イタリアのe-waste問題解決に役立つ研究

電子製品や電気製品は実質的に世界中どこでも買うことができる。先進国では、ほとんどすべての家庭にコンピュータやトースターからおもちゃ、食器洗い機までいくつもの製品が並んでいる。その中には同じ製品でも、一家が新型を買うと決めるとお払い箱になるものもある。実際に世界では毎日、推定12万3千トンの電子製品や電気製品が、壊れた、古くなった、あるいは単に要らないからという理由で捨てられ、e-waste(電気・電子機器廃棄物)と化している。

e-wasteの増加が社会・環境・経済に与えるリスクは近年、目に余るほど緊迫したものになっており、それに応じて、環境への影響を減らし、資源の回収を増やし、開発の機会を伸ばす持続可能なソリューションの必要性が高まっている。

2007年には、こうした目的を背景に、電子廃棄物問題を解決するイニシアチブ(StEP)という科学に基づくイニシアチブがさまざまな国連機関によって設立された。国連大学(UNU)が調整役を務めるStEPは、企業・研究機関・政府・非政府組織間のパートナーシップを醸成し、今日では世界に60以上のメンバーを擁する、まさに国際的なイニシアチブに成長した。このイニシアチブは、国連大学のサステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)のオペレーティングユニットであるSCYCLE(持続可能なサイクルを意味するsustainable cyclesを短縮した名称)を土台に、e-waste関連の問題における知識のギャップを埋めるため、研究プロジェクトの立ち上げおよび支援にあたっている。

イタリアのケース

2003年、欧州共同体(EC)は電気・電子廃棄物(WEEE)を規制する指令を制定した。そして、この問題について認識が進み、2012年7月、WEEE指令が改正された。改正後の全体的な目標として、2019年までにEU加盟27ヵ国はそれぞれ、電気・電子廃棄物の85%あるいは各年の3年前から上市された同種機器の平均重量の65%をリサイクルすることを求められている。これにより、約1000万トン、すなわち1人あたり約20キロが確実に回収されることになる。

この目標は徐々に達成されることになっている。というのは、現在、拘束力があるEUの目標は2015年までに回収率を1人あたり4kgにすることであるが、今回設定された目標はそれを大きく上回っているからだ。現在の目標は、EUで1年間に発生する約1000万トンのWEEEのうち、合計約200万トンをリサイクルすることである。(もっともUNU-ISPのSCYCLEによると、廃棄物総量は2020年までに1200万トンに増加すると推測されている。)

2011年、イタリアの正規のWEEEシステムは1人あたり4.3kgの回収実績を上げた。現在のWEEE指令の目標には沿っているが、改正されたWEEE指令で将来的に求められる目標に達するには回収率を大幅に改善する必要がある。そこで2012年、UNU-ISP SCYCLE は ECODOMの依頼を受けて、自らが筆頭著者となり、ミラノ工科大学およびイプソスと連携して、 イタリアの家庭から発生するWEEEについて調査を行った(ECODOMとは、イタリアのWEEE回収のために組織された製造業者連合の大手で、使用済み機器の輸送および処理を非営利で行っている)。

この調査で重点が置かれていたのは、イタリア国内の家庭から発生するWEEEの定量化を行うこと、それにゴミ箱や報告されていないリサイクルなど、正規の仕組み以外で、WEEEの行方として大きな割合を占める主なルートを明確にすることである。その結果から、WEEEに関する消費者の習慣や処分の仕方が明らかになれば、将来の回収目標レベルの達成に向けて、国が戦略を策定するのに役立つ。

この調査では、さまざまな電子・電気機器の販売高推移を詳細に追跡することにより、家庭に蓄積されている製品の量を明らかにすることができた。またさまざまな製品の使用年数の統計をとることにより、家庭から発生するWEEEの量を推測することができた。報告書ではさらに、イプソスとの連携により考案および実施された特殊な調査に基づいて、処分の習慣についても考察が行われている。

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研究者は、上市された製品の量と発生したWEEEの量の差から、さまざまな市場の影響が見えると述べている。その中には、上市される家電の量が近年、主に金融危機により減少したことも含まれている。

消費者習慣の分析から明らかになったのは、イタリアの家庭で現在、保有されている電子・電気機器(合計で1居住者あたり215kg相当、1人あたり29.7製品)のうち、重量にして10%以上が機能するが使われていないもの、あるいは機能しないものであることだ。このように眠っている製品の量は1居住者あたり20kg以上になる。これは2011年にイタリアのWEEEシステムを通して処理された量の4倍近い。

