脊椎動物の 5分の1が 絶滅の危機に

つい先ごろ発表された画期的な研究によると、世界の脊椎動物のうち、およそ5分の1は絶滅の危機に瀕しており、毎週1種の割合で絶滅危ぐ種リストに追加されているという。

「Evolution Lost」(失われた進化)という報告書は、世界でトップレベルの動物学者や植物学者ら100人以上によってサイエンス誌に発表される予定だ。同報告書によれば、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類の個体数は、過去40年間で平均30%減少したことが分かった。

種の喪失には、森林伐採、農地の転用、乱開発、人口増加、汚染、侵襲的な外来種の影響など複合的な要因が考えられる。

絶滅が最も多く見られたのは東南アジアだった。この地域は狩猟やダム建設、そして森林をパーム油のプランテーションや水田に転換する開発が劇的に進んだ。しかしオーストラリアやアンデス山脈でも、種の喪失は顕著だった。

2. 1996年~2008年の間に、クロアシイタチ(Mustela nigripes)は野生絶滅種から絶滅危惧IB類に降格した。写真:ⓒウェンディ・シャティル&ボブ・ロジンスキー

2. 1996年~2008年の間に、クロアシイタチ(Mustela nigripes)は野生絶滅種から絶滅危惧IB類に降格した。写真:ⓒウェンディ・シャティル&ボブ・ロジンスキー

この研究は、絶滅のおそれがある種を集めた国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト」に掲載された2万5000種の脊椎動物の現状を分析したもので、その個体数を見ると、陸生の哺乳類では4分の1、海洋性魚類では5分の1、淡水性魚類では約3分の2が減少したと推測されている。

“今後10年間における生物多様性の取り組みに努力を傾けるための戦略的な行動計画を、私たちが名古屋で何が何でも策定しなくてはならないのはなぜか。その明確な裏付けがこの研究なのです。”

ジュリア・マートン=ルフェーブル IUCN事務局長

「生物多様性のバックボーンが侵されつつあるのです」と語ったのは、経験豊かなアメリカの生態学者であり作家のエドワード・O・ウィルソン教授だ。「レッドリストの分類上でたった1段階、昇格するだけでも、絶滅に向かって大きく前進したことになります。今回の結果は、世界中で起こりつつある種の喪失のほんの一部を表わしているにすぎません」

この報告書が発表されたのは、名古屋での重要な会議、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の開催中だった。COP10の狙いは、地球上の植物種や動物種の喪失を食い止めるために、新たに国際的な行動計画を策定することにある。

現行の保全戦略は野生生物や生態系の衰退を好転させるにいたらなかったが、もし自然保護区が制定されず、繁殖プログラムや保護計画も実施されなければ、状況はさらに悪化するだろうと報告書の筆者たちは言う。

そういった保全対策のおかげで、すでに64種は絶滅を免れることができた。その中には、アメリカのカリフォルニアコンドルやクロアシイタチ、モンゴルのモウコノウマなどのように、野生では絶滅したものの、野生復帰された数種が含まれている。

1. キハンシヒキガエル(Nectophrynoides asperginis)は現在、野生絶滅種に分類されているが、保護活動のおかげで自然の生息地に間もなく再導入される予定だ。写真:ⓒティモシー・ハーマン

1. キハンシヒキガエル(Nectophrynoides asperginis)は現在、野生絶滅種に分類されているが、保護活動のおかげで自然の生息地に間もなく再導入される予定だ。写真:ⓒティモシー・ハーマン

“もし自然保護区が制定されず、繁殖プログラムや保護計画も実施されなければ、状況はさらに悪化するだろうと報告書の筆者たちは言う。”

この研究では、保全対策がなかった場合、今より20%多い種がレッドリスト上でより上位に分類されただろうと推測している。例えばニュージーランドの固有種であるクロセイタカシギという渉禽(浅い水中を渡り歩いてエサをとる脚の長い鳥)などだ。また、シロサイとザトウクジラは、長年の保全対策のおかげで「集中治療病棟」から脱することができた。

