4周年を迎えるOur World 2.0

私たちが2008年にOur World 2.0を立ち上げた時、目標はこのウェブマガジンを2015年まで続けることだった。なぜ2015年なのか?

それには3つの理由がある。1つめは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって大筋が示されていたように、地球規模の気温の上昇を2度に抑えるためには、温室効果ガスの排出を2015年までに減少傾向に転じさせることが必須だったからだ。

2つめは、ピークオイルの専門家が、従来の石油の生産量は2015年までにピークを迎えると予測していたからである。

そして3つめは、Our World 2.0を立ち上げた2008年が、2015年を達成期限とする国連ミレニアム開発目標 (MDG)の中間点にあたっていたからだ。MDGに向けては、進展はしていたが、環境の改善という点では明らかに遅れていて、目標の達成は危うかった。持続可能なエネルギーの技術が発達しても、温室効果ガス排出量の増加に太刀打ちできるほどではなかった。また、再生可能エネルギー(風力、太陽光、地熱など)への投資が堅調に伸びても、これらの持続可能なエネルギーは所詮、総エネルギー消費量の0.5%しか生み出していなかった

ウェブマガジンを立ち上げるにあたって私たちが考えていたことは、こうした問題への認識を高め、これらの地球規模の環境課題の解決方法に興味がある人たちのコミュニティを築いていくことだった。意識が高い人たちが十分にいれば、化石燃料に頼らない低炭素社会へ移行するための勢いをつけられると思ったのである。

私たちはまた、よく陥りがちなことだが、地球上で起こっている問題を逐一、気候変動あるいはピークオイルのせいにしたくはなかった。私たちは食料安全保障や生物多様性などのテーマも加えて、問題と解決策が相互に関連していることを示そうとした。

私たちはさらに他のトピックも加えることができたし、おそらくはそうすべきなのだろう(今後はそうするかもしれない)。しかし、多くの読者の皆さんからは、私たちが特定のテーマに焦点を合わせながら、同時にさまざまな問題との関連性に気づかせてくれるという評価をいただいている。この世界で起こっている事象をより包括的に見ることは、まさに必要とされているだ。なぜなら、ある問題に対する解決策が他の問題の原因になりうるからだ。それは例えば、私たちがバイオ燃料の急増が食料価格の高騰につながっている事例で示した通りである。

Our World 2.0で発表した記事は、こうした問題に目を向け、解決方法につながるアイデアを共有するものだ。過去4年間にわたり、Our World 2.0のウェブマガジンを1週間に3本、英語と日本語で発表し続けるのは、私たちのような小さなチームにとっては容易なことではなかった。しかし、これまで何とかして500本以上の記事を100万人以上の人々に届け、読者の皆さんと何千回にも及ぶやりとりができたことについては、本当に嬉しく思う。

コミュニティの重要性

2008年を振り返ると、ソーシャルメディアとは何かについても、オンラインでコミュニティを構築する方法についても、私たちはまったくの新しい経験だった。このOur World 2.0で、国際連合大学は初めてそのような新しいツールを用いて、多くの人との交流を試みたのだ。私たちのチームには有能なウェブデザイナー、ビデオプロデューサー、ライター、エディター、リサーチャーが揃っているが、FacebookやTwitter、YouTube、その他、これから中心になりそうなものについては経験を持っていなかった。私たちは実際にやりながら覚えていかなければならなかった。

私たちは初めてのツイート、初めてのフォロワー、初めてのFacebookへの投稿、初めてYouTubeに載せたビデオ、初めて記事に対してもらったコメントを覚えている。ソーシャルメディアを介したOur World 2.0コミュニティとの関わりという点では、私たちはまだ学習を続けているところだが、世界中に合計1万人近い、つまり小さな町の人口に匹敵するほどのフォロワーや友達がいるのは喜ばしいことである。しかし、もっと重要なこととして、1万人ほどのOur World 2.0コミュニティのメンバーは私たちにとって本当にありがたい存在であり、その多くは、「ツイート」を読んだり、Facebookの「いいね」を見ることで、名前を知ることもできるのだ。