この数値は衝撃的かもしれないが、今回調査に基づく研究からはいくらか希望が持てる結果も浮かび上がった。それは、消費者は古い製品を処分しても、それに代わる同等の機器を買っていないケースが14%近くになることだ。

処分の習慣については、消費者はかなりの割合(重量にして44%)のWEEEを市の回収ポイントで処分している。25%は業者が回収しており、特に大型機器の場合は専ら不要家財の引取業者が呼ばれている。しかし、その中で正規のWEEEシステムで管理されているのはわずか38.8%(1居住者あたり4.29kg)にすぎなかった。今日までWEEEのかなりの部分は市の回収ポイントや業者から直接、処理に送られている。

ほかに、1居住者あたり2.1kg(発生する廃棄物の12.9%)は再使用のチャネルに乗せられるが、中古品として市場に再び登場するのは1居住者あたり1.4kg(発生する廃棄物の8.6%)だけだ。残りの1居住者あたり0.7kgは中古品として輸出されるか、処理に回されると思われる。それとは別に、1居住者あたり0.6kgは古い家に消費者が残していく。このような経路をたどる廃棄物を合わせると、全体の発生量の16.6%になる。この割合からすると、回収目標達成の算段にあたっては、これらの廃棄物の量も的確に把握することが必須である。

最後の部分、1居住者あたり1.6kg(発生する廃棄物の10%)は他のルートで不適切に処理され、埋め立てなどの誤った処理方法で廃棄されていた。この割合は、消費者の記憶が曖昧な場合(古い製品をどのように処分したかを思い出せない)を含めると、1居住者あたり2.3kg(発生する廃棄物の14%)に上昇する。この類いの不適切な処理はWEEEの中でもさまざまな製品が扱われるルート(小型機器)に関して、特に大きな問題である。

良かったことは、2011年に発生したと考えられるWEEEの量およびそれがどのように回収されたかの分析と、正規のWEEEシステムの実績との間にほとんど齟齬がなかったことだ。しかし、そのようなシステムから「漏れる」おそれが大きいのは近年、経済的価値を増してきたルート(大型機器および多種多様な小型機器のWEEE)だ。その主な理由は、下流の市場が活気づいていること、処理プロセスの専門化や最適化が進んだこと、一部の分野で能力がある程度、過剰になり、処理する廃棄物の入手をめぐってリサイクリング工場間で競争が激化していることである。

もちろん、非正規の処理ルートについてもリスクはある。たとえば、廃棄物入手をめぐって競争が実際に激化していることから、処理水準の低下1が進むことが懸念される。

正規のWEEEシステムは、全国のリサイクル業者連合と提携して、家庭から発生したWEEEの全処理が行えるのは認可されたプラントのみと定めている。これによる保証はその他のルートでは存在しない。WEEE(および部品)の輸出に関する最新の公式データ(2009年)によると、家庭から発生するWEEEの輸出量(輸出先は主にドイツおよびオーストリア)は約2,500トンで、家庭以外で発生するWEEEの輸出量(輸出先は主に中国とパキスタン)は11万トン以上だった。

しかし、報告の一貫性と頻度については、正規のWEEEシステム(毎月)とその他のチャネル(1年に1回)の間には大きな差がある。報告書の著者らは、回収と処理のサプライチェーンに関与する関係者全員に対して、適時に一貫して監視を行うことにより、イタリア全体の対応の手綱を確実に締めることができると断言している。

同研究では、WEEEの発生量を推定する方法論も明らかにしている。そのような方法論を用いると、次のような目標設定システムを確立することができる。

さまざまな種類の電子・電気機器の市場動向を、少なくとも廃棄物ルートの段階で、改正WEEE指令の第5条で求められているように考慮できる
廃棄物が発生するプロセスにおける重要な要素である消費者の習慣と適切な回収システムへの移行を考慮できる
回収目標の達成に向けて最適な戦略を適宜、調整・改善できるように、追加の情報やデータ、根拠が得られた時は、それに基づいて臨機応変に更新ができる

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イタリアの家庭で発生するWEEE」のレポートについて、さらに詳しくはFederico Magaliniにご連絡ください。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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イタリアのe-waste問題解決に役立つ研究 by キャロル・スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリストで、グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。

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