しかし野生生物にのしかかるプレッシャーは、保全活動が与える支援よりも大きい。種や生息地の維持に関する国連の2010年目標は、1つも達成されなかった。

IUCNのジュリア・マートン=ルフェーブル事務局長はCOP10の交渉人たちに、生物多様性を守るために力を合わせてほしいと要求した。「今後10年間における生物多様性の取り組みに努力を傾けるための戦略的な行動計画を、私たちが名古屋で何が何でも策定しなくてはならないのはなぜか。その明確な裏付けがこの研究なのです」と彼女は言った。「保全活動には確かに効果があります。しかし活動には私たちの支援が必要であり、しかも早急な支援が必要なのです」

多くの種が危険な状況に置かれているが、最も危機が迫っている生物は最古の種子植物かもしれない。ソテツ類のうち3分の2が、違法な栽培と取引によって危機的な状況に置かれている。もし現在の傾向が続くなら、ソテツ類は恐竜と同じ末路をたどるだろうと報告書の筆者たちは言う。

5. モウコノウマ(Equus ferus przewalskii)は、1996年~2008年の間に野生絶滅種から絶滅危惧IA類に降格した。写真:ⓒデイヴィッド・ブランク

5. モウコノウマ(Equus ferus przewalskii)は、1996年~2008年の間に野生絶滅種から絶滅危惧IA類に降格した。写真:ⓒデイヴィッド・ブランク

“科学者たちは、絶滅の危険がある主要な動物だけに注目することに対して警告を促した。なぜなら、例えば食物連鎖で重要な役割を担うハチや魚のように、かつてはどこにでもいた種の方が、より広い範囲で近い将来、喪失されかねない現状があるからだ。”

キュー王立植物園によって行なわれた別の研究では、植物種のうち主に熱帯地域に分布する5分の1強の種が絶滅の危機にあると示唆された。その原因は人為的な影響による分布地の減少だが、絶滅危険性の程度はまだ明らかではない。

中国の優れた植物学者の1人であるマ・ケピン氏は、アジア広域の植物に関する最初の研究を発表する際、研究対象地に繁殖する10万種以上の高等植物種の多くが急速な経済成長や人口増加、汚染、貧困による切迫した影響下にあると言った。

4. 1994年~2000年の間に、トキ(Nipponia nippon)は絶滅危惧IA類から絶滅危惧IB類に降格した。写真:ⓒマイク・エンドレス/Little Wing Photo

4. 1994年~2000年の間に、トキ(Nipponia nippon)は絶滅危惧IA類から絶滅危惧IB類に降格した。写真:ⓒマイク・エンドレス/Little Wing Photo

科学者たちは、絶滅の危険がある主要な動物だけに注目することに対して警告を促した。なぜなら、例えば食物連鎖で重要な役割を担うハチや魚のように、かつてはどこにでもいた種の方が、より広い範囲で近い将来、喪失されかねない現状があるからだ。

「将来の絶滅リスクは高いと予想されています。しかし生物多様性の危機は絶滅だけの問題ではないのです」とエンリケ・ミゲル・ペレイラ氏は語った。彼はDiversitas(生物多様性科学国際共同研究計画)や国際連合環境計画、その他のグループの要請を受け、最近の世界的な環境アセスメントを分析した人物だ。

「21世紀の生物多様性に起こることは、世界的な絶滅という現象ではなく、種の豊かさとコミュニティーの構成に生じる大きな変化なのです」とペレイラ氏は語った。

彼の論文の共著者でフランスのパリ第11大学のポール・リードレー氏は、現在の傾向を劇的に変えなければならないと言う。「旧態依然の開発を続ければ、生物多様性の壊滅的な損失につながることは間違いありません。今世紀を楽観的に分析したシナリオでさえ、多くの種の絶滅と個体数の減少を一貫して予測しています」

国連の支援によるThe Economics of Ecosystems and Biodiversity(生態系と生物多様性の経済学)と呼ばれる研究では、自然を失う代償は年間で2兆~5兆ドルと推計されており、その地域は世界でも貧しい地域に集中しているという。

この記事は2010年10月26日火曜日、英国標準時23時30分に guardian.co.ukに掲載されたものです。

翻訳:髙﨑文子

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