e-wasteの違法リサイクルの危険性

中古のコンピュータや携帯電話は新興国ではしばしば違法にリサイクルされる。e-waste問題の専門家、ディーパリ・シンハ・ケトリヴァル氏は、「違法リサイクルは人間と環境の両方に深刻な脅威を与える」と語る。

ディーパリ・シンハ・ケトリヴァル氏は国連大学のリサーチ・アソシエイトで、ボンを拠点として、StEPイニシアチブ (電子廃棄物問題を解決するイニシアチブ)の推進に協力している。同氏はe-wasteの政策、研究、経済の側面を博士課程で研究しており、その中でも消費者習慣と電子廃棄物に重点を置いていた。

グローバル・アイディアズ:ドイツの人口は8千万人で、ほぼ同数の古い携帯電話が用済みとなって放り出されています。近年、携帯電話の使われ方はどのように変わってきたのでしょうか?

ディーパリ・シンハ・ケトリヴァル氏:どこに目を向けても、携帯電話の普及は目を見張るほどの勢いで進んでいます。驚異的な増加ぶりと言っていいでしょう。インドと中国では毎年、新加入者の数が3億人から4億人にのぼります。まさに急速に浸透しています。しかも、それが社会のあらゆる階層で起こっているのがとても興味深い点です。つまり、多くの人にとって、かつては手の届かなかったサービスが身近になったのです。これまで電話を持ったことのない多くの人がいきなり携帯電話を手にしています。彼らは固定電話の利用の変遷を一切経験していません。

携帯電話の寿命はどのくらいですか?

大抵の携帯電話会社およびメーカーは1年半から2年と想定しています。これは実際に機械としてどれだけもつかという耐用年数ではありません。技術的には携帯電話は10~12年、それどころか15年でも使うことができます。しかし、実際の使用年数はわずか2年程度です。おそらく国によって違いはあるでしょう。例えばインドのような新興国では、広くリユースが行われている分、使用期間が延びるので、寿命はもう少し長くなります。一方、ドイツのような先進国では、長くてもせいぜい1年半、あるいは契約期間の終了とほぼ同時に携帯電話を変えます。また、携帯電話メーカーはこのサイクルに合わせて新製品、新モデルを投入するタイミングを計っています。

先進国のe-wasteは今でもアジアやアフリカに輸出されることが多いのですが、バーゼル条約でe-wasteの国際取引について規制が設けられ、多少は状況が変わってきています。実際にはどの程度変わったのでしょうか?

結局のところ、バーゼル条約は大半がe-waste取引の書面の話なのです。バーゼル条約が言わんとしているのは、例えばドイツからインドに廃棄物を輸出する時には、事前に通知および合意する制度が必要だということです。輸出国側が「有害廃棄物をこちらからそちらに輸出します」と輸入国側に伝え、その相手国が「了解しました。喜んで受け入れます」「こちらで加工できます」などと答えれば、それでいいということです。バーゼル条約は基本的にはそういうことを定めています。

この条約については、その後、BAN改正が行われました。しかし、ごく限られた効力しか持ちません。対象は先進国から新興国に輸出されるe-wasteだけです。しかも、双方がBAN改正に批准していることが前提です。たとえば米国はBAN改正を批准していません。そのような国は廃棄物をナイジェルアでもガーナでもインドでも、どこにでも輸出できるのです。

欧米からのe-waste製品は最終的にはどうなるのでしょうか? リユースされるのですか、それとも埋立地に捨てられるのでしょうか?

すぐさま埋立地に向かうことはありません。貨物が輸入国に到着したら、多くの場合は取引業者やリサイクル業者の手にわたります。彼らはリサイクルするか、整備して使用可能な状態にするか、あるいは銅などの金属を取り出してから、残った部分を埋立地に廃棄します。ですから、少なくとも一部は埋立地に向かいますが、船から降ろされて、そのまま埋立地に行くわけではありません。違法な輸入が行われるのはまさにそのためです。e-wasteはリサイクルや取引ができるのです。そのまま埋立地に送られる多くの固形廃棄物とは違います。しかし、適切な取引も行われており、そのような過程を経れば、全体でエコシステムが成り立ちます。

リサイクルされる部品として最も一般的なのは、あらゆる貴重な金属が含まれているPCB(プリント基板)です。そこから価値の高い銅線を取り出し、被覆材をはがして銅を回収し、それを他のユーザーに販売します。コンピュータや携帯電話の中には高い買い取り価格がつく部品もありますが、それらを取り出してしまったら、残るのはプラスチックなど、お金にならない部品ばかりです。埋立地でモニターの外装だけが捨てられているのを目にするのはこのような理由によります。キーボードのキーもそうです。こういうものは捨てられるだけです。

