次なるシェアリングシティを目指すソウル

こんな一日を想像してみよう。賑やかな都会で目覚めたあなたは、借りておいた予備室でゲストと一緒に朝食をとる。その後、シェアカーに乗って職場へ行き、市外から来た客を市内観光に連れて行く。昼休みには公共交通機関でのフラッシュモブに参加し、仕事が終わったらツールシェアリングセンターに立ち寄りプロジェクトの仕上げをする。帰宅後は隣人のアパートでコミュニティミールを楽しみ、スマートフォンで見つけた貸トランクを使い旅行の荷造りをして夜を過ごす。

さてあなたがいるのはどこだろうか?ソウルだと言ったら驚くだろうか?

世界の主要な大都市の一つである韓国のソウルは、シェアリングのモデル都市としての地位を確立しつつある。市が出資する新プロジェクト「Sharing City, Seoul(シェアリングシティ・ソウル)」は、シェアリングインフラの拡大、既存シェアリング企業の振興、シェアリングエコノミー新規事業の育成、遊休公共資源の活用、データやデジタル著作物へのアクセス拡大により、すべてのソウル市民にシェアリングエコノミーを提供することを目的としている。

革新的な方法による社会・経済・環境問題の解決を目指すSeoul Innovation Bureau(ソウル市イノベーション局)の計画の一環として2012年9月に立ち上げられたシェアリングシティプロジェクトは、シェアリングを通じてソウル市民の生活を改善しようという運動である。またこれは、市の資源と予算を最大限に活用するための方法でもある。

シェアリングシティの目標は、雇用を創出して所得を増やし、環境問題に取り組み、不必要な消費や無駄を減らし、信頼に基づく人間関係を取り戻すことである。共同体意識の回復はこのプロジェクトの重要な側面であると、Seoul’s Social Innovation(ソウル市ソーシャルイノベーション部)主任のKim Tae Kyoon(キム・テギュン)氏は言う。

「シェアリングシティは、新たな雇用を生み出し、所得を増やし、資源を効率的に活用するだけではなく、情報技術とソーシャルネットワークサービスを用いた現代的な方法で、急速な都市化と産業化により失われたコミュニティを再生します」

234平方マイルの土地に1,000万人以上が暮らすソウルは、テクノロジーを基盤としたシェアリングのメリットを実証するのに適している。ソウルは世界で最も人口が密集した都市の1つであると同時に、インターネットへの接続環境が最も進んだ都市の1つでもある。テクノロジーインフラが高度に発達し、公衆無線LANが広く普及し、韓国国民の60パーセントが スマートフォンを所有している

シェアリングシティについて議論するパク・ウォンスン ソウル市長。写真: ShareHub

シェアリングシティについて議論するパク・ウォンスン ソウル市長。写真: ShareHub

またソウルは深刻な課題に直面している。人口過剰と都市化により、住宅、交通機関、駐車場が不足し、公害や資源の乱用が生じている。他の自治体もこうした問題を抱えてはいるが、ソウルの人口密度が事態をさらに深刻にしている。社会運動に携わり革新的な問題解決を行ってきた経歴を持つパク・ウォンスン市長が率いるソウル市は、こうした問題の一部に対する打開策としてシェアリングエコノミーを採用し、市のシェアリングインフラを活用・拡大するために積極的な取組みを進めている。

ソウルの壮大なシェアリングエコノミー計画

シェアリングエコノミーを正式に承認した最初の国際都市の一つであるソウルは、シェアリング文化の構築に積極的に取り組んでいる。以下に示すのはソウル市が進めている主な活動であり、これらすべてが 社会的認知、ビジネスインキュベーション、新たな規制、市の遊休資源の活用といった要素を網羅した包括的な計画の一部である。

さらにソウル市は、492台のカーシェアリングサービスを導入し、業務時間外や休業日に庁舎の駐車場や市の建物を一般解放し、空き部屋を持つ高齢者と部屋を探している学生との橋渡しを行い、市全域のコミュニティにツールライブラリや共有本棚を設置するなど、さまざまな取り組みを進めている。

市の支援対象として選ばれたシェアリング企業には、ホームステイ紹介システムのKozazaLabo Korea、古い家を改築してシェアハウスにする会社Woozoo、使われていない品物の貸し借りを仲介する会社WonderlendBilli、カーシェアリングサービスのSoCar、子供服の交換を行う会社Kiple、寄付されたスーツを求職中の若者に配布する会社Open Closet、文芸・アート教育スペースの Living and Art Creative Center、食事のシェアリングを行うZipbobなどがある。

