しくみ解明:太陽発電

多くの古代文明が太陽を崇敬し、今日の人類も太陽の力に畏怖の念を抱く。私たちは誰でも子供の頃、太陽を直視してはいけないことを覚えたが、多くの大人は太陽エネルギーがどのように作られるのか完全には理解していない。この再生可能エネルギー産業が成長しつつあり、気候変動の緩和戦略において重要な役割を担う今、本論では太陽光発電というトピックに光を当てる。

太陽光発電(photovoltaic)に含まれる “photo”と“voltaic”という言葉は、それぞれ「光(light)」「流れ(current)」という意味だ。日光は「光子」と呼ばれる小さなエネルギーから構成され、ソーラーパネルの太陽(PV)電池は半導体で作られている。光子が一般的な太陽電池に届くと、日光のエネルギーが半導体によって吸収され、その過程で電子が放出される。この電子の流れが電流を作り出す。

この方法で引き出すことが可能なエネルギーの量は驚異的だ。およそ12万テラワット(TW、すなわち1兆ワット)の日光が地球の表面に届くのだが、米国エネルギー情報局によれば、2008年の世界の年間電力需要量は1万7500テラワット時(TWh)なのだ。

こうした数字をざっと解釈した場合、世界全体が1年間に必要とする電力量よりもずっと大量のエネルギーが1年間に地球の表面に届いているとの結論に傾きやすい。しかし利用可能な太陽エネルギーのすべてが発電のために収集できるわけではない。とはいえ、相当量のエネルギーが世界全体で利用されないままになっていることは確かだ。

“私たちの電力需要のうち6分の1、あるいは5分の1までもソーラーパネルで発電することが技術的には可能であり、私たちは早急にその可能性を活用する必要がある。”

ある地点で利用可能な日光(日射)の量は、1枚のPVパネル上の一定の面積から1日に得られるエネルギー(例えば、キロワット時/平方メートル/日)という単位で計測されるのが一般的だ。オーストラリアは世界の他の国々と比べると、年間を通じて非常に高いレベルの太陽エネルギーが利用可能である。

オーストラリア西部および中央部の一部地域で利用可能な日射量は、最高で6キロワット時/平方メートル/日に達する。一般的に、アメリカ西部(南カリフォルニアやアリゾナ)やスペイン南部(バレンシア)でも大量の太陽エネルギーが利用可能だ。(アメリカ国立再生可能エネルギー研究所のPV-WATTと呼ばれるシステムを使うと、世界各国で利用可能な日射量を基に、太陽エネルギーによる発電量や経済的利益を計算できる)

現在、様々なタイプの太陽光発電の技術が存在する。おおまかに分類すると、結晶系、アモルファス系、有機系、ナノ・タイプが現在製造されている主要な技術である。ソーラーパネルの効率性は、パネルが日光を電気に変換できる比率で表わされ、採用された技術の種類によって一般的に7~30パーセントの間で異なる。効率性が10パーセントであれば、そのパネルは吸収した日光の10分の1を直流電流に変換できるという意味だ。従来の家電製品は交流電流を使うため、直流電流を交流電流に変換するためにインバーターが必要となる。インバーターはPVパネルと一緒に追加装置として購入できる。

PVパネルの典型的な耐用年数は20年から25年の間である。私たちの電力需要のうち6分の1、あるいは5分の1までもソーラーパネルで発電することが技術的には可能であり、私たちは早急にその可能性を活用する必要がある。

課題

再生可能エネルギーを利用して国全体の電力を供給するのは非常に困難だ。その点、アイスランドは例外で、国の電力のうち70パーセントを水力で、残りを地熱エネルギーでまかなっている。(水力地熱潮力など、その他の再生可能資源の基礎的な活用についてはOur World 2.0の過去の記事で考察されている)

実際のところ、全電力網を太陽エネルギーで供給するのはさらに困難である。なぜなら無制限の太陽光発電を行うには経済的および技術的な制約があるからだ。まずPVパネルは高額だ。そして現在、住居用の太陽光電力の価格は1キロワット時あたり約31セントで、グリッド電力(大規模発電所から送られる従来の電力 )の平均的な小売価格の2倍以上だ。

