イギリスの北部で生まれ育ったアナは、これまで旅行を通じて世界を垣間見てきたが、今後も自分の暮らす世界のことをできる限り学びたいと思っている。環境・開発学専攻で修士号を取得したばかりで、現在はグリーンベルト運動インターナショナルで非常勤として働く。その傍らUK Youth Climate Coalition(イギリス青年環境連合)の調整チームの一員として、コペンハーゲンへの青年代表団の調整役もしている。またadoptanegotiator.orgプロジェクトのブロガーでもある。
この夏、私は気候変動の問題に正面から向かい合った。そしてやっと気づいたことがある。それは、この問題ほど私たちを団結させてくれるものは、歴史上かつてなかったということだ。
私はイギリス北部にあるワリントンという町の出身だ。ワリントンは、マンチェスターからほんの32キロしか離れていない。マンチェスターといえば、産業革命の発祥地であり、チャールズ・ディケンズの小説に出てくる、暗く悪魔的な工場が立ち並ぶあの風景の舞台だ。
先日ケニアを訪れたとき、環境学とコミュニティ開発学専攻で大学を卒業したばかりのワイガンジョという友達ができた。彼はケニアのリフト・バレー州ナクルという町の出身だが、この町にあるナクル湖が、私たちの目の前で今まさに消え去ろうとしている。ナクル湖は10年以内に完全に消えてしまうだろうとワイガンジョは危惧する。湖の水が消えつつあるのと同時に、湖の周りの生活も消えつつある。水なしでは農業が成り立たず、農業なしでは食糧がなくなるのだ。
私の故郷で始まったことが、今ワイガンジョの故郷に影響を及ぼしている。
現在ケニアは大惨事に陥ろうとしている。ケニアの人々は、今だかつて経験したことのない最悪の干ばつの真っ只中におり、400万人が食糧援助に頼って生活している。それにもかかわらず、もうすぐ降るとされていた雨、是が非にも必要な雨は、いまだに降らない。穀物は不作、畜牛は次々と死にゆき、多くの地域で生活を維持するのが不可能になり始めている。
ケニアのあちこちで「一体なぜ?」という声があがっている。
そして「気候変動のせいだ」という声があがっている。
来る年も来る年も雨不足を経験し、川や湖が干上がりケニア山の氷河が消えてゆくのを目撃したケニア人たちは、変動しつつある気候についてますます話し合うようになった。なぜならば、彼らにとってそれは遠い地で起きている「概念」ではなく、日夜そこにあり、適応を迫られつつあるものだからだ。また、飢餓に苦しむ何百万ものケニア人だけではなく、ほとんどすべてのケニア人がその影響を肌で感じている。ナイロビの裕福な地域においてさえ、給水制限が実施されている。ケニアでは、電力のほとんどを水力に頼っているため、停電も日常茶飯事だ。
ケニアでは、気候変動は今まさにそこにある現実なのだ。イギリスにいると、そのことをつい忘れてしまう。
けれどもケニアから届く気候変動に関するメッセージは、絶望的なものばかりというわけではない。希望、創造的な解決策、よりよい未来に向けたビジョンについてのメッセージもある。
私はUK Youth Climate Coalition(イギリス青年気候変動連合)の一員として、最近広がりを見せている、若者たちによる国際的な気候変動の活動に関わっている。世界中の若者が団結し、私たちの未来のために奮闘している。それぞれの国において、そして国連において。
ケニアにいる間、私は幸運にもケニアの若者たちによる気候変動の組織に歓迎された。African Youth Intiative On Climate Change(気候変動ユースイニシアティブ・アフリカ。 AYICC)のケニア支部の会合に行ったとき、私が最初に驚いたのは、私たちがお互いにいかに似ているかということであった。
気候変動について何かしなければという情熱は、私たちを分け隔てようとするどんな力よりも強く私たちを結束させる。故郷から8,000キロ離れたナイロビの木の下に腰を下ろしながら、イギリスで私たちが日々論じ合っているのと全く同じ事柄について会合で話し合われているのを聞いて感動した。
