侵略的外来種が種の多様性を脅かす

今年は国際生物多様性年。現在、この私たちの地球に生きている多種多様な生物は、あまりに多くの脅威にさらされている。脅威のリストには野生動物の新興感染症(鳥インフルエンザなど)、気候変動、地域社会による自然資源収穫の増加、それに資源採掘産業の拡大も含まれる。

しかしリストのトップ近くには、別のタイプの脅威として、他の生物に対して猛威を振るう生物が位置している。それは新しいテリトリーに侵入し、行く手を邪魔する他の生物たちをしめ殺したりむさぼり食ったりして暴れまわる。「侵略的外来種」とは、自分のテリトリーではない生態系の中に入り込み、競争、捕食、交雑、その他間接的な影響によって在来種たちの持っていた豊かな多様性を減少させる生物のことをいう。侵略者は群落構造を変え、遺伝的多様性を悪化させる。

病原菌から植物、ネズミ、ネコ、魚、ヤギに至るまで、これら破壊の元凶たちは、広い領域にわたってさらに多くの種に影響を与えつつあるが、それのみならず、すでに絶滅の危険のあった種に対しては緊急警戒警報を大きく鳴り響かせるものとなっている。

地球規模の警鐘

このような危機的な瀬戸際にある今、Center for Invasion Biology(C·I·B、南アフリカにある侵入生物学研究センター)と、バードライフ・インターナショナル(国際的な野鳥保護団体)と、国際自然保護連合(IUCN)の科学者たちによる最新の報告書「Global indicators of biological invasion: species numbers, biodiversity impact and policy responses」(「生物学的侵入のグローバル指標:種の数、生物多様性への影響、そして政策対応」)が発表された。

生物多様性条約(CBD)の2010年生物多様性目標は、「貧困緩和に資するため、そして地球上のあらゆる生物への恩恵のために、現在失われつつある生物多様性の損失速度を2010年までに、地球・地域・国家レベルにおいて顕著に減少させることである」と当報告書は指摘する。

しかし当調査によると、生物多様性条約の枠組み内の22個ある生物多様性指標のうち、十分に成熟しているといえるものは、9個のみだそうだ。さらに、侵略的外来種の脅威にさらされた種を減少させるための目安として設定された諸目標は、まだ達成されていないのだという。

この失敗の一因として、標準化データの不足が挙げられる。寄稿者たちがIUCNによる絶滅危惧種のレッドリスト(グラフ参照)とグローバル侵入種プログラム(GISP)のウェブサイトを通じて研究データを公に共有しているのはそのためだ。報告書は、「科学界の人たちもそうでない人たちも、指標を最新かつ可能な限り正確なものにするために、これらのデータセットに情報を提供してほしい」と呼びかける。

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前進への筋道を立て、近い将来よりよい取り組みを図るための証拠と洞察を当結果は示している、と報告書は締めくくっている。

誰が誰を危機にさらしているのか

上記の研究が57カ国を調査した結果、それぞれの国の生物多様性に負の影響を与えている外来種が、各国平均して50種類いることが明らかになった。侵略種の数は、赤道ギアナ共和国の9種類からニュージーランドの222種類にまで及ぶ。

自分のテリトリーではない環境に侵入している種が、総計で542種確認された。その内訳は植物316種、海洋生物101種、淡水魚44種、哺乳類43種、鳥類23種、両生類15種である。

当報告書の主執筆者であるメロディ・マッギオーク教授によると、これらの数値は現実より少ない値であるそうだ。なぜならば、「発展途上の状況にあって研究資金の乏しい地域では、侵略的外来種の数が予期された数を下回った」からだという。

どこで何によってどんな種が絶滅の危機に瀕しているのか、具体例をご紹介しよう。

・ニュージーランドでは、ネズミの急増により、イエローヘッドと呼ばれる鳥が大きな打撃を受けている。イエローヘッドの個体群のうち2つは絶滅し、残りの3つも著しく数が減ってきている。その結果、この種の絶滅危惧度は、IUCNレッドリストの「危急」(絶滅危惧II類)から「絶滅危機」(絶滅危惧IB類)へと引き上げられている。

・病原性菌類であるツボカビは、1998年まで知られていなかった種だが、地球上の多くの両生類の減少や絶滅の原因と考えられている。ツボカビの引き起こす病気は、人類によって広げられる他、外来魚からアフリカツメガエルに至るまで、さまざまな種によって広められていく。

写真:Rare Birds Yearbook/Peter Hodum(「希少鳥類年鑑」ピーター・ホーダム)

写真:Rare Birds Yearbook/Peter Hodum(「希少鳥類年鑑」ピーター・ホーダム)