太陽光発電が高額である理由の1つは、それがまだ開発途上の技術だからであり、今後より多くの設備が整い始めれば費用は下がると予測されている。太陽光発電の累積的な出力(学習効果)と規模の経済による効果(生産量の増大につれて平均費用が減少する結果、利益率が高まる傾向 )の両方が増進すれば、開発途上の技術を使った発電費用は減少する。

太陽光発電の費用は、1970年代には100米ドル/Wp(ワットピークあたりの価格 )だったのに対し、2005年末には3.5ドル/Wpにまで下がった。国際太陽エネルギー学会 によれば、2015年末までに達成すべき目標値は0.5ドル/Wpだという。

このような費用の著しい減少にもかかわらず、太陽光発電はいまだにグリッド電力に対して経済的に競争力が高いとは言えない。戻し減税や助成金を導入し、時間を掛ければ、グリッド電力と太陽光発電の費用の差を埋めることができるだろう。

さらに、太陽光発電では日射量が日々の電力出力量を左右する。典型的な電力網へ電力を供給する発電所は、ベース運用、ミドル運用、ピーク運用に分類される。ベース運用の発電所はほぼ1年を通して稼働する必要があり、石炭や原子力を利用する発電所は通常ベース運用されており、長期にわたり低コストで発電することができる。太陽光発電は性質上、断続的であるため、大量に蓄電できる設備がない場合(そして蓄電設備は高額である)太陽光をベース運用で用いるのは技術的に非常に難しい。

しかしマージン(1日のうち需要が高くなる時間帯)での電力需要を満たすために、太陽光発電をベース運用ではなくピーク運用で(そして大規模な発電施設ではミドル運用で)利用することは科学的に妥当である。

炭素と汚染の減少

メインテナンスを除けば、太陽光発電は20年間、炭素を排出せずに稼働できる。太陽光パネルの製造過程では汚染物質が排出されるが、今までのところ非常に効果的に管理されている。毒性のガス(例えばシラン)が太陽光発電設備の製造過程に関係しており、太陽電池そのものは有害な金属(例えばヒ素、カドミウム、セレニウム)を使って生産される。しかし今のところ、太陽光発電設備の製造段階で用いられる有害な資材は非常に効果的に管理されており、概して半導体産業が呈するリスク以上の危険性はない。

多くの有名な研究では、太陽電池に使用される金属の量はPVパネルの耐用期間が終了する時点で環境への危険性はないと報告されている。重金属であるカドミウム・テルライド(カドミウム・テルライド製の太陽光パネルに含まれる)に懸念が示された。そこで、カドミウムが住居での不慮の火事で大気中に放出されたり、パネルを廃棄した埋め立て地から侵出し河川に流れ出たりする危険性について研究が行われた。

カドミウムは二重ガラス構造で内包されているため、不慮の火事が起こった際に大気中に放出されることはまず考えにくい。また、この技術はアメリカ環境保護局 が「毒物侵出処置法」 と呼ぶ検査に合格している。廃棄された金属が埋め立て地から地下水面へ侵出する危険性を調べる検査だ。国立再生可能エネルギー研究所も、埋め立て地に廃棄された際の毒物の侵出リスクは非常に低いと結論づけた。

また、石炭や石油を用いる発電所が電力を生産する際に排出するカドミウムの量は、カドミウム・テルライドを使った太陽光発電技術より12倍から150倍多いという点も非常に重要だ。

“したがって究極の問題とは、現在の世代には、未来の世代に有益となる気候変動の戦略への投資を推し進める覚悟があるかどうかだ。”

電力生産時に排出される二酸化炭素(CO2)を従来の電源と太陽光で比較すると、太陽光発電の方が汚染物質の減少というメリットをもたらすことは間違いない。例えばビクトリア州(オーストラリア)では、1キロワット時の電力を生産するのに平均1.3キログラムのCO2が排出されるが、複数の研究報告によると、太陽光発電の場合は1キロワット時あたり15~60グラムのCO2が排出されるという。

