本当は笑い話ではないピークオイル

米国のケーブルテレビチャンネル、コメディ・セントラルで深夜に放送している風刺番組、 ザ・デイリー・ショーは、長期にわたり驚異的な人気を博している。その理由として考えられることを1つ挙げるなら、それは近年、政治が実際に目もあてられない状況になっていて、笑い飛ばしでもしなければ、とても正気ではいられないということだろう。

私たちがこういったニュース番組のパロディを必要とするのはうっぷん晴らしのためと言えるが、それと同時に、今、何が起こっているのかについて、非常に興味深い見方を示してくれるからでもある。ザ・デイリー・ショーは、今日の米国および世界でよく見られる政治を取り巻く偽善について、優れた批判を繰り広げている。

番組を毎回見ている視聴者のほとんどは18歳から49歳の年齢層の人たちだが、その多くにとって、デイリー・ショーとそこから生まれたコルバート・レポートは、唯一の(あるいは少なくとも最も信頼できる)情報源である。その奥にある真実は、今日、世界を見回してみると、目に飛び込んでくるのは金融危機や景気後退、戦争、暴動、飢餓、進行が続く環境破壊、などであり(しかも、このリストは日に日に長くなる)、このような中ではユーモアのセンスでもなければやっていられない、ということだ。

環境分野の仕事についていると、友人や同僚に、あるいは誰かれ構わず、ついピークオイルや気候変動の話をしてしまうことがあるかもしれないが、そんなことをすれば、相手の表情がさっと変わるのがわかるはずだ。

社交の場でそういった話題を切り出せば、最初は良くても、すぐに退屈そうな目が向けられ、「2度とこんなヤツを食事に招待するものか」という相手の内なる声が聞こえるだろう。代わりに、「ところで、昨日の夜のザ・デイリー・ショーを見ましたか?」と話し始めれば、反応はまったく違うものになるかもしれない。

あなたはきっと、司会者のジョン・スチュワート氏の解説について話を続けられるはずだ。彼は、歴代の大統領8人がテレビカメラを前に「アメリカをエネルギー自立国家にする」と宣言した様子を次のように語っている。

The Daily Show With Jon Stewart Mon – Thurs 11p / 10c
An Energy-Independent Future
www.thedailyshow.com
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つまり、私たちが直面しているエネルギー危機を政治家は認識している。ただ、それについて、たいしたことができないだけだ。このことについては本が1冊書けそうだが、ザ・デイリー・ショーでは要点を数分で教えてくれる。ちょっとしたユーモアがあれば、深刻な問題についてもうまく話が続けられる。そのなかでも、ザ・デイリー・ショーを話題にして何が良いかといえば、一般的な意味で「クール」なことだ。これでまた食事に招待されるかもしれない。

偽物のニュースが本物のニュースに欠落している部分を補う

悲しい現実だが、私たちが偽物のニュースを必要とするのは、本物のテレビニュースメディアが今日の出来事を客観的に伝えるという役割を十分に果たしていないからだ。それは近年起こっている分裂のためだが、言うまでもなく、多国籍スポンサーの機嫌を取って、会社を存続させなければならないという理由もある。

そう考えれば、ピークオイルといった問題にほとんど注意が向けられないのも説明がつく。それどころか、大方のテレビニュースメディアは投機やパイプライン事故、石油探査制限、戦争といったピークオイルに代わる説明を探しまわるのに専ら時間を割いているように見える。

たとえば、ピークオイルに関する重要な研究結果が発表されても、ほとんどが無視される。したがって、Global Oil Depletion Report(世界の石油の減耗に関する報告書)が2009年に発表された時も、最も充実していた報道は、ザ・デイリー・ショーで特派員役を務めるジョン・オリバー氏とアンディ・ザルツマン氏の2人が、タイムズオンラインの提供する ザ・ビューグル・ポッドキャストで取り上げたものだった。

彼らのピークオイル特番では、この報告書とそこで明らかになったことが紹介されていた。それによると、世界の石油生産は2020年までにピークに達し、重大な危機を迎える。

続いてジョン・オリバー氏が言う。「これはちょっとしたパニックを引き起こしました。というのは、2020年は、まだほとんどの人が生きている時代であり、だから、とても深刻な問題なのです。これが2120年まで起きないというなら、自分には関係のないこととして片付けられて、後の世代が開けてびっくり、で済ませたでしょう。原子力廃棄物の問題と一緒にね」

これに対してアンディ・ザルツマン氏は、世界的に見てもピークオイルに対する基本的な姿勢はずっと変わっていないと答える。彼によると、皆こう言うのだ。「大丈夫ですよ。天気もいいし、何に文句があるのでしょう? いつの時代にも、みんなのスープに落とし物をしようとするいやらしいハエはいるもの。これまで石油がなくなったことがありましたか? いいえ!」

オリバー氏とザルツマン氏が、これからもピークオイルのような話題について、高圧ホースさながらのナンセンスな批判を世界中にまき散らしてくれることを期待しよう!

