オックスファムが食料システムの再考を訴える

国際的な支援団体オックスファムは、世界の食料供給の厳しい状況を説明する飢餓に関する報告書を発表し、約10億人を飢餓に陥れた「壊れた」食料システムを再構築すべきだと訴えている。

6月1日、オックスファムはGROWと呼ばれる世界規模のキャンペーンを開始した。このキャンペーンの目的は、食料助成金に関する政策の変更、持続可能な農業の促進、食料国際市場への投機に関する規制の強化に向けて、世界のリーダーたちに働きかけることだ。さらに富裕諸国の消費者に、自分の行動が貧しい人々や環境に与える影響について認識させることを目指す。

反省の時

「私たちのゴールは、世界の食料システムを根本的に変えることです。私たちが食料を利用したり共有したり消費したりする方法を持続可能にするためです」とドイツ・オックスファムのマリタ・ヴィガータル氏はドイチェ・ヴェレ(ドイツの国際放送事業体)に語った。ヴィガータル氏は貿易と食料安全保障に関する専門家だ。

同報告書は世界の飢餓レベルの現状と将来に関する冷徹な事実を明らかにする。9億2500万人近くの人々(つまり7人に1人)が現在、日常的な飢餓に直面しているという。オックスファムによれば、2007年以降、食料価格は急騰しており、トウモロコシのような主要産物の価格は今後も上昇し続け、今後20年で2倍近くになる見通しだ。その結果、飢餓に苦しむ人々の数も増えるという。

“食料と燃料と飼料の間で競争が激しくなったため、食料生産のピークはすでに過ぎたのです。”

ドイツ・オックスファムの貿易と食料安全保障に関する専門家

さらに同報告書は、世界の人口が増えるにつれ、食料需要も増えるだろうと述べる。2050年の食料需要は70%増となる見込みである一方、食料の供給を増やす生産能力は減退しつつある。水不足や気候変動といった環境上の問題を含む様々な要因が、収穫量の伸び悩みや収穫の落ち込みを引き起こしているからだ。

「食料と燃料と飼料の間で競争が激しくなったため、食料生産のピークはすでに過ぎたのです」とヴィガータル氏は言い、世界のトウモロコシのうち15%がバイオ燃料の生産に使われていることや、世界的な食肉の需要増加を指摘した。食肉の需要増加によって農業従事者は食料となる農作物ではなく家畜用の飼料を生産する傾向にある。

なかなか解決されない飢餓問題

世界が飢餓問題に取り組んできた結果はあまり良好なものではない。1995年、国連の食料サミットでは、当時8億2000万人だった飢餓に直面する人々の数を半数に減らす目標が設定された。その目標はまだ達成されていない。2008年の食料価格の急騰は、さらに1億人の人々を貧困に追いやった。同年後半には食料価格は多少安定したが、その後再び上昇し続けている。

国際連合の食糧農業機関(FAO)によれば、食料価格は過去20年間よりも高く、世界中で食料暴動を引き起こした2008年の価格急騰よりも上回るという。

飢餓にあえぐ人々のほとんどはアジアに住んでおり、特にインド亜大陸に多い。しかし、飢餓に直面する人口の割合が最も大きい大陸はアフリカである。2010年、アフリカで飢餓に直面する人口は約2億3900万人、すなわち全人口の30%を占めた。

「ほとんどのアフリカ諸国では、農業部門への長期的投資が十分に行われていません」とNGOのGermanwatch(ジャーマンウォッチ)で貿易と食料に関する上級アドバイザーを務めるトビアス・ライヒェルト氏はドイチェ・ヴェレに語った。

EUの政策が事態を悪化させる

ライヒェルト氏は、こうした状況は少なくとも一部には欧州連合(EU)の農業政策の結果だと言った。1970年代末期から1980年代初頭にかけて、EUは食料の純輸入国から純輸出国に変貌を遂げた。その傾向が特に顕著だったのは牛肉、牛乳、豚肉および鶏肉といった動物性食品と、小麦やその他の穀類においてだった。

