ポスト・ピークオイルに 対応する新OS


石油依存社会がピークを迎えた後の世界を想像してみてほしい。我々は石油不足問題を放置し、しかるべき準備をしてこなかった。国際社会レベルにおいてはなおさらである。石油資源が枯渇しつつある現状に効果的に対応するため、国際機関の再構築が急務となっている。

これは容易なことではない。国際間の協調姿勢を保ち、保護主義や資源戦争、世界経済の崩壊を回避することが不可欠である。

我々にそれが出来るだろうか?

答えはイエスだ。この記事はグローバルダッシュボードでのアレックス・エバンス氏とデイビッド・スティーブン氏の 2009年3月に彼らが発表した研究論文「An Institutional Architecture for Climate Change」(気候変動に対応するための組織構造)に影響を得て執筆したものである。

両氏は国際関係をコンピューターに喩え、「国際改革のあらゆる側面を統合する大規模な仕組みを持ち、主導権を取るのではなく、共通原理と長期計画の合意に基づいた取り組みを行う」新しいOSの開発を呼びかけている。

新しいOSの構想は、ピークオイル後に正しく機能すると思われ、「Our World 2.0」の背景にある考え方と同じ物である。今や、地球エネルギーを支持する現行のOSをアップグレードする必要があるのだ。

現在のOSとは?

現在、石油を含むすべてのエネルギーの国際取引は、消費者側の国際エネルギー機関(IEA)と生産者側の石油輸出国機構(OPEC)がとりまとめている。二大エネルギー国際機関だ。

IEAは28加盟国アイスランド及びメキシコを除く経済協力開発機構(OECD)の加盟国]へのエネルギー政策顧問だとしている。加盟国は一様に富裕国だが、多くの主要経済大国や、ブラジル、ロシア、インド、中国など急成長を遂げる開発途上国は含まれていない。IEAはこれらの非加盟国やOPEC加盟国との連帯、或いは働きかけを図っている。

一方、石油生産政策をまとめ、石油・天然ガス産出国に妥当な投資利益率をもたらすため、OPECはイラン、イラク、サウジアラビア、ベネズエラ、ナイジェリアを含む12の中東・アフリカ・南米諸国が顔をそろえる。ここでもまた、ロシアやメキシコなど多くの主要産油国がOPECに加盟していない。

面白いことに、多くの国連部局がエネルギー関連の活動を行っているのにもかかわらず(詳細はウェブサイト「UN-Energy」ご参照)、エネルギー問題に対する国連の権限は限られている。国際原子力機関(IAEA)は唯一の例外なのだ。

小さいが他にもいくつかの新たな国際機関がある。近年発足した国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、2009年6月現在110カ国が加盟しており重要な国際機関と言える。この機関の狙いは、再生可能エネルギーの広範囲かつ持続的利用を地球規模で推進していくことだ。

OSアップグレードの方法は?

ピークオイルに達したことに世界中が合意するころには(それはピークオイル時から5年後、或いはそれ以上後のことになる)、世界はまた、現在のエネルギー組織体系がIEAとOPECのポーカーゲームだということにも気付くかもしれない。それは、加盟国の国家主権と安全保障の確保が最優先されていることから見ても明らかだ。

「超燃料」なるものが発見されるか、再生可能エネルギーへの飛躍的移行がなければ、人類はいつか地球資源の枯渇に直面することになるだろう。それゆえに、新たな制度的枠組み(新しいOS)が望まれるのだ。

幸いこのことについて考えてきた人たちがいる。ここでは二つの事例を紹介したい。

エネルギーアナリストのアンドリュー・マキロップ氏は著書「Final Energy Crisis」(最後のエネルギー危機)中で、世界レベルのエネルギー移行について述べ、3つの新たな国際機関の設立を提唱した。

*International Energy Transition Agency(国際エネルギー移行機関):国連気候変動枠組み会議や、エバンス氏とスティーブン氏が提唱するInternational Climate Control Committee(国際気候変動対策委員会)に似た国連の一機関。両氏の言葉を借りるなら、エネルギー移行に関して「各国の実績を報告するしっかりした監視委任」機関だ。

*International Energy Fund(国際エネルギー基金):国際通貨基金(IMF)を手本にした機関で、世界中の再生可能エネルギー源に対する資金提供を行い(これは、前述のIRENAがただの技術機関でなければ担うことができたはずだ)、OECD加盟国の石油・天然ガス依存を軽減させるための経済構造改革を支援する。

*International Oil and Gas Agency(国際石油・天然ガス機関):IEAをモデルにしているが、消費国、生産国の双方が加盟し、「石油及び天然ガスの供給量と価格を90日前に決定し割り当てる」国際機関。

最後のInternational Oil and Gas Agency(国際石油・天然ガス機関)は、2003年にピークオイルの専門家であるコリン・キャンベル氏とシェル・アレクレット氏が発表した提案と密接に関連している。両氏は著書「Oil Depletion Protocol」(石油減耗議定書)の中でこう述べている。ピークオイルを迎えた際、石油不足による不当利得行為を防ぎ、貧しい国々に輸入の機会を与え、法外な石油価格から生じる不安定な資金流通を回避するために、国際間の合意は必須であると。(2008年に起きた石油価格高騰は好例 )

「Oil Depletion Protocol(石油減耗議定書)」は次のように定めている:

「Oil Depletion Protocol(石油減耗議定書)」は非常に短く、一読に値する。この議定書は「Rimini Protocol(リミニ議定書案)」、「Uppsala Protocol(ウプサラ議定書案)」という名前でも知られている。

不可能だ!


あなたはさまざまな理由から「そんなことは不可能だ!」と考えているかもしれない。そもそも、ピークオイルはただの理論に過ぎないとお考えかもしれない。そう言われる方は自身で調べてみてはどうだろうか。

次に、万が一石油不足に直面しても心配する事はない。我々が今までそうしてきたように、代替エネルギー源をみつければいいだけだ、と思われる方もいるだろう。木材に代わる石炭、石炭に代わる石油をみつけてきたように、石油に代わる何かをみつけるのは難しくないはずだと。これに関してもぜひ調べていただきたい。

さらに、ピークオイルやエネルギー不足の懸念について十分に理解した方の中にも、新たな国際機関の設立や、特に石油価格を規制することなどには確信が持てない方もいるだろう。現実的でないと。サウジアラビアやロシアなどの産油国が同意するものかと。そう言われる方に伺いたい。他に方法はありますか?

これらすべての必要性を認識していても、世界各国が迅速に協議できるとは思えない方もいるだろう。例えば京都議定書は交渉に5年を要し、詳細を決定するまでにはさらに4年以上を費やした。事実である。しかし、対応を怠ったことにより緊急を要する危機的事態がすぐそこまで差し迫ったら、世界はどうするだろう?

エネルギー政策のための新たなOS設計に関して、さまざまな見解があるという点がここでは重要である。例えば、太陽エネルギーや風力エネルギーを生産可能地域から集め、そうでない地域と共同使用するというような、再生可能エネルギーの大規模な仕組みを設計し実現化するためには、より一層の広域的連携が不可欠なのだ。

エネルギー不足問題や気候変動の課題を放置することは、事前に組織構造を再設計し世界各国に(困難ではあるが)協調を働きかけることよりもずっと恐ろしいことだと思われる。最善の結果を期待するとしても、最悪の事態に備えることが常に賢明なのだ。

あなたはどう思われますか?

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著者

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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