石油の短い歴史

ピークオイルの問題について、最も強烈かつ熱心に辛口発言をしているのはロバート・ニューマン氏だ。コメディアンで作家、また政治活動家でもある彼は、英国では2006年、More4チャンネルで放送された「History of Oil (石油の歴史)」という独演会で、その問題を語った。この番組は2007年にDVD にもなっている。

リチャード・ハインバーグ氏による2003年の著書「The Party is Over(パーティーは終わった)」を引き合いにしながら、ロバート・ニューマン氏は時代を先取りし、この領域のたいていの学者(この作者も含めて)、そしてそのあたりにいるすべての政治家よりも先を読んでいる。

20世紀と21世紀の地政学を説明しながら、ロバート・ニューマン氏は、欧米の外交はこれまで中東の石油の覇権争いの連続だったと主張する。第一次世界大戦以降、主な軍事衝突のほとんどは石油をめぐる争いであり、そのことは今日のピークオイルの到来に私たちがどう対応すればいいのかについて、大きな懸念を引き起こしている。

ロバート・ニューマン氏は漫談調で詳しく説明をしていく。「私たちはピークオイルとともにまったく新しい時代に突入しようとしています。石油地質学者は、2006年から2010年の間のどこかの時点で地球規模でのピークオイルは頂点を過ぎると言っています。それ以降は、私たちが何をしようと、人類が利用できる正味のエネルギー量は年々減り続けるのです」

「恐ろしい時代だと思います。仮に匹敵するものを探すなら、マヤ時代かローマ時代、かつての高度な文明の崩壊にまで戻らなければならないでしょう。なぜなら、これらの文明が崩壊したのは、人々がマヤ人やローマ人であることに飽きてしまったからではないからです」

さらに笑い、さらに学びたい方は Google videoで全編を見るか、DVDを購入していただきたい。

ロバート・ニューマン氏にとって、ピークオイルと気候変動はコメディのネタというだけではない。彼は自分の生活にも変化を起こそうとしている。ブログで彼は次のように述べている。

「去年、More4で『Robert Newman’s History of Oil(ロバート・ニューマンの石油の歴史)』の収録をした時、私はそれを世界初のカーボンニュートラル番組にしたいと考えました。エグゼクティブプロデューサーはその前に、旅番組風にするかい?と言っていたのですが」

「そのつもりはないよ、と答えました。私がわざわざ地球の反対側のヒューストンに行って、石油精製工場の外に立ち、カメラに向かってわずか数分話したところで、一体何の役に立つでしょうか? 二酸化炭素を排出するだけ。それなら、精製工場の門の脇でハンバーガーを売っているメキシコ人の彼にファックスで原稿を送って、読んでもらうべきです。ビデオカメラは彼の友達に持ってもらえばいいんじゃないでしょうか?」

彼はさらに続ける。ホクストン・ミュージック・ホールで「History of Oil(石油の歴史)」の収録をした時のことだ。「カーボンニュートラル戦略を実践するチャンスがここにもあると思いました。2台の自転車で、ステージの照明に必要な電力の一部を作るのです。あのリンキー・ディンクのサウンドシステムと同じようにね。漕ぎ手が疲れたら、観客が交替すればいいのです。観客にとってはショーに参加するという意義があることです。私にとっては、彼らが汗をかいているのを見れば、皆がただで観ているという恨めしさが和らぎます。もちろん私も自転車こぎに参加しました」

そういうことだ。ピークオイルは笑いの種になるのだ。事実として起こっていることは笑えないが、人がそれに対して、否定や怒り、あきらめ、笑いなど、どう反応するかは笑い話になる。

このような感情に関わるテーマは政治風刺に向いている。特に、今日の世界の成り行きをおそらくよく理解している左派寄りのコメディアンはそう捉えるだろう。右派寄りのコメディアンはどちらかといえば物事の面白い側面は取り上げながらも、事態はそのままにしておく傾向が強い。

ピークオイルの面白おかしい解釈をネット上で見つけたら、この記事のコメント欄に書き込んでいただきたい。しかし何よりも私が望むことは、ここで紹介したような笑い話が、ピークオイルという現実に、私たちが時機を逃さず立ち向かうのに役立つことだ。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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本当は笑い話ではないピークオイル by ブレンダン・ バレット is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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