災害復興で目指すべき街づくり

地震、津波、原発事故という3重の災害が東北・関東地方を襲ってから約6週間が経過した。警察庁によると、今も13万人以上が、主に岩手県、宮城県、福島県にある避難所で生活しており、12万5千戸の建物が損壊あるいは破損の被害を受けている。

災害復興に関連して、私たちが今後数ヶ月、あるいは数年にわたって頻繁に耳にするであろう言葉がある。「より良い状態に再建しよう(build back better)」だ。これは2004年のインド洋津波、さらに近いところでは昨年のハイチ地震の復興プロセスで注目度が高まった概念である。

「より良い状態に再建しよう」の基本原則には、(1) 被災者のクオリティ・オブ・ライフの維持および促進、(2) 地元経済の活性化、(3) 公平性の促進、(4) 環境の価値の維持、(5)災害耐性を高めることによる脆弱性の軽減、(6) 再建努力における一般参加型プロセスの採用、が含まれる。

日本の今後については、2011年4月1日、菅直人首相が記者会見で復興についての考えを示した。この会見で、菅首相はエコタウン構想に基づく新しいパターンの街づくりを口にした。この構想はドイツのモデルに倣ったもので、バイオマス燃料による地域暖房システムなどの環境保全技術を利用するとのことだ。

これに続いて2011年4月12日の記者会見では、菅首相は復興によって生み出される社会の姿について、3つの考え方を示した。第1は自然災害にきわめて強い地域社会を作ること、第2は人々が環境と共存できる社会システムを構築すること、そして第3は人に優しい、特に弱者に対して優しい社会を作ることだ。こうした菅首相の考えは、「より良い状態に再建しよう」の概念に沿っているように思われる。

より良く、スピーディに、環境に優しく——すべてを満たす復興は可能か?

これらの考えを推し進めるために、菅首相は東日本大震災復興構想会議なるものを立ち上げた。委員は15人の有識者で、その中には災害後の復興に関わったことのある人物や、被災地の知事らが含まれている。会議の目的は、2011年6月までに、被災地および社会のあらゆるセクターの人々の意見を勘案した復興の青写真を策定することだ。

はたして与えられた期間内に、この会議がおおまかな構想を描く以外、復興を先導するために何かを成し遂げることなどできるだろうか? そして、日本が参加型の復興プロセスによって再生を進めるには、どうすればよいのだろうか?

これらは今後数週間、議論を呼びそうな厄介な疑問だ。しかし、1つの興味深い点は、復興努力が地域の環境改善につながりうるということである。ただし、ここではまず、損壊した家屋や車両からのおびただしい量の廃棄物の処分が最初の課題であることを念頭に置く必要がある(阪神大震災後に廃棄されたがれきは1500万立方メートルにのぼった)。

したがって、よりよい環境を目指して再建を進めるのは極めて難しい課題であると言わざるを得ない。また、エコタウン構想は魅力的ではあるが,混乱を招くおそれもある。1997年、当時の通産省と環境庁は、地域の産業が製造プロセス内および業界間で資源のリサイクルを行うエコタウン構想を導入した。その結果、合計で23のエコタウンが承認されたが、その中には3月11日の津波で1300人の住民の命が奪われた岩手県釜石市も含まれていた。

今回菅首相が考えているエコタウンは、現在日本で行われているモデルの先を行くもののようだ。参考にしているのはヨーロッパの例である。

ヨーロッパのエコタウン

以前のOur World 2.0で、私たちはスウェーデンのハンマルビー・ショースタッド地区内に開発され、受賞歴もあるエコタウンの例を紹介した。そこでマレーナ・カールソン氏は、成功の鍵は「環境に配慮した機能をプロジェクト全体の設計に直接組み込んだことです」と説明している。

そうした機能には、徹底したゴミのリサイクルシステム、地下パイプを通してゴミを中央集積所に真空吸引するシステム、生ゴミのバイオガス化、ゴミ焼却熱を利用した住居暖房、太陽光パネルの大規模利用による温水供給などが含まれる。日本のように政府機関間の対立の激しさが知られる国で、このような包括的なアプローチを取るのはなかなか難しいだろう。

“だが、復興に関わる人々が、参加型のプロセスでより良い状態への復興を進められるように、できるだけ多くの情報源から教訓と示唆を得ることが望まれる。”

