特集:洞爺湖サミットの成果と課題

G8サミットが終了した。2008年7月9日の議長声明の中で福田首相は、原油や食糧価格の高騰、世界各地のインフレといった問題の解決に取り組む必要があるとの認識で一致したことを強調。

原油に関してG8首脳たちは、生産国と消費国の協議を通じ、需要と供給のバランスを取り、透明性を高めていくことで一致したが、どのような対話を経て、どのように透明性を向上させるのかは明確にされなかった。独立監査団体のような機関、あるいは専門家グループを設立し、生産国とともに残存埋蔵量を検証するのが、有効な第一歩であろう。しかし、この方法は政治的にも議論が多く、導入も困難なため、G8サミットで推奨されることはなかった。

むしろ、G8首脳らは生産と製油能力の拡大、生産国による投資増大の必要性を強調した。これは従来通りのシナリオだ。しかし議長声明では、エネルギー効率の改善の重要性と、需要国側のエネルギー源多様化の必要性が言及された。本来ならば後者が本流であるべきところが、需要増大のあおりを受けて、二次的要素として捉えられている。

しかしながら日本は、エネルギー効率と新技術についてのフォーラムの主催する旨を申し入れた。今後、これらの分野に投資が集まり、多くの雇用が創出されることを期待したい。

6月にジッダで開催されたエネルギーサミットのフォローアップ会議が、ロンドンで予定されている。G8が約束通り、昨今の原油や食糧高騰の背景にある実需・金融両面の要因について、詳細な分析を行うことを期待している。このような分析はこれまであまり行われてこなかった。より正確な分析がなされれば、関係国や国際機関はOPECに増産を要請するだけにとどまらない、より一歩進んだイニシアチブを取ることができるようになるだろう。

食糧危機への対応

食糧危機は、多面的かつ構造的である。G8諸国は100億ドル規模の緊急対策をとり、他の支援国にも援助を要請した。G8専門家グループは、緊急対策のモニタリング、国連総長が結成した世界食糧危機についてのハイレベル・タスクフォースと密接に連携している。

また、食糧問題に関して、短期、中期、長期目標も提言された。福田首相のコメントは下記のとおり。

「これらの対策は、食料不足や飢えで苦しむ人々の援助、農業や食糧の世界市場と貿易システムの強化、世界の食糧生産、農業生産の向上を目標としている。さらに、G8首脳らは、農業部門における支援と投資が減少しつつある現状を覆すべく、後進国のイニシアチブを支え、5-10年以内にアフリカ諸国の主食生産を倍増させたいと強調した。」

気候変動

福田首相の声明の中で、気候変動問題に関して注目すべきは、2050年までに二酸化炭素排出量を少なくとも50%にまで削減するという目標に合意した点だ。しかし、この目標を達成するためには、主要経済国すべて(ブラジル、インド、中国を含む)の協力が不可欠となる。今後の主要目標は、2009年のコペンハーゲン会議で2012年以降の枠組みについての合意を得ることだ。

同じく7月9日に採択された主要経済国会合の声明には、下記の事項が盛り込まれている。

「我々が世界全体の長期目標を究極的に達成できるか否かは、調達可能で、新しく、更により進歩した革新的な技術、インフラ及び、我々の生活様式やエネルギーの生産・利用の仕方及び、土地の利用方法を変えるような慣行にもかかっている。」

各国首脳は、低炭素社会へ早期転換するためには目標を定めると同時に、技術・社会革新が欠かせないとする認識を示しはじめている。

この傾向は、G8首脳らが革新的技術の開発計画に向けた国際的なイニシアチブを設け、年間100億ドルのR&D費用を負担することに合意したことからも裏付けられる。

しかし、国際エネルギー機関の研究では、温室効果ガスの排出量を50%削減させるために、2050年までに1.1兆ドル/年の追加投資が必要になると試算している。これはカナダの国内総生産(GDP)とほぼ同額で、2008年から2050年まで世界全体の年間GDPの約1.1%にあたる。(レポート(英語)をダウンロード

おわりに

日本は議長国としてすばらしい組織力を生かし、このサミットは成功に終わった。また、今回のサミットでは、G8が従来のような役割を果たさなくなっていることも明確にになった。実際、東京サミットは洞爺湖サミットより規模が大きく、アフリカの7カ国をはじめ、ブラジル、中国、インド、メキシコ、インドネシア、オーストラリア、韓国が参加している。食糧、原油、気候変動など地球規模の問題を解決するためには、これらの国々の協力が重要となる。

Creative Commons License
特集:洞爺湖サミットの成果と課題 by ブレンダン・バレット is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License.

ディスカッションに参加しよう

著者

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

ディスカッションに参加しよう