送電網よりコミュニティに活路

過去最悪の事態となった停電により、集中管理型の石炭火力発電は、インドが電力について抱える悩みを解決するどころか、問題を引き起こすばかりだとの認識が新たになった。そして、そのわずか数日後、新たな時代の起業家たちは、まさに革新的な電力供給の方法を目指して第一歩を踏み出した。その到来を告げる画期的な契約は、今回の停電や、石炭業界の泥沼の悪循環を伝えるニュースの陰に隠れてしまい、大きな話題にはならなかった。しかし、OMCパワーバーティー・インフラテル(インド最大の携帯電話事業者)の間で結ばれた契約は、再生可能なクリーンエネルギーを送電網外の携帯電話基地局に提供するというもので、実に画期的だった。これは少しでも早い実現が望まれているコミュニティ・パワー(地域の人たちの主導による自然エネルギーの取り組み)の幕開けを告げるものだ。

GSMAにおける私の同僚が多くの素晴らしいレポートで示しているように、中央からの送電網が届かない場所に電力を提供することにおいて、コミュニティ・パワーの威力はとにかく絶大だ。しかし、それはどういうものだろうか?OMCのビデオを見ていただいてから説明しよう。

マイクロパワーの夜明け

電気のある暮らし

携帯電話は従来のインフラを一気に飛び越えて普及し、自宅に電気が通っていなくても携帯電話を利用している人の数は5億4800万人に上っている。そこで、携帯電話業界はそのようなユーザーの携帯電話を充電するために必死で努力している

携帯電話が充電できれば、利用頻度が上がり、利用頻度が上がれば、携帯電話会社はさらに利益を上げる。かなり大きな利益だ。これで電力の普及に対する考え方は一転した。これまでは、「膨大な費用がかかる開発プロジェクト」だったものが、今では日に日に魅力を増す、うまい儲け話になったのである。

しかも、この話に乗れば、携帯電話事業者は悩ましい問題をもう1つ解決できる。それは高くつくディーゼル燃料だ。送電網外の「基地局」(電気を電波に変える電波塔)に電力を供給するために費用のかかるディーゼル発電機を使わずに済めば、彼らはコストを節約できる。インドだけでも40万本の電波塔があるが、そのうち15万本については、送電網との接続が確保されていない。

ここでコミュニティ・パワーの出番である。これらの基地局は、OMCのような企業によって作り出される電力の大部分を継続的に購入することによって、小規模なエネルギープロジェクトの固定客となる。収入の流れがこのように確保できれば、OMCは小規模送電網や携帯バッテリーを通して、あるいは機器(携帯電話など)をその場で直接充電することによって、余った電気を売ることができる。そうすると、携帯電話事業者はユーザーの携帯を常に充電しておくことができ、毎月の電気料金は安くなり、その一方で地域のコミュニティは電気が使えるようになる。これこそコミュニティ・パワーだ。

OMCの取引が画期的なのは、コミュニティ・パワーの事業計画で、専ら規模拡張路線を走っているバーティーのような顧客がつくのは初めてだからだ。しかし、さらに重要なのは、おそらくOMCが、このモデルは想像以上に実用的だと証明していることだ。

それはなぜかというと、このモデルが「銀行が信用するに足る」(実現に向けて金融機関に実際に出資してもらえるように説得できる)ものになっているからだ。そのカギは、携帯電話の基地局には安定的な需要があるため、収益が保証されていると金融機関を安心させられることにある。少なくとも、これまでの考え方ではそうなる。とにかく固定客がいることは重要だ。

しかし、OMCのスタッフと話をして最も興味深く、また良い意味で驚いたのは、収益の半分以上は地域の人々、つまりコミュニティ・パワーの部分から得られていることだった。基地局からではないのである。基地局を抱える会社のことなど忘れていい。「銀行が信用するに足る」のは一般の人々なのだ。セルコ社のハリシュ・ハンデ氏のような人々は数十年もの間、銀行にそう言っていた。

しかし、それを金融機関に理解させることが、電気を普及させるうえで最大の難関の1つだった。そして実際に出資させるのは、さらに困難だった。世界銀行を例に挙げてみよう。資金が得られないことが最も深刻な問題だと、世界でも最大手の電気事業者が繰り返し訴えていたにも関わらず、世界の開発に大きな力を持つこの機関は、リオ+20で資金拠出を明言しなかった。さらには、ライティング・アフリカのような重要なプログラムがあるにも関わらず、貧困層にも電気を使えるようにするという長年の問題を解決するに違いないイノベーションに、資金の提供をしぶってきた(しかし、Global Off Grid Lighting Association ((グローバル規模でオフグリッドの電力普及を目指す協会)) が設立されて活動を開始したので、今後の状況は好転すると期待したい)。

さらに悪いのは、金融機関がコミュニティ・パワーと分散型発電は信用できないと決めつける一方で、クリーンエネルギーの開発を推進するために定められた政策は、中央からの送電網が届く施設に専ら目が向いていることだ。OMCのような起業家は常に蚊帳の外だった。彼らは政策の対象となることはなく、価値があるものというより、むしろ問題の種だと見られていた。だからこそ、OMCはまだインドで太陽光発電を行うというミッションに取り組んでいないし、ウッタル・プラデシュ州が1ギガワットの太陽光発電を推進していても関係ない。補助金のことは考えなくていい。このビジネスモデルは現実に行われているのだから。

これらの障害にも関わらず、貧困層が実は信用に足るとはどういうことだろうか? それは、電気料金と開発の間には相関関係がないからである。相関関係は電気の存在と開発の間にしかない。インドの地方に住んでいる人たちは自分たちでもそれがわかっているし、貧困層であっても電気には進んで対価を支払う。とにかく、確実に電気が使えればいい。

OMCとコミュニティ・パワーの到来に話を戻そう。よく言われることだが、石器時代は石がなくなったから終わったのではない。中央集権型の化石燃料時代は化石燃料がなくなるから終わるのではない。コミュニティ・パワーのような破壊力があるイノベーションが、既存産業の政治力、そして革新的なアプローチを阻んでいる現状の規制を変革する力となる。だから、送電網のことは忘れていい。コミュニティ・パワーはここにあり、それは世界を変えるだろう。

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この記事は COMPASSに発表されたものを、シエラクラブの許可を得て転載させていただいています。 © 2012 Sierra Club. All Rights Reserved.

翻訳:ユニカルインターナショナル

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著者

ジャスティン・ゲイ氏は シエラクラブのインターナショナル・プログラムで活動するワシントン駐在員である。インドのムンバイにあるシエラクラブのGreen Livelihood Center(グリーン・ライブリフッド・センター)に勤務し、再生可能エネルギー、開発、環境の持続可能性の問題を中心に共同プロジェクトの策定を行った経験を持つ。

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