「EUはアフリカのような開発途上国の市場へ集中的に輸出を行った結果、競争力のない地元の生産者たちを苦しめたのです」と彼は言った。「その状況を見た輸入国の政府は、生産物は世界市場の方が安いのだから自国の農業部門に投資する必要はないと考えたのです」

“自国の農業基盤を長年顧みなかったために、国内の生産量を増やして輸入価格の高騰に対応することができなかったのだ。”

しかし世界の食料価格が最初は緩やかに、その後、劇的に上昇し始めた時、開発途上諸国は十分な早さで対応することができなかった。自国の農業基盤を長年顧みなかったために、国内の生産量を増やして輸入価格の高騰に対応することができなかったのだ。

低価格の輸入品は地元の食習慣にも影響を与えた。人々はキビやモロコシのような地元で栽培された作物ではなく、輸入された小麦やトウモロコシを調理に使い始めた。その結果、市場が縮小し地元の農家は苦しんだ。ライヒェルト氏によれば、作物を小麦やトウモロコシに転向しようとした人々の多くは、土壌やその地域の気候がそういった作物の栽培には適さないことを知ったという。

投機家たち

商品市場への投機の増加が飢餓の拡大の原因であり、食料価格の変動につながったと考えるアナリストもいる。1990年代末期から2000年代初頭に、投資銀行やヘッジファンドによるロビー活動が食料投機への規制緩和につながった。ゴールドマン・サックスやバークレイズ・キャピタルといった主要な金融機関は、金融会社が食料価格を利用して金もうけできるように新たな投資商品を作り出した。食料価格の高騰に賭けたこの投機は、食料価格を予想よりもずっと高いレベルにまで引き上げてしまった。

「それは世界中の人々に壊滅的な影響を与えました」とロンドンの世界開発運動5の政策オフィサーであるマレー・ワージー氏はドイチェ・ヴェレに語った。「何百万もの人々を貧困に追い詰めています」

“世界開発運動やその他の組織は、金融市場の透明性を高め、銀行や投資ファンドが所有したり売買することができる食料の量を制限する新たな規制の必要性を訴える。”

世界開発運動やその他の組織は、金融市場の透明性を高め、銀行や投資ファンドが所有したり売買することができる食料の量を制限する新たな規制の必要性を訴える。

「食料は基本的権利であり、銀行家や金融投機家の気まぐれに任せて取り引きされるべきではありません」と彼は言った。

世界は実際のところ、すべての人々に食料を供給することが可能だが、短絡的思考、政府の誤った政策、既得権益(”『現行のシステム』から恩恵を受け、現状を維持するためのロビー活動を行う”300~500の大企業を含む)が飢餓問題を悪化させたのだとオックスファムは言う。その結果、世界で最も貧しい人々に最悪の影響をもたらし、さらに数百万人もの男女や子供たちの生活を脅かしているという。

オックスファムのヴィガータル氏は、飢餓問題が今年11月のG20首脳会議で優先順位の高い議題に挙がっていることに勇気づけられたと言う。同会議で首脳たちは、食料価格を管理し、将来的な価格の変動や食料危機に備えて市場を規制するべきか否か、そしてその方法について決議する予定だ。

「私たちは政府にプレッシャーをかけ、実際の行動を促したいのです」と彼女は言った。「現状は緊急を要しています。もし今後数年間で変化を起こすことができなければ、状況はさらに悪化するでしょう」

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この記事は2011年6月2日、Our World 2.0のパートナーであるドイチェ・ヴェレで公表したものです。

翻訳:髙﨑文子

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著者

カイル・ジェームズ氏は1998年以来ドイチェ・ヴェレに勤務している。エディターおよび英語によるラジオ放送の番組ホストを経験した後、主にウェブサイトDE-WORLD.DEで活動しており、さらに、DW-Akademieが主催するラジオ制作やオンライン・ジャーナリズムに関するトレーニング・ワークショップをアジアや中央アジアで実施している。テキサス出身であるカイルは、カリフォルニア大学バークレー校でジャーナリズムの修士号を修得した。ドイチェ・ヴェレでの仕事の他に、アメリカの公共ラジオ、テレビ局のフランス24、ヨーロッパ数カ国から英語でニュースを配信するネットワークThe Local(ザ・ローカル)に、定期的に記事を送っている。

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