イノベーションと気候変動

2008年6月23日、米航空宇宙局NASAゴッダード宇宙研究所のジェームズ・ハンセン博士は、米国議会で地球温暖化について証言した。

ハンセン博士は、、夏には北極を覆う氷が溶け、南極の西部とグリーンランドの氷床も崩壊しやくなってきているという例を挙げた。

従来のペースで温暖化ガスが排出され続ければ、今世紀中には海面レベルが少なくとも2メートル上昇すると警告した。そうなれば、何千万人もの環境難民を生むことになるだろう。

2008年7月8日に開催された国連大学G8シンポジウム「気候変動の時代におけるイノベーションと実業化する力」で、博士は温暖化について次のように述べた。博士へのインタビューはこちらから。

ハンセン博士が安全だと考える大気中の二酸化炭素濃度は、350ppm、またはそれ以下だ。しかし現在、二酸化炭素濃度はすでに385ppmに達しており、年間2ppmずつ上昇している。我々はできるだけ早期に、350ppmレベルにまで数値を下げなくてはならない。

チャンスの政治

ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(ロンドン大経済政治学院)のグウェン・プリンス教授も、同シンポジウムに参加し、京都議定書の限界について述べた。京都議定書で規制を設けるよりも、我々の経済の源であるエネルギー資源の供給に焦点を当てるべきだと提唱した。その中で、教授は日本政府のアプローチを称賛し、低炭素社会の実現に向けた新エネルギー資源への転換を目指す新しい「チャンスの政治」について語った。

「ブレークスルー、環境主義の滅亡から可能性の政治へ」の共同著者であるブレークスルー・インスティテゥートのテッド・ノードハウス氏も、この意見に賛同している。同氏は、現状が続けば、2020年までに大気中の二酸化炭素濃度が450ppmに達すると警告する。この状況を打開するためには、巨額を投資して、先進国・途上国で原子力、炭素隔離した石炭、風力、太陽などの代替エネルギーへの転換を図ることだと提唱している。

欠乏と気候の政治

リバー・パス・アソシエイツのデイビッド・スティーブン氏は、資源不足と温暖化問題をめぐって激化する国家間の争いがもたらす悪影響について述べた。スティーブン氏は、争いを続けていては、大きな損失を被ることに気づく転換点が訪れると確信している。各国が協調し合わなければ、低炭素経済への転換において、取り残される危険性があるのだ。

ニューヨーク大学国際協力センターのアレックス・エバンズ氏も、この意見に賛成だ。石油・食糧価格と気候変動についての関連性について述べ、今現在行われている気候変動協議、2009年のコペンハーゲンサミットの結果予測については、悲観的意見を寄せた。

エバンズ氏は、即座に新エネルギーに投資をする必要があると指摘する。これまで気候変動交渉にあたってきた一部の人々だけでなく、新しいアイデアを持つ他のグループの意見も取り入れ、我々が直面する膨大な環境問題の解決に向けた共通意識を持ち、対策の合意を目指さなければならない、

将来の方向性

次に我々は、Smelling Land: The Hydrogen Defense Against Climate Catastrophe(スメリング・ランド:気候の大変動を水素で防御する)の著者であるデイビッド・サンボーン・スコット氏にインタビューした。交通機関や産業にクリーンな低炭素資源(風力や太陽発電)を用いるためには、水素を使う方法しかないと述べている。

国立環境研究所特別客員研究員の西岡秀三氏にもインタビューを行った。低炭素社会プロジェクトの主任である西岡氏は、2050年までに二酸化炭素を70%削減できるかどうかについて、次のように述べている。

Creative Commons License
イノベーションと気候変動 by ブレンダン・バレット is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
Based on a work at http://ourworld.unu.edu/en/innovation-and-climate-change/.

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著者

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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