野菜、果物、牛乳を地元の農家から仕入れ、提供し始めた。現在、公設市場では10人の栄養士が働き、学校ごとの給食のメニュー作りの援助を行っている。

ブラジルでは毎年、中央政府が支援するプログラムである、ゼロ・ハンガー・アクション(Ação Fome Zero)が、優れた学校給食を実践している自治体を表彰している。毎年30以上の自治体が候補となるため、給食の質を高めるためのインセンティブとなっている。今年は東北地方パライバ州キシャーバ市(ブラジルで最貧の地域の1つ)が、家族経営の小規模農家から地産食材を調達し始めたことが認められて最終選考に残った。

この地方の多くの小規模農家は、農地改革により土地を取得したばかりで、の農家は、生産物を効率よく商品化するためのインフラを持たないことが多く、学校給食プログラムとの連携は農家の生計向上につながり、地域の貧困を改善する道をひらく。

以上の例に見られるような、自治体主体のブラジルの国家給食プログラムは、生産者、消費者を含む地域住民や様々な地域の機関と市政機関の状況に合わせた食料調達を可能にしたことにより、柔軟な国家統治の形がとられることに貢献している。

今日、ブラジルの中央政府は首都ブラジリア発の「どこでも通用する」政策によるトップダウン型の支配を行うわけではなく、地域の給食委員会の財務業務の透明性と国家ガイドラインの遵守を監視する役に徹している。一方で、地域の委員会は中央政府に対し、基本的なインフラ整備と家族経営の小規模農業生産者と配給業者向けの支援体制整備を要求し、常に良質の食料を提供するように努めている。

グリーン・エコノミーが社会的平等に基づいたものにするための最初のステップとして、ブラジルその他で形になりつつある1つの考えを肝に銘ずるべきだろう。私たちは誰もが良質な食料を保証する公平で透明な統治を主体的に要求する権利があるということだ。

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地元の食材を給食に by 大築 圭 is licensed under a Creative Commons Attribution-NoDerivs 3.0 Unported License.

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著者

大築 圭(おおつき けい)氏は東京の国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)・国際協力と開発領域のリサーチアソシエイトである。
大築氏の論文「Sustainable partnerships for a green economy: A case study of public procurement for home-grown school feeding (グリーン・エコノミーのための持続可能なパートナーシップ:地産食材による学校給食のための公的調達のケーススタディ)」がNatural Resources Forum (Vol. 35: 213-222, 2011年8月)に掲載された。またそれに関連する小論文「Emerging Governance in the Transition to a Green Economy: A Case Study of Public Sector Food Procurement in Brazil(グリーン・エコノミーへの転換に向けた新たな統治:ブラジルにおける公的食料調達に関するケーススタディ)」が、国連社会開発研究所のGreen Economy Think Pieceシリーズに掲載された。
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  • papiann

    地産地消が日本でもますます広がりを見せるといいですね!