科学者が気候変動に否定的な検閲を非難

潤沢な資金を持つアメリカの組織が気候科学を故意にわい曲しようとした計画が暴露される中、主要な科学学会で科学者やジャーナリストはカナダ政府に対し、科学者の口封じをやめるように要求した。

ブリティッシュコロンビア州バンクーバーで開催されたアメリカ科学振興協会(AAAS)年次大会の特別セッションで科学者やジャーナリストたちは、カナダ政府が過去4年間、公的資金を受けた政府の科学者たちとの適時な接触を制限していると語った。科学者たちの研究結果が主要な科学学会誌に発表されている場合でも、接触は制限されるという。

「カナダ国民は科学や気候変動に関して、本来なら知り得る情報を与えられていません」と語ったのは、バンクーバーを拠点にポストメディア・ニュースに寄稿する科学ライター、マーガレット・マンロー氏だ。

「ある話題が議論を呼べば呼ぶほど、科学者との対話の可能性が少なくなるのです」とマンロー氏はインタープレスサービス(IPS)に語った。

昨年、世界中のジャーナリストはカナダ政府の科学者であるクリスティ・ミラー氏と接触することができなかった。ミラー氏は『サイエンス』誌で、カナダ西部のサーモン個体数の減少に関する画期的な論文を発表していた。

ところが、情報公開法に基づいて入手した電子メールによると、石油産業およびガス産業界のロビイストたちは科学者と直接、連絡を取ることができるようである。政府の内部文書は、気候変動に関するマスコミ報道が2007年以降、80パーセント減少したと報告している。2007年は保守党のスティーブン・ハーパー新政権が規制政策を施行した年だ。

「カナダ国民が自ら資金を提供する科学にアクセスできない状況を、ただ傍観しているわけにはいきません」とビクトリア大学の気候科学者、アンドリュー・ウィーヴァー氏は話した。

科学界が「科学者の口封じに関する公開討論会」の開催を始めたのは、「状況がかなり深刻だということを意味します」とウィーヴァー氏は語った。

マスコミが一般市民に情報を提供するのは、市民が十分な情報を得た上で決定できるようにするためだ。しかし、情報源と適時に連絡を取れなければマスコミはその役割を果たすことができない、とウィーヴァー氏は語った。

「政府が政治的な理由から科学者を口封じすれば、優れた科学の根本的原理を損なうことになります」と、トロント大学の一般内科教授のスティーブン・ホワン氏は語る。

「見解をオープンに議論することは科学にとって不可欠であり、それは報道の自由が民主主義に欠かせないのと同じである」とホワン氏は声明書で述べた。

アメリカ政府も、特にジョージ・W・ブッシュ政権下では、マスコミと科学者の接触をコントロールしていた。こうした規制政策の多くは現政権も行っていると、憂慮する科学者連盟のフランチェスカ・グリフォ氏は語った。

しかし、アメリカのロビー団体はそのような規制を受けず、気候変動のリスクに関する意識の低下に寄与したということが、様々な調査で明らかになった。ピュー研究センターによると、アメリカの22の最優先政策に関する1月の調査で、国民は気候変動を最下位に位置づけている。

アメリカの自由主義系シンクタンクのハートランド研究所から先週リークした機密文書は、数百万ドルを投じたキャンペーンを暴露した。このキャンペーンは気候変動に関して一般市民を誤った方向に導き、温室効果ガスの排出削減に向けた政府の行動を転向させようとするものである。また、学校での科学の授業を劣化させるプログラムもあった。さらに同文書は、ハートランド研究所がカナダやその他の国の気候変動懐疑論者たちに資金を提供していることを明らかにした。

ハートランド研究所はこの暴露に対し、マスコミへの脅迫で反論した。週末、同研究所は機密文書に関する記事を掲載したカナダのDeSmog Blogを含むウェブサイトや報道機関に対し、「悪意のある誤った論説と見なす」として法的通知を発行した。この通知は、ハートランド研究所のものとされる文書および論説の全文を削除するように要求している。

「私たちは悪しき科学と都合の良い解釈に対し、もっと異議を申し立てなければなりません」と、ヨーロッパの科学者たちはAAASで語った。彼らはまた、世界的に重要性の高い複雑な諸問題に関して妥当性、開示性、透明性を高め、一般市民の参加を促進する必要性を訴えた。

世界科学ジャーナリスト連盟を含む様々な報道機関は、ハーパー首相への公開書簡の中で、説明責任と透明性を約束したにもかかわらず、カナダ政府の科学者たちはいまだに「口封じ」されたままだと記した。さらに公開書簡は、問題解決に向けた取り組みは無視され続けており、残された手段はカナダや世界各国の一般市民の関心を集めることしかないと記している。

昨年12月、アメリカ海洋大気庁は、科学者がいつでも自由にマスコミに発言できるというコミュニケーション方針を導入した。ハーパー首相に対しても同様の方針をカナダ政府の科学者に適用するように求められている。

「カナダ国民は、公的資金を提供された科学者の専門知識を自由に手に入れる……権利を有する」と公開書簡は結論づけた。

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本稿は、開発、環境、人権、市民社会などのテーマを扱う独立系通信社インタープレスサービス(IPS)の許可を得て掲載しています。

翻訳:髙﨑文子

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著者

スティーブン・リーヒー氏は、カナダ人のフリーランスジャーナリストとして、インタープレス・サービス(IPS)通信社での記者として寄稿した5年間を含め、通算12年にわたり活動してきた。リーヒー氏は、科学、環境、農業分野を専門としていて、数カ国で主要な雑誌・新聞で執筆している。カナダのトロント均衡のブルックリンに拠点を置き、Society of Environmental Journalistsのプロフェッショナルメンバーでもある。 

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