私たちはもちろん、このコミュニティをもっと大きな町(Facebookで17万3千人の友達がいるツリーハガーのように)や大きな都市(46万人の友達がいるガーディアンのように)にしていきたいと思っている。そこに到達するには、競争が激しく、明らかにリソースが制約されている環境において、コンテンツの拡充を図っていく必要がある。その理由の1つとして、私たちはガーディアン環境ネットワークに熱心に参加している。それにより、私たちは環境や持続可能性の問題に関心の高い読者や著者、論者が集う、より大きなコミュニティとコンテンツを共有することができる。

私たちは当初から、オープンなやりとりに根差したオンラインコミュニティの構築に熱心に取り組んできた。知識が自由に共有され、議論が奨励されてこそ、持続可能な解決策が豊かに生まれる。4年間を経ても、Our World 2.0はできるだけクリエイティブコモンズのライセンスの下で記事を発表するようにしている。

社内のチームが製作しているOur World 2.0のビデオは、このオンラインマガジンにおいて常にきわめて重要で、また魅力に富んだ部分でもある。読者の皆さんにも高く評価していただいている。YouTubeでの視聴回数が360万回を超えたのは喜ばしい。

視聴回数の半分以上が、「プラスチックが油に変身?」のもので、他のYouTubeのチャネルにもコピーされている。私たちが製作した中で、「バイラル」(主に口コミで一気に広まった動画)になったのはこの作品だけである(YouTubeでは視聴回数が100万を超えたビデオを「バイラル」と見なしている)。その理由は、解決方法に基づく積極的なストーリーであったこと、それにまさによくできた作品だったことにある。このビデオはFacebookで2,000人が「いいね」と言い、付随するOur World 2.0の記事は423回リツイートされ、Facebookで「いいね」と言った人は7,500人に上った。

すべての記事やビデオが同じように注目を浴びればいいのにと思うこともあるが、それがおそらくウェブやソーシャルメディアの難しいところであり、カギはオンラインコミュニケーションの成功の秘訣を理解することなのだろう(私たちはまだ模索しているところだ)。だが、別の見方をすれば、上に挙げた数字は十分に成功を示唆している。ビデオを見たり、記事を読んだりしてくれた人たちは、これまでピークオイルのことなど聞いたことがなかったかもしれない。気候変動に懐疑的だった人が関心を示してくれたのかもしれない。あるいは生物多様性の喪失のことを初めて耳にした人かもしれない。食料安全保障の問題の一端は気にしていても、エネルギーや気候、生物多様性との関連は考えていなかった人かもしれない。

何よりも、Our World 2.0をフォローし、記事を読み、コメントを書いたり、「いいね」と言ったり、そして最も貴重なこととして、共有したりするのに時間を取ってくださっている皆さんに感謝の意を表したい。また、Our World 2.0とコンテンツを共有してくださっているパートナーの各機関(ガーディアン、ドイチェ・ヴェレ・グローバル・アイデアズ、NHK、ブリティッシュ・カウンシル、インタープレスサービス)および私たちの記事を取り上げ、それぞれのネットワークを通じて意見を広めてくださっている皆さんにも感謝したい。

状況について

全体として、4年間が過ぎるのは早かった。ごく最近、リオ+20が閉幕した。代表団は全員、母国に戻った。国連の潘基文事務総長は警告として「……これらの行動が実行されなければ、これ(結果報告)はただの紙切れだ」と述べた。

サミットの準備期間においては多くの報告書や評価表が発表され、この世界を持続可能な将来に転換させるのに、私たちの努力は十分でないことが示された。たとえば、1990年、私たちは227億トンの二酸化炭素を大気中に放出しているが、2012年までにその量は330億トンに増加した。両生類の約30%、鳥類の約21%、哺乳類の約25%は絶滅の危機にある。

