単一栽培の偏重による弊害

私が単一栽培という言葉で意図しているのは、広大な土地で1種類の作物を栽培し、その慣習が土壌や水、土着の動植物、そしてまぎれもなく気候システムに甚だしい悪影響を及ぼすことだけではない。むしろ私が問題にしているのは、大規模農業の象徴たる単一栽培のことである。

私の辞書によると、モノマニア(偏執症)とは、「単一の事柄や考えに極端に執着する」ことを特徴とする深刻な障害だ。米国の農業について言えば、多くの場合、その単一の事柄とは、できるだけ多くのトウモロコシを生産して、投資収益率を最大限に高めることである。トウモロコシ生産モノマニアにとって、経済・環境・社会上の懸念はまったく眼中にないのだ。

モノマニアという言葉そのものはたしかに古めかしいが、今日の社会にその症状ははっきりと表れている。そのようにして、私たちの食料、飼料、それに何よりも無駄な形で燃料を生産するビジネスは推し進められているのだから。

産業型農業は私たちの貴重な淡水資源を圧迫するものだろうか? 賭けてもいいが、そのとおりだアラル海の消滅は他人事ではない。ネイチャー誌に発表された最近の論文によると、「……人間は、農業に不可欠な多くの大規模帯水層から地下水を過剰に摂取しており、それはアジアと北米で特に深刻だ」とある。

窒素を多く含む肥料を大量に投与し、それを流出させることは、世界中で海洋の酸欠地域を生む原因になっているのだろうか? これもまた正しい。この件については、ちょうど問題にしているところで、皮肉な事象が明らかになった。今年度、米国のトウモロコシ生産地帯は深刻な干ばつに見舞われたが、その分、肥料の流出は最小限に抑えられた。すると、メキシコ湾の酸欠地域はこの数年で最小になったのである。

肥料の使用は気候変動を悪化させているだろうか? それもそのとおりだ。化学肥料のせいで、飲料水は危機にさらされているだろうか? これも正しい。ところで、産業型農業の現実を見せつけつつ、その一方で、多様で有効性が証明されていて、かつ生産性も高い持続可能な農業があることについて、はっきりと目を開かせてくれるドキュメンタリー映画がある。その映画、Dirt! The Movie はぜひ観ていただきたい。

猛暑と干ばつといえば、すでにご存知だと思うが、この7月はアラスカを除く米国本土48州で史上最も暑い月だった。

国立気候データセンターの報告によると、「米国本土における7月の平均気温は摂氏25度で、20世紀の平均を約2.5度上回り、7月としては最高に暑く、1895年にさかのぼる記録を見ても、米国で史上最も暑い月になった」とのことだ。

これらはすべて例外的な異常事態だろうか? もう一度考えていただきたい。米国農務省はきっぱりと、気候変動は起きていて、農業に影響を及ぼしていると述べている。 その中には、「気温が上昇すると不作のリスクが高まり、それは特に降雨量が減ったり、不安定になったりすると著しくなる」ことも含まれている。

トウモロコシ、猛暑、干ばつについては最近、ニューヨークタイムズ紙の署名入り記事できわめて良識的なものが2つあった。1つめは、「燃料ではなく、食料のためのトウモロコシ」という記事だ。それによると、真剣に考えなければならない事実として、米国で生産されているトウモロコシの40%はエタノールの原料用である。おかしなことに、エタノールの混合使用は法律で義務づけられているのだ。それは、海外の石油への依存度を低くするためである。しかし、エタノールの混合により、大気汚染は悪化、エンジン効率は低下し、気候変動には拍車がかかり、エンジンは傷み、他の食用作物の栽培はできなくなり、穀物の価格は不当に上昇している。

常に素晴らしい記事を発表しているCSM(The Christian Science Center:クリスチャンサイエンスセンター)は先日、「食料価格について今、世界中で警鐘が鳴らされている」との報告を掲載した。この映画は以前、見たことがある。4年以上前に私たちは、バイオ燃料の生産が食料価格を急速に押し上げると警告されているのである。

ポール・クルーグマン氏や、米国でも十指に数えられる環境学者を含むその他の人々も、「エタノール政策は愚かだ」と述べている。雄弁で含蓄のある言葉を繰り出すクルーグマン氏は自身のコラムで次のように書いている。「……バイオ燃料生産のために使用される農地は食料の生産には用いられない。つまり、バイオ燃料への助成金は食料危機の主要な要因になっている。あるいは、こう言ってもいい。アフリカで飢餓に苦しむ人たちがいるのは、米国の政治家が農業州で票を獲得しようとしているからだ」

だが驚くことに、トウモロコシの生産を行っていない州出身の一部の政治家が、エタノールの使用義務を引き下げるように環境保護庁に要請した。それが実現すれば、今年度、大打撃を受けたトウモロコシでも、残った中から食料に回せる量が多くなり、価格上昇の懸念は緩和される。

この方策は単純で合理的、かつ賢明だが、それ以外にも、トウモロコシの単一栽培依存を抑制するために、私たちにはさらにできることも、やるべきこともある。ニューヨークタイムズに掲載されたもう1つの優れた署名入り記事は「干ばつの中の希望の光」というもので、著者は私たちにその他のさまざまなやり方を変えるように求めている。その中に含まれるのは、助成金を削減すること(第一にやらなければならない最重要課題)、米国の農業の多様性を復活させること、さらには「食料システムを少数の巨大生産者と多数の輸入業者に委ねるのではなく、より多くの、分散した生産者が担うように移行を図ること」などだ。

私にはさらに付け加えたいことがいくつかある。それは、トウモロコシを飼料に使うのを減らすこと、言いかえれば、大幅に肉の消費を減らすこと、さらには実質的にすべての加工食品において高果糖コーンシロップを甘味料として使用するのをやめることだ。米国では肥満が蔓延している。私たちは何を食べるかを一から考え直す必要がある。

食料と農業の問題について、そして、人間の適切な栄養摂取(大規模農業を手がける企業の利益ではなく)を第一に考えて、持続可能な方法で何をどのように行うべきかについては、ミネソタ大学環境研究所の研究結果を参照していただきたい。私は昨年、その研究所が発表した資料をもとにこの記事を書いた

皆さんに言っていることだが、私はこれまで、60年の人生において41年間は菜食主義者を通し、きわめて健康だ。難しいことではない。実に簡単である。どんな時でも、食料や農業の情報に耳を傾けていただきたい。自分の健康だけの問題ではない。地球と宇宙船地球号の将来が関わっている。ピカード船長ならこう言うだろう。「そうしたまえ」

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この記事は2012年8月14日、A Newer Worldに発表されたものを、著者のご厚意により転載させていただいています。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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単一栽培の偏重による弊害 by ビル・ヒューイット is licensed under a Creative Commons Attribution-NoDerivs 3.0 Unported License.

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著者

ビル・ヒューイット氏は、25年以上にわたり環境問題の専門家として活動を続けている。作家であると同時に、ニューヨーク大学Center for Global Affairs(国際問題センター)の大学院課程および成人教育課程においてエネルギーと環境、気候変動、浄化技術を教えている。著書「A Newer World – Politics, Money, Technology, and What’s Really Being Done to Solve the Climate Crisis(より新しい世界—政治、資金、技術、そして気候危機を解決するために本当に行われていること)」が2012年秋の後半にニューイングランド大学出版局から刊行予定である。

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