遅すぎる現場でのアクション

当報告書によると、問題の拡大は、過去25年間に国際貿易が大幅に増加したため引き起こされた。しかしながら、執筆者たちはこうも指摘する。ほとんどの国がこの脅威に立ち向かう国際的な誓約をしたにもかかわらず、適切な法的措置を取った国は半数にすぎず、実際に現場でアクションを起こしている国はさらに少ないと。

「バードライフ・インターナショナル」のスチュワート・ブチャート博士は、当報告書の執筆者のひとりだが、彼によるとIUCNレッドリストにおいて危惧されていたいくつかの種の状態に改善がみられるという。しかし、安心するのは早いと彼は警告する。

「侵略的外来種との数々の戦闘のうち、我々人類はいくつかの戦闘で勝利しているが、この戦争全体から見ると、現時点では人類が敗北しつつあることをこの報告書は示している」

実際のところ、地球が気の遠くなるような勢いで種の絶滅を経験している今(年間約30,000種――これを言いかえると、毎時間3種以上という、より恐ろしい統計になる!)、失われた種のひとつひとつが大きな警告を発している。少なくとも私たちはそう受け取るべきである。

「地球は今”6番目の大絶滅“を経験している。しかし今日の新聞記事の見出しを読んでいてもそれは分からない」今週月曜日イギリスの環境大臣はこう語り、各国指導者たちに対し「生物多様性プライシング」(炭素プライシングにならって市場機構を活用する生物多様性政策)の導入を呼びかける計画を明らかにした。この考え方は、 先週ここOur World 2.0において生物学者のグレチェン・デイリー博士が示唆していたものである。

侵略的外来種を片付ける

問題は非常に深刻だが、適切な国際的アクションを持ってすれば(経済的措置であれ、法的措置であれ、あるいはその両方ならもっといいが)侵略的外来種のコントロールは十分に達成可能である。

クロハラミズナギドリはメキシコ沖のナティヴィダード島固有の海鳥で、ネコ、ヤギ、ヒツジの脅威にさらされていた。しかし、これらの外来の捕食動物を根絶したことで、この鳥はIUCNレッドリストの「危急」(絶滅危惧II類)から「準絶滅危惧」へと絶滅危惧レベルが下げられた。同様に、オーストラリア南西部でもここ10年、アカギツネの数をコントロールすることで、クロテワラビーの危険度順位を「軽度懸念」にまで下げることに成功している。

「侵入生物のまん延を初期段階で食い止める方が、生物多様性の危機が起こってしまってから問題に取り組むよりも費用対効果が高いはずです」とIUCN部長でGISP議長のビル・ジャクソン博士は言う。

「十分な資金と政治的意志があれば、侵入生物をコントロールし根絶することは可能です。こうすることによって在来種を絶滅の危機から救うことができます。しかし各国は、この問題への取り組みを劇的に改善する必要があります」

やつらをやっつけてしまえ!食べてしまえ!

より軽めのニュースとしては、最近ネットに流布している草の根の革新的アイディアで、Our World 2.0のお気に入りがある。生物多様性と食料安全保障の両方の問題を同時に扱う妙案だ。

ルイジアナ州の野生生物・水産業省とケージャン料理のシェフたちが    、元々はアジア原産の淡水魚ハクレン(シルバーカープ)を食用として宣伝するキャンペーンを始めたという。キャンペーンでは”シルバーフィン”という新ブランド名が付けられたこの魚は、体重23キロにまで成長するコイの仲間だ。1メートル近く宙に跳び上がる習性があるため話題に上りやすく、アメリカでは害魚としてよく知られている。時にはボートの中に飛び込んで人に怪我を負わせることもある。

ハクレンと同様にコクレン(ビッグヘッドカープ)も、ルイジアナ在来の淡水魚と同じプランクトンを競合して食べるため、これらの在来魚を脅かしている。アジアのコイは1970年代に、養殖池や排水池に放すためアメリカに持ち込まれた。しかし、野生生物ではしばしば見られるように、まもなく逸出し、ルイジアナの池や川で繁殖し、今ではミシシッピ川、レッド川、ワシタ川、そしてアチャファラヤ川流域でよく見られる。

ルイジアナでのキャンペーンに触発され、アメリカの人気アウトドア雑誌の企画で、他にどんな侵入生物を食べてみたいか、そして食べるにはどんなレシピがいいか、という読者アンケートが行なわれた。

どうせなら侵入生物を「やっつけてしまう」だけでなく「食べてしまう」のも結構なことではないだろうか。Global Invasive Species Database(全世界の侵入生物種に関するデータベース)でご自分の国について調べた上で、メニューを考えてみたらいかがだろう。あなたの地元の侵入生物でおいしそうなものは何?

翻訳:金関いな

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侵略的外来種が種の多様性を脅かす by キャロル・ スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリストで、グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。

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