大抵の人たちは、e-wasteと聞くと、まずコンピュータや携帯電話などを思い浮かべ、それ以外は想像しないでしょう。しかし、冷蔵庫、洗濯機、トースター、掃除機などもe-wasteに分類されます。たとえば、先進国で廃棄された冷蔵庫は新興国に大量に輸出されます。扱い方や保管、輸送の方法次第でコンプレッサーや機械部分は傷んでしまいます。そうすると、効率が悪くなる、電力を消費するばかりになる、あるいは十分に冷やせないなどの状態に陥り、それらはゴミになってしまいます。

それでも冷蔵庫はどこをとっても金属なので、あらゆる部品がリサイクルできるのです。外装部分もそうです。ただし、非常に危険です。冷却剤、発泡剤など、きわめて危険なものが用いられています。

どのように有害あるいは危険なのですか?

不適切なリサイクルはまず健康被害を及ぼします。PCBから非合法な方法で金を回収しようとすると、水銀やら、さまざまな酸性溶剤やらを用います。これは身体に悪影響を及ぼしますが、被害を受けるのはそれを行っているリサイクル業者だけではありません。その後、沸騰させると、あらゆるものが空中に蒸発します。廃水は下水としてそのまま流すと思われるので、水を汚染します。また、明らかに屋外で行いますから、土壌にも有害な物質がすべて染み込みます。つまり、加工中に危険が生じるのです。そしてもちろん、PCBから金を取り出した後、残った部分は実際、どこかの埋立地に捨てられることになり、それもまた危険です。つまり、プロセスそのものも最終的な結果も共に危険なのです。

e-waste問題の責任の所在はどこにあるのでしょうか? 国際的な対策が不十分なためでしょうか、あるいはあまりにも多くの製品を買いすぎる消費者自身に問題があるのでしょうか?

難しい質問ですね。誰かひとりの責任にすることはできないと思います。あらゆる側面を見ることが必要です。対策の整備も必要ですし、消費者が正しい認識を持つことも必要です。リサイクル業者も同様です。問題が起こった理由は、このようなものから利益が得られるということです。

「防止策を決めた」と口で言うのは簡単ですが、実際に運用するのははるかに困難です。対策を取ること自体、すでにきわめて困難なのですから。ですから、誰かに責任を問うことができるとは思いませんし、それが正しいとも思いません。すべてのステークホルダーが問題の解決において何らかの役割を果たす必要があります。

最善の解決策はどのようなものですか? リサイクルが合法的に行われるようにして、インフラストラクチャを改善するには、どうすべきでしょうか?

リサイクル業者が合法か違法かの違いは、少なくとも私にとっては、どのようなプロセスが行われているか、有毒物質の管理ができていて、それらが外に漏れないようになっているか否かにあります。違法な設備ではこのような管理ができません。防具も身につけていなければ、有毒な物質が外に出ないようにするための閉じられた空間もありません。プロセスもそれほど清潔ではありません。合法な施設ではこれらの管理がもっと行き届いているので、有毒な物質を減らし、その危険性を抑えることができるでしょう。そのようになっていくべきだと思います。

今日では、かなり多くの新興国において、合法リサイクル業者のインフラは良くなってきています。もっとも、それですべてが変わるわけではありません。実に多くの国で違法なリサイクルセクターが幅を利かせています。インドは間違いなくそうです。ナイジェリアやガーナも同様でしょう。実に多くの人々がe-wasteリサイクルに関わっていて、そういった人々を合法リサイクル業者に変えるのは一朝一夕でできることではありません。

e-wasteの最大の問題は、正しく扱わなければその大部分が有害だということでしょうか?

その通りです。携帯電話は家の引き出しに入っている間は有害ではありません。そこにあるだけなら安全です。でも、不適切な方法でリサイクルを始めようとすると、それはたちまち有害なものに変わるのです。

私たちは古い携帯電話をずっと手元に置いておいた方がいいのでしょうか?

いいえ、そんなことは言っていません!最も良い方法は携帯電話の使用年数を伸ばすことだと思います。3つの「R」の原則、つまり、リデュース(reduce)、リユース(reuse)、リサイクル(recycle)を考えなければなりません。消費者の立場で最初にすべきことは「本当に新しい携帯電話が必要か?」を自分に問うことでしょう。本当に必要なら、古い携帯電話を使ってもいいと言う人がいないか聞いてみましょう。これでリデュースとリユースがきます。誰も使えないと言うなら、引き出しで眠らせておかずにはリサイクルするのが一番でしょう。実際、引き出しに入れておいても、その携帯電話に含まれている価値を活かすことはできません。

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この記事はOur World 2.0が提携するドイチェ・ヴェレ「グロ―バル・アイディアズ」のご厚意により掲載させていただきました。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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