地域住民の力で アマゾンを守る

サン・マルティンは、ペルーで最も森林破壊の進んだ3つのアマゾン地域の1つである。しかし現在、地域住民と非政府組織が地方自治体と協力し、動植物や水資源を守り雨林の破壊を食い止めようとしている。

ペルー中央部の雨林に位置するサン・マルティンの住民は、地域を流れる河川が干上がり始めるのを見て、政府によるプログラムにこぞって参加した。このプログラムは、生物多様性が豊かな国有地で環境保全活動を行う権利を与えるというものだ。

今までのところ、地域住民は4つの保全権を取得しており、対象地域の総面積は26万7133ヘクタールに上る。さらに現在5つの保全権の認可を待っている状況だ。

ペルーの森林法は2001年、個人およびコミュニティーによる保護プロジェクトや持続可能な開発プロジェクトを創設し、市民社会は積極的に活動し始めた。

過去50年にわたり、サン・マルティンでは160万ヘクタール以上の原生林が伐採された。環境問題を扱う非政府組織によれば、サン・マルティン全域の30パーセントに当たるという。

さらに、国内の森林火災件数は、一昨年では968件だったのに対し、昨年は1711件を記録した。

「私たちが暮らす地域では、すでに森林破壊の影響により生存に不可欠な環境財や環境サービス、特に水へのアクセスができなくなったり、入手不可能になったりしています」とティエラメリカ(環境系ニュース配信ネットワーク)に語ったのは、非政府組織Association of Amazonians for the Amazon(アマゾンのためのアマゾン住民の会、AMPA)代表のカリーナ・ピナスコ氏だ。

この地域の多くの街では、1日に2時間しか水が供給されない。アンデス地方からの人の流入、石油や採鉱のプロジェクト、そして気候変動の影響によって状況はさらに悪化したとピナスコ氏は強調した。

「気候の変化がますます極端になってきています」と彼女は語る。具体的には干ばつと豪雨と寒波が激しさを増したそうだ。

活動家であるピナスコ氏によると、サン・マルティンの人々は団結する必要性を感じており、今では「すべてを国任せにはできない」と認識しているという。

“環境保全権はそのコミュニティーの領域に関する法的な安全性を保証し、他者がその土地の権利を取得することを防ぐため、紛争を避けることができるのです。”

ペルー全域では26の環境保全権が国および地方自治体の森林管轄機関によって認可されている。保全権の有効期間は最高40年間で、失効時には更新可能だ。

さらに非政府組織のPeruvian Environmental Law Society(ペルー環境法協会、SPDA)によると、プーノ県南東部のティティカカ湖よりも広い99万4000ヘクタール近くの土地が、環境保全権とは別の法的手段によって保護されている。

環境保全権を求める声は国中で起こっており、その対象地域は全体で79万6208ヘクタールになる。そういった地域は国有の自然区域にあり、生物多様性の保護と環境サービスの維持が何よりも優先されている。

しかし、この国の法律は他の保全活動も規定している。例えば私有地での環境保全区域の認定や、「servidumbre ecologica」すなわち数人の土地所有者が国の関与なしに環境サービスの開発に賛同するという保全地役権やエコツーリズムに関する権利を認めている。

環境保全権は「そのコミュニティーの領域に関する法的な安全性」を保証し、「他者がその土地の権利を取得することを防ぐため、紛争を避けることができるのです」とピナスコ氏は語った。

サン・マルティンが取得した4つの環境保全権は、リオ・アビセオ国立公園の持続可能な管理に役立つ戦略的な地域を保護している。この国立公園は1990年、国連教育科学文化機関(UNESCO)により世界自然遺産および文化遺産に認定された。

環境保全権の対象となる最大地域はアルト・ウァジャバンバである。ここはマラニョン川およびワジャガ川流域や標高4670メートルから1800メートルの高原を取り囲む地域だ。

アルト・ウァジャバンバには12の永続性および一過性の沼があるほか、ヘンディーウーリーモンキー(Oreonax flavicauda)などの動物種が生息し、チャチャポヤス文化の遺跡がある。

