石油

プラスチックが油に変身?

キャロル スミス 2009年04月14日

我々はプラスチックの「前科前歴」について、十分な認識がある。その生産や廃棄方法が資源問題を引き起し、極度の環境負荷を負わせるなど、多くの点においてプラスチックは有罪判決を受けている。

プラスチックは一般に石油から作られる。世界の年間石油生産高のうち7%は、プラスチックの生産・製造に使われていると概算されるが、これはアフリカ大陸全土で消費される石油の量を上回っている。

残念ながらリサイクル率も非常に低く、プラスチックのカーボンフットプリントには埋め立て地や焼却分が含まれている。

また、プラスチックゴミは我々の海を汚染し、世界中の浜辺に打ち上げられている。 アメリカや日本からの大量のプラスチックは太平洋を漂流し、ほ乳類や鳥類を死に至らしめている。この悲劇はアルガリタ海洋研究財団のチャールズ・ムーア船長のTEDプレゼンテーションで最も分かりやすく表現されているだろう。

消費を抑えるか、有効に使うか?

幸いなことに、廃棄物の中でもプラスチックが高いエネルギー価値を持つことを、充分に認識している人々がいる。ブレストという日本の企業は、いくつかのプラスチックを油化する、安全かつ簡単な小型装置を開発した。

日本は長年かけて、2006年にプラスチックの「有効利用率」が72%となるまで大幅な改善をしてきたものの、残り28%のプラスチック廃棄物は埋め立て地利用や焼却処分にされている。プラスチック処理促進協会のデータによると、実際に再利用されている20%のみならず、発熱や電力などの「エネルギー回収」目的で焼却される52%までもが「有効利用」に含まれている。

「プラスチックを焼却すると、有毒物質や大量のCO2が発生します。もしそれを油化すれば、我々はCO2を削減すると同時に、人々のプラスチックゴミの価値についての認識が高まります」と、ブレスト代表取締役の伊東昭典氏は言う。

ブレストの変換技術は「炎」ではなく温度調節をする「電熱器」を使っているため、非常に安全である。装置はポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンの三種類のプラスチックを処理することができる。その結果、原材料だった原油が作られ、発電機やストーブの燃料に使用でき、さらに精製されると車や船舶、オートバイに給油できる。1キロのプラスチックから概ね1リットルの油がとれ、この量を油化するには約1KWの電力がかかり、金額にすると約20円もしくは20セントほどである。

ブレストは様々なサイズの装置を製造し、日本国内外の農場、漁場や小規模工場などに60台設置している。

「誰でも使える装置を作るのが私の夢です」「家庭は未来の油田です」

この伊東氏の発言は、その聞こえほど突飛なことではないかもしれない。というのも、日本の一般家庭から出る廃棄物は、主に包装資材から出るプラスチックが30%以上含まれているからだ。

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出典:渡辺浩平、2005年3月にセント・エドモンズカレッジのCapability and Sustainability Centreでの講演 “Waste and Sustainable Consumption(廃棄物と持続可能な消費)”のために提供された参照資料。地方建築家プランナー協会、平成10年度京都家庭廃棄物の詳細区分と測量

継続的に企業は技術を磨き、以前より安く製品を販売できるようになり、伊東氏は「誰でも買える」製品の完成を望んでいる。現在、ビデオブリーフで紹介されている最小版は95万円(9,500米ドル)である。

我々の発想を変えること

しかし、伊東氏が最も情熱を傾けているのが小型モデル装置の教育的利用である。彼は数年前に始まったマーシャル諸島でのプロジェクトの一環として、この装置を幾度と飛行機に持ち込んでいる。そこでは、人々にリサイクルの文化やプラスチックゴミの価値、「捨てることは嘆かわしく残念なこと」という日本のもったいないという考え方を広めるため、現地の政府や教育機関と共に活動している。

このような遠隔地でも、伊東氏の装置は旅行者の置き去りにしたゴミ問題の現実的な解決策となり役立っている。「こうして作られた油はツアーバスや船舶に使われています」

「このことを学校で教えるのは、私の最も重要な仕事です」と伊東氏は言う。日本でも、子供や教師、そして保護者にも、包装資材や昼食で残ったストローの油化の実演を見てもらう為に数多くの学校を訪問している。

「もし我々が油田からの油ではなく世界中のプラスチック廃棄物を使えば、二酸化炭素排出量を大幅に削減できるでしょう」

「もったいないと思いませんか?」「プラスチックは世界中どこにでも存在します。それもみんな捨ててしまっているのです。」

下りるための山

「プラスチック」という素晴らしい発明は、莫大かつ困難な問題を次々に引き起こしている。ピークオイルの到来を前に、事態は変化する方向に向かっている。しかし、依然として石油とプラスチックの山の上にいる我々に残された唯一の進む道は、そこから下りることである。

プラスチック油化装置などをはじめとする数々の解決策も、まだすべての課題を克服したわけではないし、こうした動きを非難する人たちもいる。しかし、これらは石油やプラスチックへの依存から脱却する前向きな一歩であり、プラスチックの使用や生産から排出されるCO2に関しての意識向上につながる。我々はプラスチック使用を断つべきであることを認識しているが、簡単にできることでないようだ。

我々に出来る最善策。それは、この問題についてより深く向き合う事かもしれない。その出発点として、Cryptic Moth Productions が2008年に製作した Addicted to Plastic (プラスチック中毒)というドキュメンタリー映画がある。インターネットで予告編が見られる上、近くのビデオレンタル店で借りられるかもしれない。

「この映画は過去100年以上に遡るプラスチックの軌跡を詳細に描き、リサイクルや有毒性、生分解性に関する現実的かつ最先端の解決策について膨大な専門家とのインタビューが収録されている。」(映画の宣伝文より)

次は, 我々のプラスチックとの恋仲を断ち切る行動に出るだけである。

あなたにどのような影響があるのか?

Health

プラスチックを焼却するとダイオキシンが排出されることは知られている。焼却炉では放出物のろ過が法律で定めされているが、実際にはいくらか除去できても、全ての有毒物質や、そこから出る有毒な灰は除去できない。(多くの人が認識しているように、近年、プラスチックの使用ですら、特に過敏な子供に対して、重篤な健康問題を引き起こし始めている。フタル酸類とビスフェノールAは、最近になって、環境有害物質、発がん物質、エストロゲンに似た内分泌かく乱物質の危険性を精査されているところである。)

Money

このようなグリーンビジネス革新は、活気に満ちている。倹約や廃品利用に努める企業や小さなコミュニティー(将来的には各家庭にも)に優れたビジネスセンスを持った商品を提供している。

Lifestyle

伊東氏が子供たちに教えているように、我々もプラスチックを「価値あるもの」として見つめ始めなければならない。化石燃料が限りある資源であることを考えると、今までのようにプラスチックをゴミに出し続けていて良いのだろうか?従来の「やみくも消費」からの脱却は、地球、そして現実により調和した生活へと我々を導いてくれる。

筆者について

キャロル・スミスは約13年前にジャーナリズム論で学士号を取得し、その後コミュニケーションに関わる職をいくつか経験している。彼女の故郷であるモントリオールにて環境協力委員会(CEC)の編集部の主任もその仕事の一つだった。夫の東京転勤に伴い、彼女は国連大学メディアスタジオに職を得、持続可能な生活の推進の手助けをするという長年の願いをかなえようと意欲的だ。
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