東ティモールから見る気候変動

アビリオ・ダ・フォンセカ氏は使命感にかき立てられた男性だ。博士号の候補者で東ティモールの国民である彼には、何よりもやりたいことが1つある。それは自分の島国と100万人以上の国民の繁栄に貢献することだ。しかし世界で最も若い民主主義国家が国の沿岸に忍び寄る、今まで経験したことのない脅威を追い払うことができない限り、繁栄はやって来ないだろう。

海洋資源に頼る生活が営まれる漁村で育ったアビリオ氏は、自国に襲いかかる新たな危険、すなわち気候変動と闘っている若者だ。

アビリオ氏はティモール島東部の小区域、ツツアラの小さな村で生まれた。9人の兄弟姉妹は自給自足レベルの農業と漁業で何とか食いつないだ。海の生物への強い関心と、国民の生活を向上させたいという情熱を抱いていた彼は、インドネシアの漁業水産高校で学んだ後、インドネシアのハサヌディン大学で漁業と水産学の学位を取得した。

彼は東ティモールへ戻り、インドネシア政府のために漁業調査を行った。調査の目的は、国民のタンパク質源となるナマコや金魚などを「養殖」する機会を増やすことだった。

ところが1999年、独立に関する住民投票の準備のために国際連合東ティモール・ミッションの現地スタッフとして働いていた時、アビリオ氏の人生は急変した。独立を求める闘争が投票に至る前に流血の事態となってしまったのだ。アビリオ氏の妻と息子はインドネシアへ避難し、彼は秩序が徐々に回復するまでの3カ月間、ジャングルで人目を避けて身を隠さなければならなかった。

シャナナ・グスマン氏が大統領に就任した2002年、アビリオ氏はその才能が認められ、ダーウィンのチャールズ・ダーウィン大学(CDU)で熱帯環境管理学の修士課程を学ぶ奨学金を受けることになった。

“物理的インフラを含む沿岸地域の産業は、浸食や洪水によって気候変動の影響を直接受ける可能性があります。”

アビリオ・ダ・フォンセカ氏

写真:Yeowatzup

写真:Yeowatzup

北オーストラリアの最北部と東ティモールの熱帯環境の類似性にアビリオ氏は感銘を受けた。そしてオーストラリアではすでに教えられていた教訓、つまり差し迫った気候変動や国民と資源を守る方法に関する知恵について学びたいと願った。

2004年に修士号を取得したアビリオ氏は故国に戻り、まだ始まったばかりの政府で影響力のあるポジションに就いた。彼は温室効果ガスの世界的な排出削減を目指した京都議定書に関し東ティモール政府に助言し、京都会議や議定書で定められた義務を国レベルで実行するように環境大臣に勧告するため、国際連合開発計画と協力し始めた。

昨年アビリオ氏の献身と貢献が再び認められ、CDUで博士号を修めるための共同奨学金を授与された。博士過程の一環として、気候変動が北オーストラリアと東ティモールの沿岸地域にどんな影響を及ぼすのか調査している。彼は、気候変動の潜在的な危険性について東ティモールの国民に教えることが最も難しい課題の1つだと語った。

「物理的インフラを含む沿岸地域の産業は、浸食や洪水によって気候変動の影響を直接受ける可能性があります」とアビリオ氏は言った。「私たちは地域社会がこの問題をどう乗り越えられるかを理解した上で、支援策や提案を提供する必要があります」

「東ティモールにとって気候変動は大きな問題です。気候変動とはどういうものであり、私たちに何を訴えているのか、明らかにしなければなりません」と彼は言った。気候変動が自然資源に影響を与えれば、人々の暮らしや住まいが失われる可能性がある。発展途上国である東ティモールは異常気象や過去に例を見ない洪水にすでに見舞われており、首都ディリの海抜は海面レベルに危険なほど接近している。

「今、私たちが諸問題を解決しなければ、将来に大きな問題が生じるでしょう」とアビリオ氏は警告する。彼は今後4年間の研究で、気候変動の影響を受ける可能性のある物理的インフラや自然資源を調査、測量する予定だ。その一方で東ティモールの人々に気候変動の危険性を認識させなければならない。

アビリオ氏自身が育った村の漁民たちが、たとえその晩の食事を失うことになるとしても、海や沿岸部の資源を保護するために今の行動様式を変えなければならない場合、彼の務めはより一層困難になる。「今これをやらなければ子供たちに何も残せなくなるということを、漁民の人々に説得しています」とアビリオ氏は話した。

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この記事はチャールズ・ダーウィン大学のご厚意でOur World 2.0に掲載されました。

翻訳:髙﨑文子

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著者

ペニー・バクスター氏はオーストラリアのダーウィンを拠点とするフリーランス・ライターである。

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