アフリカ初の気候変動機関設立を目指すケニア

ケニアでは、乾燥した北部で干ばつが続く一方で、別の地域では豪雨が人命まで奪う被害をもたらしている。洪水が首都ナイロビのスラムを襲い、リフトバレーではハイカーを押し流し、農作物を壊滅させている。

アフリカ東部の経済大国であるケニアは、ますます極端かつ激しく変動する気候により、人的被害に加えて財政支出も余儀なくされ、多くの国民は困惑しきって首を横に振る。

環境学者で国会議員でもあるウィルバー・オティチロ氏は、ケニアはこれらの極端な事象に備えるべきだとして、独立した気候変動機関を設立する法案を起草した。この機関は、地球温暖化への適応および温室効果ガス排出量の削減について提言を行う。

彼はこの動きについて、大陸全体にとって画期的なものだと述べている。アフリカでは他にナイジェリアが唯一、同様の機関を設立する法案を可決している。しかし、グッドラック・ジョナサン大統領がまだ署名をしていないため、法律としては成立していない。

オティチロ氏の法案はいつでも審議にかけられる準備ができており、彼は法案がすぐに上程されると確信している。彼が言うには、222人の議員のうち、100人以上がすでに支持を表明している。

オティチロ氏はガーディアン紙に次のように語った。「気候変動はあらゆる領域にまたがる事柄なので、この機関は気候変動に関わる国内のすべての活動を調整することになります」

同機関は、全国の公共機関および民間機関を網羅するデータベースを作成し、エネルギーおよび二酸化炭素排出量に関して報告を求めるとともに、温室効果ガス排出量の削減目標を設定する。

目標を遵守できなかったなどの違反が認められた場合は、200万ケニアシリング(1万5000ポンド)以下の罰金あるいは5年以下の禁固、もしくはその両方に処せられることがある。

さらに同機関は、再生可能エネルギー推進のための奨励策を制定することもできる。

オティチロ氏は、国内で数週間続いている激しい雨が、通常の3月半ばより遅れて4月半ばに降り出したことを引き合いに出して、緊急に対策を講じる必要があると訴えた。

彼は次のように語った。「雨は一定の強さで長々と降るのではなく、短時間に集中的に降るようになりました。これにより、食料安全保障に重大な影響が及ぶことが懸念されます」

雨期が終わっても、穀物はまだ成長しきっていないだろう。乾期が戻ってくると、水不足の影響が目に見えるようになり、一部の地域では干ばつが起こることが予想される。

北部には乾燥したサバンナ、西部には緑が生い茂る森林地帯、そして海岸沿いには低地帯が広がるケニアは、気候変動との闘いにおいては常に最前線に立ち、一部の分野では先駆者的な役割を果たしてきた。

ケニアは太陽光発電と地熱発電に投資を行っている。アフリカにおいて、このようなエネルギー源の開発を行ったのはケニアが最初である。さらには、トゥルカナ湖の近くに、サハラ以南のアフリカでは最大の風力発電所を建設する計画もある

ケニアの電力の約60%は水力発電でまかなわれている。クリーンではあるが、降雨量が不安定なため、信頼性に欠ける。停電や供給制限により、企業は出費を余儀なくされる。そのため、その他の電力供給源を強化するために、しっかりした財政議論が行われている。

政府は、最新の景気調査において、高金利、選挙を次年度に控えていることによる投資の鈍化、石油価格の高騰、それに加えて不安定な気象条件を理由として、今年度の成長予測を4月における5.2%から3.5~4.5%に引き下げた。

環境問題を専門とする弁護士で、ナイロビにあるストラスモア・ロー・スクールで顧問会議の委員長を務めるパトリシア・カメリ・ンボテ教授は次のように語った。 「私たちにとって、気候変動は抽象的な学問の対象ではありません。日々の生活に関わる問題なのです」。彼女はオティチロ氏の法案起草にあたっても助言を行っている。

ケニアが気候変動対策に積極的なのは、その影響を受けやすいためだが、カメリ・ンボテ教授によると、ナイロビに国連環境計画(UNEP)の本部があることも大きな意味を持っている。UNEPの存在は、気候変動問題に関する国民の認識を高めるうえで有意義で、新法案については同機関も議員たちに協力している。

オティチロ氏が「大いなる努力」と呼ぶ今回の取り組みは、2009年、ケニア気候変動ワーキンググループ (KCCWG)に参加している200以上の市民団体と議員が手を結んだことから始まった。

オティチロ氏は言う。「私たちは全国各地に出かけ、気候変動公聴会なるものを開催しました。そして、気候変動について考えていること、自ら体験したこと、気候変動を抑制し、適応していくために提案したいことを市民の皆さんに話してもらいました」

環境・鉱物資源省は、法案の起草に最も消極的な機関の1つだったようだ。オティチロ氏は、同省が独自の法案を示すことを望んでいたが、それには時間がかかりすぎると気づいた。

カメリ・ンボテ教授は、ケニア、そしてメキシコのような国々で、国内の気候変動法を準備しているのは事実だが、それは、国連がグローバル規模で拘束力のある原則を確立しようとしているのに不備があるからではない、と言う。

「結局のところ、国レベルで考えることが重要なのです。グローバル規模の法規に合わせて、国の法律を決める必要はありません」

オティチロ氏は時間と闘っているが、それは、世界の気候変動が急激に進んでいることだけが理由ではない。ケニアの選挙は来年3月に予定されているが、法案が次の議会に持ち越しになると、国会議員の賛同を取り付けるためにこれまで行ってきた努力が無駄になるかもしれないからだ。

カメリ・ンボテ教授は次のように述べた。「法案を国会の議論に確実に乗せることが肝心です」

オティチロ氏は、この問題を理解している議員は「必要な数」に達していると言う。「その善意を活かさなければなりません」

この記事は2012年5月25日、 guardian.co.uk で公表されたものです。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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