若者をいかに運動に参加させるか、コペンハーゲンにいくためにいかに資金集めをするか、何も知らない人たちにいかに気候変動のことを伝えればいいのか、誰が耳を傾けてくれるか…、目を閉じて聞いていたら、イギリスにいるのだと錯覚してしまう。
1か月の間に、私はどんどんAYICCに深く関わるようになっていった。そこの仲間たちと育んだ友情は、今後も末永く続けていきたいと思っている。みんな違うバックグラウンドを持っているにも関わらず、私たちには相違点よりも共通点の方がたくさんあることを私は知った。ケニアでもイギリスでも、若者たちは気候変動を脅威と捉え、真っ向から立ち向かおうとしている。
私たちはどちらも、気候変動に対する人々の認識を高め、人々を教育し、私たちが望む未来のために政府に働きかけ、メッセージを発信している。映画からフラッシュ・モブまで、会合から音楽まで、私たちのメッセージを世の中に伝えるため、私たちはあらゆる手段を使っている。
気候変動は最大の試練だ。しかしもしかしたら、それは同時に、私たちの世代が直面する絶好の機会でもあるのかもしれない。
ケニアの若者たちは、富める国々がケニアを助けてくれるのをただただ待っているわけではない。彼らは自国ケニアにも行動を求めている。彼らが望んでいるのは、持続可能な発展をする国を作り出すこと。公正かつ公平に自国の人々を貧困から救い出してくれる国だ。
ケニア人たちは、イギリスの若い世代の活動から学ぶことが多いと感じてくれた。特に、全国の若者同士をいかに結び付け、いかにメッセージを発信するかという点に関してである。しかし、イギリスにいる私たちもまた、彼らから学ぶものが多いことに私は気づいた。彼らは気候変動を目の当たりにしているにもかかわらず、希望を捨てず、未来に挑戦してやまない。
そこで私はケニアを去る前に、ある計画を彼らと一緒に立て始めた。私たちは一組の連合団体としてコペンハーゲンへ行く代表団を結成することにしたのだ。私たちは正式に認可を受け、気候変動に関する国際連合枠組み条約(UNFCCC)の交渉に共に乗り込む。
私たち2代表団は、世界中の若者たちと力を合わせ、自分たちの存在をアピールすることで、UNFCCCの交渉の当事者としての私たちの地位を確立してくるつもりだ。何といっても、交渉の議題はこの私たちの未来なのだから。
独創的な行動と、メディアを通して、私たち若者のメッセージと要求をさらに明確にし、交渉が私たちのふさわしいと考える方向へ向かうよう促すつもりだ。すべての国家と国民の生き残りを保障するのに足る断固とした取り決めが為されるように。
イギリスはケニアの過去の歴史に極めて波乱に富んだ影を投げかけている。イギリスの若者たちは、その過去をないがしろにはしたくない。ケニアに対する私たちの歴史的責任を認め、しかしそれを乗り越え、私たちの共有するストーリーを書き換えたい。
イギリスにいる私たちは、ケニアの仲間たちがコペンハーゲンに行けるよう、彼らの募金活動を援助している。しかしそれ以上に、私たちはこうして経験を分かち合うことで、究極的には友情を育んでいるのだ。それは会議が終ったら途切れてしまうものではなく、その後も続く。
12月のこの会議1つのみによって気候変動の問題が解決されるとは誰も思っていない。だからこそ、イギリスとケニアの若者の結びつきが重要なのだ。将来的に、私たちの世代が決定権を持つ日がきたら、この結びつきが物事をいい方向へ動かすかもしれない。
なぜかというと、私たちは、
お互いを知っているから。代表団のメンバーとして、友人として、兄弟として。
私たちを分け隔てるものよりも結び付けるものの方が多いことを知っているから。
私たちの行動のすべてが他の国の仲間に影響し合うことを、その時までには学んでいるだろうから。その仲間が、どんなに離れて暮らしていようと、どんなに生活が異なっていようと、私たちは一つの世界に暮らしているのだということを。
ひょっとしたら、 国連で交渉に当たっている人々も、ここから学べることはないだろうか。
翻訳:金関いな
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