同様に、太陽光発電はグリッド電力に比べて汚染物質(硫黄酸化物や窒素酸化物)の局地的な排出量が著しく少ない。したがって、太陽光発電の電力網への統合をさらに進めて、従来の電源から生産されるグリッド電力を減らすことができるなら、汚染物質を減少させることが可能だ。

しかし多くの国で現在採用されている電力に関連する税制には、炭素や汚染物質というネガティブな外部効果のコストが含まれていない。太陽光発電のグリーンな性質(例えば低炭素)に何の価値も置かれていないため、化石燃料と再生可能エネルギーが戦う土俵は公平ではない。電気の本当のコストには、送電のコストや、大気への炭素排出という外部不経済も含まれる。例えば、以前の報告によれば、石炭による電力の本当のコストは1キロワット時あたり約58セント(アメリカの条件に基づく)で、太陽光発電のコストよりも実は高いのだ。さらに状況を悪化させることには、一部の国は石炭の発電施設自体に重点的に助成金を給付しており、それが化石燃料産業と再生可能エネルギー産業の間の経済的格差をさらに広げている。

私たちの生活への影響

太陽光発電は私たちの世代だけでなく未来の世代にもよりクリーンなエネルギーを供給し、間違いなくライフスタイルを変える。しかし気候変動のように、世代を超えた全世界的な問題への解決法を見いだすことは、代償を伴うために本質的に複雑である。つまり、電力にもっとお金を支払うようになれば、必然的にその他の支出に使えるお金が少なくなる。それと同時に、スマートグリッドを活用したり、自宅にスマートメーターを設置したりする行動は、ライフスタイルの選択にポジティブな変化をもたらす。よりクリーンなエネルギー源を利用すれば、環境や人間の健康への悪影響は少なくなり、全般的な環境への意識が高まるだろう。

太陽光発電やその他の再生可能エネルギー技術への投資は、気候変動という問題に長期的に対処するための最も重要な解決法の1つだ。今日の政治家と政策立案者と市民は、よりクリーンな電力生産の利点を未来に残すなら今しかないという事実と折り合いをつけなければならないのだ。

したがって究極の問題とは、現在の世代には、未来の世代に有益となる気候変動の戦略への投資を推し進める覚悟があるかどうかだ。この問題に今すぐ投資すればするほど、長期的に見れば、太陽光発電のような環境に優しい解決法を実施するのが容易になるのだ。

ある先住民族のことわざを引用しよう。「私たちは先祖から地球を受け継いだのではない。子供たちから借りているのだ」

翻訳:髙﨑文子

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しくみ解明:太陽発電 by バート・ ダーリンガー and ディーパック シヴァラマン is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

バート・ダーリンガー氏は最近ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)Centre for Designでライフサイクル評価の研究員になった。彼は機械工学で学士号を、持続可能なエネルギーのテクノロジーで修士号を修得した。卒業論文のテーマはライフサイクル評価における排出量の地理的配置。彼は複雑な技術システムの行動および環境との相互作用に関心を持つ。例えば持続可能なエネルギーシステムや、ライフサイクル評価全般に関するより方法論的な問題などだ。彼は様々な産業の依頼を受けて、プラスチックの製造とリサイクル、木製品に関するプロジェクトを行っている。

ディーパック・シヴァラマン氏はロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)Centre for Designの研究者である。同センターのライフサイクル評価チームの一員であり、再生可能エネルギーシステム、エネルギーと建築、電力市場に関する研究に携わっている。彼は2004年フロリダ大学より環境工学の修士号を修得し、2009年ミシガン大学より応用経済学の修士号と再生可能エネルギーおよび政策の博士号を修得した。学際的な研究に大きな関心があり、エネルギーと電気、経済学、工学、環境科学といった分野の境界で研究を行う。

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