「ウァジャバンバの河川域はサン・マルティンとアマゾン地域にとって重要なエリアです。森林が地域の水系を調整し、相当量の炭素や温室効果ガスを蓄えてくれるのです」とピナスコ氏は語った。

官報『エル・ペルアーノ』は12月27日、ウァジャバンバの河川域を石油などの採掘活動や人の居住を制限する地域に定める条例を公布した。

“地元住民による組織が監視するというこのモデルは興味深いアプローチです。自分たちの暮らす地域を管理する上で住民が重要な役割を担うことができるのです。”

Peruvian Environmental Law Societyのペドロ・ソラノ氏

AMPAはこの地域の環境保全権を2006年に取得した。そして自然産物の採取活動による影響を低減させるため、オホス・デ・アグア、ウイクンゴ、エル・ブレオといった地域での地元の人々によるイニシアティブを支援している。

過去50年のほとんどの期間、環境保全の責任は国だけが負っていた、とSPDAのペドロ・ソラノ氏は強調する。「地元住民による組織が監視するというこのモデルは興味深いアプローチです。自分たちの暮らす地域を管理する上で住民が重要な役割を担うことができるのです」と彼は言った。

現在、25の行政区のうち5つが森林保全権の認可権を持つ。サン・マルティンはその権限を最初に行使した行政区である。森林伐採プロジェクトではなく森林保護プロジェクトを支援する決定をしたのだ。

「サン・マルティンには、地方自治体による環境保全イニシアティブが最も多く存在します。なぜなら行政がイニシアティブを支援する必要性に気づいたからです」とソラノ氏はティエラメリカに語った。

サン・マルティンの行政と住民は、最終的に画期的な判決が下されることになる裁判で、先頭に立って戦った。憲法裁判所は2009年、石油発掘が認可されていたEscalera Cordillera Regional Conservation Area(エスカレラ山系自然保護区)を保護する判決を下した。

「命は個人投資よりも優先するのだと国が認めた唯一の判決です」とピナスコ氏は語った。

エスカレラ山系は、30万人以上の人々に水を供給するクンバーサ川、カイナラーチ川、シャヌシー川の上流周域である。

• ° • ° •

本記事はティエラメリカ・ネットワーク系列のラテン・アメリカの複数の新聞に掲載されたものです。ティエラメリカは、国連開発計画、国連環境計画、世界銀行の支援を受けた、IPS(Inter Press Service)による特化ニュース配信サービスです。

Inter Press Service. All rights reserved.

ディスカッションに参加しよう

著者

ミラグロス・サラザール氏は社会および環境問題、特にペルーにおける採鉱、石油、ガス産業に関連した問題を専門的に取材している。また、コカインの違法な生産と売買に関する取材のためにペルー国内の様々な地域を訪れている。サラザール氏は2006年6月にIPSとの提携を始めたほか、リマの日刊紙『ラ・レパブリカ』にも寄稿している。さらに1993年以来、『エスプレソ』や『エル・ペルアーノ』など日刊の全国紙数社で編集者および記者を務めている。1976年リマで生まれたサラザール氏は、国立サンマルコス大学で社会コミュニケーション学の学士号、ローマ教皇庁立ペルー・カトリック大学で人権学の修士号を修得した。さらにジョージ・ワシントン大学(アメリカ)後援のプログラムの一環として、政治的ガバナンスに関する研究を進めている。