英国では、エコタウンは「4つのC」を反映する新たな開発手法として検討されている。4つのCとは、気候(climate)、接続性(connectivity)、コミュニティ(community)、それに特徴(character)のことだ。「気候」とは、気候変動に耐え(つまり、気候変動の影響に確実に適応でき)、そして二酸化炭素の排出量を確実に低く抑えることを指す。「接続性」とは、技術や公共の輸送手段を利用して、雇用の機会にアクセスできることを指している。そして、「コミュニティ」での焦点は、社会構成のバランスに気を配り、高齢者やひとり親家庭といった最も立場の弱い人々にも場を確保することだ。最後に「特徴」は、新しく高度なデザイン水準で、唯一無二の場所を作ることを意味する。

ヨーロッパで見受けられるエコタウンあるいはエコシティの好例には、オランダのアメルスフォールト、ドイツのフライブルグ、スペインのサラゴサが挙げられる。

フライブルグの事例には、多くの優れた取り組みが取り入れられている。たとえば、自然の特徴、地形、既存の建造物などが存分に活用されており、また、子供に優しい環境という点では、家族が住む住居、遊び場、学校などが徒歩や自転車で行ける範囲内にある。

トランジション・タウンでより豊かになれるか?

津波で被災したコミュニティを再建するのは、著しい困難を伴うだろう。課題の1つは一刻も早く建て直す必要があることで、もう1つは、どのような再建がベストかについて地元住民の合意を形成するのが困難なことだ。例えば、政府は新しい住宅は海岸から離れた高台に建設することにして、沿岸部の平地は農地として利用するを検討している。また、小規模な漁村を大規模な漁港に統合することも提案している。これらの提案は、地元の漁業関係者からすこぶる不評を買っている。

エコタウンのアプローチはきわめて魅力的で、正しく前向きな方向ではあるが、乗り越えなければならない大きな障壁もあるかもしれない。1つの大きな懸念は、津波の被災地の自動車への依存度が非常に高いことで、これにどのように対処できるかだ。例えばフライブルグでは、地元当局がうまく奨励した結果、住民たちは自動車の代わりに公共交通機関や自転車を利用するようになった。

特に、来るべきピークオイルを踏まえるなら、東北・関東のコミュニティをピークオイルや気候変動、そして自然災害リスクに確実に耐えられるように建て直すことが重要だ。食料生産については、被災した各県は日本でも食料自給率が最も高い地域で、東京に多くの農産物を供給している。もし、これらの地域が農業組合の統合により、機械化と産業化の進んだ農業システムに移行すれば、ピークオイルに対してますます脆弱になるだろう。むしろ、日本は独自のモデル――つまり里山モデル――を再建の方針として目指すべきではないのだろうか。

街を再建するに当たっては、トランジション・ムーブメントの経験が、復興努力を先導し、とりわけトップダウンではない、ボトムアップアプローチを促進する上では役に立つかもしれない。日本国内にも、神奈川県の藤野市や葉山町、東京都の小金井市など、数多くのトランジション・タウンがある。

トランジションアプローチの主要な側面には次のようなものがある。
(1) ピークオイルと気候変動の問題に包括的に対処する必要がある。
(2) 地域レベルに焦点を当てることが不可欠である。
(3)コミュニティの創造力、団結力、適応力を活用することが必須である。
(4) 取り組みは、地域にすでにある資源を活用し、それらを結びつけるところから始める。
(5) 分析する頭(head)、思い描く心(heart)、活動する手(hands)を反映する、バランスのとれたアプローチを採用する。
(6)コミュニティはより良い未来を思い描き、その実現に楽しんで取り組む。

政府主導のやり方では、津波に被災したコミュニティが自分たちの地域の再開発に関わるのが難しくなる恐れがある。トランジション・ムーブメントで提唱されている方針に沿ったアプローチを採用すれば、コミュニティが自分たちの将来についてのビジョンを描き、創造性を発揮しながら取り組みを進め、そのプロセスを楽しむことができるだろう。

トランジション・ムーブメントの創設者であるロブ・ホプキンス氏はおそらく、日本が以前より良い状態への再建を目指すにあたっての重要なポイントを捉えている。というのは、彼は(どのような場でもトランジションは可能であることに言及して)、「前向きで、楽しく、そして威圧的でないやり方で、より民主的で低エネルギー、そして地域主導のインフラストラクチャーを導入するように工夫する」プロセスを勧めると言ったのだ。

津波の被災地が完全に復興するまでには実に長い道程が待っている。だが、復興に関わる人々が、参加型のプロセスでより良い状態への復興を進められるように、できるだけ多くの情報源から教訓と示唆を得ることが望まれる。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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著者

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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