食事のシェアリングを行うZipbobのメンバーたち。写真: Zipbob

食事のシェアリングを行うZipbobのメンバーたち。写真: Zipbob

またソウル市は、デジタル分野におけるシェアリング支援にも力を入れている。Creative Commons Korea (クリエイティブ・コモンズ・コリア:CCK)は、シェアリングシティプロジェクトに関する情報と資源を共有するための市の計画においてパートナーとして貢献している。この組織は、シェアリングシティに関する市民教育と情報提供、シェアリングエコノミーに関するニュースの共有、シェアリングサービスのディレクトリ提供を行うShareHub Englishというポータルサイトを新たに立ち上げ、運営している。

「このディレクトリが発見の機会をもたらすものとなるよう願っています」と、CCKの専任アクティビストであるDiane DaYe Jung(ダイアン・デ・ジュン)氏は言う。「人々はいつでもサービスを利用できるようになり、欲しいものや必要なものをより簡単に探すことができるようになるでしょう。CCKが人々の注目を集め、シェアリングがいかに便利で従来の消費よりも合理的なものであるかを人々に理解してもらえることを願っています」と、彼女は続ける。

またCCKとの協力により、シェアリングの精神がアート、写真、公共データを含むデジタル著作物にまで拡大されることになる。

「政府のデータや公共データは私たちが支払う税金によって賄われているのです」と、ジュン氏は言う。「私たちが自由に利用できるようこれらのデータの開示を政府に求めるのは当然のことだと思います」

CCK のアクティビストとして、またソウル市民として、ジュン氏はシェアリングシティプロジェクトを熱心に支持している。

「政府がシェアリングという社会的動機によって動いているのは、実に素晴らしいことです」と、彼女は言う。「CCKのアクティビストとして、私はシェアリングの考え方を一般市民に広めなければならないと考えています」と、彼女は続ける。「また一市民として、私はつねに日常生活に直結した政策を求めてきましたから、大変うれしく思います。シェアリングエコノミーは、私たちに数多くの手ごろな価格の選択肢を提供してくれるのです」

シェアリングシティについての質疑応答に参加する人々。写真: ShareHub

シェアリングシティについての質疑応答に参加する人々。写真: ShareHub

サンフランシスコをヒントに、アジアと世界を触発しようとするソウル

ソウルは、サンフランシスコのシェアリングエコノミー、そして具体的にはシェアリングエコノミーのモデル政策を策定するために設立された部門横断グループSharing Economy Working Groupシェアリングエコノミー・ワーキンググループ)(「Shareable」が立ち上げを支援)から着想を得るとともに、シェアリングシティ政策の策定においてShareable City(シェアラブルシティ)報告書の方針を参考にした。

しかしサンフランシスコとは違い、ソウルの民間部門におけるシェアリング活動は「幼少期の段階」にあると、キム氏は言う。そのため、市はシェアリング企業の発展と振興に関してより実践的な役割を担っている。

このような初期的段階にあっても、シェアリングシティプロジェクトは韓国国内他都市の模範となろうとしている。光州広域市と釜山広域市の代表者がソウルを訪れて同市のシェアリングプログラムについて学び、自分たちの市でシェアリング政策を実施している。

「他の都市もシェアリングシティについて積極的な議論を行っています。私たちは、シェアリング文化が国内の多くの都市に広がることを期待しています」と、キム氏は言う。中央政府は新大統領の中核的政策である創造的経済とシェアリングとの関係性に注目していると、彼は語る。

キム氏によると、ソウル市はシェアリング活性化のために、海外の他の都市との情報交換や協力を望んでいる。「私たちは、ソウルのシェアリングシティ政策がアジアの他の都市、さらには世界中の多くの都市へと広がるよう願っています。」

「ソウル市のシェアリングシティプロジェクトの最終目標は、離れて暮らす人々が生活を共有し、信頼と人間関係を回復し、精神面で温かい都市を築き上げることです」 と、彼は言う。

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Shareable.net のご厚意で掲載されました。

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Based on a work at http://thinkprogress.org/climate/2013/08/28/2546291/community-solar-income/.

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著者

Cat Johnson(キャット・ジョンソン)氏は、コミュニティ、シェアリングエコノミー、コモンズ、音楽を中心に扱うフリーランスのライターである。出版物には、Utne Reader、GOOD、Yes! Magazine、Shareable、Instant Magazine、the Santa Cruz Weekly、No Depressionなどがある。また、音楽愛好家であり演奏家でもある。

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