ディスカッションに参加しよう

  • Tomoyuki Nakatsuka

    ペルーのサン・マルティンはアマゾン地域で最も森林破壊の進んだ三つの地域のうちの一つである。ここの住民は、政府から生物多様性が豊かな国有地で環境保全活動を行う権利を取得した。これによって、そのコミュニティーの領域に関する法的な安全性を保証し、他者がその土地の権利を取得することを防ぐため、紛争を避けることができるようになった。この地域はまた、アンデス地方からの人の流入、石油や採鉱のプロジェクト、そして気候変動の影響を受けている。しかし過去50年のほとんどの期間、環境保全の責任は国だけが負っていたが、今では人々は団結する必要性を感じており、またすべてを国任せにはできないと認識し、地域住民の力でアマゾンを守ろうとしている。
    国が環境保全をするとなると、やはり限界があり、また地元住民の方が地元について当然政府より詳しいはずである。直接被害を受けるのも恩恵を受けるのも地元住民であり、そこでの生活や命に関わることなので、環境保全への取り組みへの積極性も政府とは異なるだろう。従ってペドロ・ソラノ氏が指摘するように、地元住民による組織が監視するというこのモデルは確かに興味深いアプローチである。また気候変動などによる影響は、一国のレベルでは対処するのは難しく、グローバルなレベルでの対処が必要である。しかし、ただ国連気候変動会議などのグローバルなレベルでの解決や対処を待つだけでなく、ペルーのサン・マルティンの住民のようなローカルなレベルでの活動も同時並行的に行っていくことが大切だろう。
    そして森林保全の話においては、日本は無縁ではない。日本は木材自給率が低く、かなりの割合を輸入に頼っているからである。(平成20年度 森林・林業白書
    http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/20hakusho_h/all/h28.html
    ペルーの話は、地元住民が政府から環境保全権を取得するというものであるが、日本のような木材を大量に輸入している国の市民が、輸入先の環境保全ならびに森林保全に対して、なにかできることはないだろうか。つまり、日本の消費者やNGO団体が、木材の輸入先の地元住民が、環境を保全する権利などを取得できるよう、何か手助けや協力をすることができないだろうかということである。こういった地球の裏側のローカルな市民同士の、グローバルなつながりで、環境破壊に苦しむ人々を助けることができれば、国境なき問題である、環境問題に対処していくことができるのではないだろうか。

  • 渡部健司

    Tomoyuki Nakatsukaさん、貴重なコメントを残して頂き誠にありがとうございます。

    ペルーの話は、地元住民が政府から環境保全権を取得するというものであるが、日本のような木材を大量に輸入している国の市民が、輸入先の環境保全ならびに森林保全に対して、なにかできることはないだろうか。つまり、日本の消費者やNGO団体が、木材の輸入先の地元住民が、環境を保全する権利などを取得できるよう、何か手助けや協力をすることができないだろうかということである。こういった地球の裏側のローカルな市民同士の、グローバルなつながりで、環境破壊に苦しむ人々を助けることができれば、国境なき問題である、環境問題に対処していくことができるのではないだろうか。に関して私見を述べさせて頂きたく思います。

    日本などの木材輸入国が、木材輸出国の環境保全に参画できる取り組みとして国連のREDD (Reducing Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries) イニシアチヴが、気候変動枠組み条約会議において議論の対象となっております。REDDイニシアチヴとは、森林に排出権に基づく金銭的価値を認め、地域住民にその利益を譲渡し、森林伐採を防ぐことを目的としております。

    しかし、REDDイニシアチヴは、多くの問題を抱えています。森林の二酸化炭素を監督、報告、計測確認 (MRV: Monitoring, Reporting and Verification) の不確実性、不十分な規制、違法伐採、詐欺行為の横行、またトップダウンに基づくアプローチ等様々です。

    日本をはじめとする、木材資源輸入国ができること、またその国のNGO団体ができることは、REDDイニシアチヴの実態調査、より正確な監督計測機器の導入、より厳格な規制の実施の推進、また、当該イニシアチヴをよりボトムアップに基づくアプローチにしていくこと。つまり、より地域住民の利益を反映したイニシアチヴに構築していくことであると考えられます。

    本記事は、環境保全を目的とした法的イニシアチヴが、地域住民に委譲されることで有効に機能することを示した大変興味深い記事であると思います。鍵となるのは、本記事にもあります通り、政府や地域住民、また各ステイクホルダーが、環境保全を目的とした法的イニシアチヴの重要性および有効性を認識することであると思います。

    国連REDDイニシアチヴが、途上国の環境保全の具体的な一助と「なれば」、先進国による途上国支援の新たな選択肢となるかもしれません。