ピークオイル・ガス研究協会(APSO)の最近の講演で、エネルギー担当官および業界専門家からピークオイルに関するコメンテーターに転じたロバート・ハーシュ氏は、従来の石油生産は今後1年から4年の間に減少し、経済に大きな影響を及ぼすだろうと述べている。しかし、 ハーバード大学から出版されたレオナルド・マウゲーリ氏の最新のレポートは逆の内容を示しており、それによると、技術の躍進と新たな投資で石油の生産は2020年までに1日1億1千万バレルに増加し、私たちは新たな石油ブームを迎えるということだ。 ピークオイル論議の歴史においては、過度な楽観論と過度な悲観論が入り混じっている。しかし、明らかなことは、遅かれ早かれ、これらの予想は収斂されていくということだ。

同時に、驚くほど良いこともいくつか起こっている。その中には再生可能エネルギーへの投資が最近、急激に伸びたこと、街中を走る電気自動車の台数が次第に増えてきていることなどが含まれている。4年前、電気自動車は自動車ショーの試作品でしかお目にかかれないとジョークを飛ばしたものだ。しかし今では、皆さんが次に買う車も電気自動車かもしれない。

他に良いニュースとして、「トランジション」の動きが素晴らしい盛り上がりをみせていることがある。毎年、数百ものコミュニティが新たにエネルギー、気候、食料などの問題に取り組み、地域になじみながらも、真の幸福と持続可能性に焦点を合わせた新しい経済モデルの模索を続けている。

私たちの世界のオペレーティングシステムをバージョン2.0にアップグレードする必要があることは、火を見るより明らかだ。私たちは地球に与えられたものを開発、使用する方法を変え、その経験を蓄積していかなければならない。この4年間に発表してきた多くの記事で明らかにしたように、トランジションはすでに進んでいる。これから先の4年間では、さらに多くの劇的な変化があるに違いない。

しかし、おそらく、私たちの課題については、同じASPO会議における、次のようなネイト・ハーゲンス氏の説明が最も的を射ているだろう。

「声を上げる時は終わりました。今は未来を形作っていかなければなりません。他の組織、気候関係の人々、持続可能性に関わる人々と力を合わせる必要があると思います。高い志とリソースを持つ、実にたくさんの優秀な人々が、より良い未来を築こうと努力しています……。しかし、自分たちだけのささやかなプロジェクトを追っている人たちがあまりにも多すぎます。そういったものを体系的に結びつける必要があります。私たちは分野を越えて、共に成果を上げることが必要なのです」

ある意味ではリオ+20はそれを目指していた。そのサミットの目標は、「The Future we want」の定義を進めることだった。しかし、1回の会議や1つのウェブサイトで達成できるものではない。私たちに必要なトランジションは、その程度の規模ではないのだ。

何より重要なことは、私たちが自らの目の前でそれを広げて(ばらばらにほどくのではなくて)見ることだ。これからもこうして記念日が迎えられるように、どうかOur Worldをご支援いただきたい。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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4周年を迎えるOur World 2.0 by ダニエル・パウエル and ブレンダン・バレット is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

ダニエル・パウエルは国連大学メディアセンターのエディター兼ライターであり、Our World 2.0担当エディターに名を連ねている。東京の国連大学に加わる前は8年間、東南アジアを拠点に過ごし、農業、生物多様性、水、市民社会、移住など、幅広いトピックを網羅する開発・研究プロジェクトに携わっていた。最近では、USAID(米国国際開発庁)がカンボジア、ラオス、ベトナムの田園地帯で行った水と衛生に関するプログラムにおいて、コミュニケーション・マネジャーを務めた。アジアで活動する前は、米国林野局に生物学者として勤務、森林の菌類学および地衣学の研究を行っていた。

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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