エコ・イノベーションを評価する

「将来の市場は環境にある」 ハッサン・ヨルダン王子は、ローマクラブの会長だった2006年にこう宣言した。ローマクラブとは技術革新と自発的行動に焦点を当てた非営利の国際的シンクタンクだ。

王子はこの声明で、主要市場が今後、環境重視型に移行するだろうことを示している。自然資源が希少となり、エネルギーが高騰し、環境の快適性(空間、きれいな空気や水など)を、これまで以上に重視するようになるからだ。

この王子の発言は、ビジネス戦略や政府の政策に広がり始めている考え方を正確に反映している。この「新しい考え方」は、従来講じてきた、費用のかさむ汚染管理手段からの転換を図るものだ。より汚染の少ないプロセスで商品生産を行い、また再利用を通じて資源の循環化を図り、環境保護を促進させたい考えだ。経済的要因が主なモチベーションとなっており、資源、汚染管理、廃棄物管理の費用削減、あるいは販売促進が理由として挙げられる。

企業におけるエコ・イノベーション活動の規模を示す明確なデータは乏しい。しかし、2005年の化学物質市場が9250億ユーロだったのに対し、環境技術市場は、5000億から1兆ユーロに達したと推測されている。ローランド・バーガー・コンサルタント社は、2020年までに世界のエコ・イノベーション市場が2兆2000億ユーロになるだろうと予測している。

資料:ローランド・バーガー戦略コンサルタント社の市場研究、専門家インタビュー (2006年)

資料:ローランド・バーガー戦略コンサルタント社の市場研究、専門家インタビュー (2006年)

より優れた広範なデータ

環境技術に関する既存データには、製造会社の社内効果が含まれておらず、環境に配慮した資源の有効利用や、商品の品質改善が行われているのかは明らかでない。実際、企業におけるエコ・イノベーションに関する知識は低いのが現状で、主な情報源は、環境に配慮した製品やサービスの販売データや、ケーススタディ、単発調査に限られている。企業のエコ・イノベーションへの取り組みとそのマクロ効果、そしてミクロとマクロの関係についての包括的な情報が欠けているのだ。

この情報格差の問題を提示するため、欧州委員会研究総局は、エコ・イノベーションを評価するためのエコ・イノベーション評価(MEI) と ECODRIVEの2プロジェクトを立ち上げた。 MEI研究プロジェクト はオランダのマーストリヒに拠点を置くUNU-MERITの小規模リサーチチームがコーディネートに当たっている。

エコ・イノベーションの定義

我々にとって最大の課題は、幅広い目的ではなく、環境パフォーマンスに焦点を当てた有効な定義を見出すことだったが、最終的に、下記の定義を設定した。

「エコ・イノベーションとは、ある組織に特有な製品の生産、融合、あるいは利用、生産プロセス、サービス、管理、ビジネス方法を示すもので、そのライフサイクル(生産から回収再利用までの過程)において、環境リスク、汚染、または資源利用に付随するその他の負の影響を(エネルギー利用を含む)軽減する効果をもたらすものである。」

従って、エコ・イノベーションには、環境技術の導入以上の意味がある。先進国では、汚染管理技術への投資から、より汚染の少ない生産プロセスをはじめ、再利用システムやリサイクル製品の導入への転換と位置付けられる。後進国では、持続可能な水管理や資源の有効利用が重要な課題となっている。全世界的に、低炭素エネルギーシステムや持続可能な交通手段への移行が必要とされているのだ。

エコ・イノベーション 評価法

我々は、エコ・イノベーション評価のための3方法の有効性を調査している。

これらの方法の中には優れたものもあったが、結果的には、理想的な方法や指標となるものは1つもなかった。エコ・イノベーションの分析には、包括的判断を必要とするため、別の方法を用いるのが賢明であろう。

特に、ドキュメンタリーやデジタル情報源を用いたイノベーション効果の直接評価に取り組むべきだろう。これには、技術投入(R&D費用など)より、直接的効果、あるいは 中間効果(特許許可)を評価できるという利点がある。

またイノベーションは、資源効率と生産性の変化によって間接的にも評価される。これらの2手段は未開発分野であり、エコ・イノベーションに関する乏しい知識を強化するためにも、より一層注目されるべきだろう。

問題は、「なぜ、エコ・イノベーションを評価しなければならないか?」という点だ。答えは明確だ。今後、気候やエネルギー、その他の環境課題の解決に向けて、エコ・イノベーションが、世界的な経済発展の重要要因となるのが確実であるからだ。エコ・イノベーションの重要性が増大し、知識不足が指摘される中、イノベーションの傾向をより効果的に追跡することが重要となってくる。

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エコ・イノベーションを評価する by レネ・ ケンプ is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

レネ・ケンプ
マーストリヒトに拠点を置くUNU-MERITのシニアリサーチフェローであり、ICIS とDRIFTにも研究拠点を持つ。エコ・イノベーションの専門家。ジャン・ロットマン氏と共同開発した遷移管理モデルは、持続的政策モデルとしてオランダ政府に採用された実績を持つ。オランダ研究諮問委員会NWOのエネルギー研究プログラム協同研究委員会プログラムメンバー(2003~)。リサーチポリシー、スプリンガー・ブック・シリーズの「持続性と技術革新」の編集者。RIDE (スウェーデン) 、ARTEC (ドイツ)の科学委員会のメンバー。

エコ・イノベーションが企業の将来に重要であると確信している。この考えは、資源コストや廃棄物処理費用, 環境面での社会需要の高まりに関する経済学に基づいている。エコ・イノベーションには大きなチャンスがある。もし米国の自動車産業が早期にエコ・イノベーションに取り組んでいたならば、ここまで業績が悪化することはなかったであろう。

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