石油の推定埋蔵量、水増しか?

石油は公式見解より大幅に早い時期に底を突く。パニックを煽り人々が買占めに走ることを恐れ、国際エネルギー機関(IEA)は故意に切迫する石油不足の事態を控えめに見せかけてきた。これはIEA内部からの告発だ。

幹部職員によると、既存油田における生産率の低下は小幅に見せる一方、新たな油田発見の可能性は誇張するよう監視機関を仕向ける上で、アメリカの影響力は大きかったという。多くの政府機関がエネルギーと気候変動に関する多様な政策を立案する上でIEAの世界エネルギーアウトルックを指針として参照しているが、この疑惑はこのアウトルックの最新版に掲載された石油の需要と供給に関する内容の正確さに重大な問題を投げかける。

特に疑問がもたれるのは、現在1日当たり8,300万バレルである石油生産量が10,500万バレルまで増産可能であるという前回の世界経済アウトルックが示す予測で、これは今年度版でも繰り返し引用されたと考えられている。この生産予測に対し外部の評論家は、確かな証拠をもって立証できるはずがないとの議論を重ね、世界はすでにピークオイルを超えてしまっているとも述べている。

認められつつあるピークオイル論

今日では、世界のエネルギー機関の心臓部でも「ピークオイル論」に同調している。

「IEAは2005年時点の予測で、2030年までに1日当たり12,000万バレルの石油供給量が可能になると推定した。11,600万バレル、そして昨年には10,500万バレルと数字の段階的な引き下げを余儀なくされたにも関わらず」とIEAの情報筋は業界内部での報復を恐れ、身元は明かさずに語った。「12,000万バレルという数字自体すでに馬鹿げている。それ以上に、現在予測される生産量は正当化するには程遠い数字であることをIEAは承知しているのだ」

また、「IEA職員の多くが、1日当たり9,000から9,500万バレルという石油供給レベルを維持することでさえ不可能であると考えているが、数字がさらに引き下げられれば金融市場に混乱が広がるのではという懸念もある。そしてアメリカも石油資源を手にする自らの支配力を脅かす石油至上主義の終焉を恐れている」と付け加えた。

IEA内部では、「アメリカを怒らせないこと」が絶対的な決まりごとであったが、実際は世界に残された石油は告示されていた程残っていなかったのだ、と別のIEA元幹部も匿名で語った。さらに「我々はすでに『ピークオイル』ゾーンに突入した。事態は相当深刻だ」と加えた。

IEAデータの重要性

「IEAは政策とビジネスプラン策定の土台となる確実な情報を提供します。世界中の政府機関と産業界が世界エネルギーアウトルックに信頼を寄せています」と自らのウェブサイトで誇らしげに説明する通り、IEAは自組織のデータの重要性を認識している。特にイギリス政府は自らが有する情報よりむしろIEAの統計を常に利用し、長期的石油供給に脅威をもたらすものはほとんどないと主張している。

IEAは今夜、ピークオイル論者はこれまでに何度もIEAデータの精度に対して不当な疑念を抱いてきたと発表。広報担当は、2009年度版報告書のリリースを控えており、コメントを述べることはできないと語った。

新事実の発覚に対し、ピークオイルとガスに関する超党派議会議長を務めるジョン・ヘミング英下院議員は、世界が石油不足に直面する事態の速さをIEAがあえて過小評価していた、という自らの疑念を立証するもので、イギリス政府のエネルギー政策に対して甚大な影響を与えるものであると述べた。

ヘミング議員もまた、予測データを自主的に疑問視しようとしないIEAの態度に不満を持つIEA職員数名からコンタクトがあったことを明らかにした。そして「IEAの報告書に対する依存は、石油とガスの供給が2030年まではピークに達しないという主張を正当化するためであったが、もはや通用しない。IEAのデータを信頼することはできない」と語った。

そして、「このような事態はコペンハーゲンでの気候変動に関する協議に重要性を与え、もしイギリスが深刻な経済的混乱を避けるつもりであるならば、持続可能(低炭素)経済の実現に向けより迅速に行動する必要性を考えさせられるものだ」と加えた。

疑問視される予測データ

IEAは石油危機の後1974年に欧米諸国へのエネルギー供給のセーフガードを目的として設立された。世界エネルギーアウトルックはIEAファティ・バイロル主席エコノミストの管理下で毎年発行されている。ピークオイル論者はIEAのデータに度々疑問を投げかけてきが、バイロル氏はそのような外部からの攻撃に対し、データを弁護する立場をとった。

しかしガーディアン紙に接触してきたIEAの情報筋によると、このところバイロル氏はIEA内部でもデータの整合性に関する問題に直面する機会が増えてきているという。石油業界のエキスパートとして一目置かれるマット・シモンズ氏はサウジアラビアが提供する自国の油田に関する生産量の減少率と石油統計に対して長い間疑問を抱き、ピークオイルは一般的に考えられている時期よりも間近にせまっているのではないか、と問題提起した。

UK Energy Research Centre (英国エネルギー研究センター, UKERC)が発行した先月の報告書は、従来の採掘技術に基づく世界の石油生産量は2020年よりも前に「ピーク」期を迎え、末期的減退に転じるが、政府は危機に立ち向かおうとはしていなかった、と伝える。報告書の主たる著者であるスティーブ・ソレル氏は、2030年まで石油生産はピークに達しない、という見通しについて、「良くも悪くも楽観的で信じがたいとしか言いようがない」と述べた。

しかし、2004年にはすで同様の警鐘を鳴らす人々が存在した。フランスの総合石油エネルギー企業トタル社元幹部であるコリン・キャンベル氏は、会談でこのように語った、「もしも『石油埋蔵量』の真実のデータが明らかになれば株式市場はパニックに陥る。そうなれば結局のところ、誰もが不都合を被るのだ」

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この記事は2009年11月9日(月)グリニッジ標準時21:30にguardian.co.ukに掲載された。

翻訳:浜井華子

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