すべての人のための持続可能エネルギー

国連総会は、2012年をすべての人のための持続可能エネルギーの国際年と宣言した。この決議は2011年8月に採択されたもので、その決定には、福島で起きた出来事、そして新たな再生可能エネルギー源を推進する必要性が高まったことも一部、影響を及ぼしているかもしれない。宣言にはもっともな文言が並んでいる。私たちは世界のエネルギーシステムを変革して、すべての人にエネルギーを提供し、増加する需要を満たしつつ、気候変動の悪影響を抑制する必要がある。

しかし、需要の増加に対応するのは容易ではないだろう。化石燃料から再生可能エネルギー源への移行は必要不可欠ではあるが、同時に、効率性の向上とエネルギーの節約によってエネルギー消費量を削減することも必要だ。そうなると、先進国では1人あたりのエネルギー使用量を大幅に削減することが求められるかもしれない。というのは、貧困国がエネルギーのネットワークにアクセスできるようになれば、それらの地域における1人あたりのエネルギー使用量の増加を相殺する必要があるためだ。

再生可能エネルギーへの移行を進めながらエネルギー効率を高めることの重要性は、数十年にもわたって数多くの団体が提言してきたことである。まず挙げられるのはロッキーマウンテン研究所のエイモリー・ロビンス氏で、彼は1976年に「Energy Strategy; The Road Not Taken(エネルギー戦略;まだ選択されていない道)」という記事を書いている。より最近では、先進国でどのようにエネルギー消費量を削減するかを議論している団体もある。スイスの2,000ワット社会や日本の低炭素社会などだ。彼らによると、私たちはエネルギー使用量を今日よりずっと減らしても、便利で快適なクオリティ・オブ・ライフを享受できる。

しかし、1人当たりのエネルギー使用量を減らすよう求めることは、世界人口の増加を抑えるのを求めるようなもので、タブー、あるいは政治的「御法度」と考える向きもある。エネルギーの使用量を減らすにはライフスタイルを変えなければならないが、そのようなことは期待できないというのだ。薄型テレビやゲームセンター、パソコン、冷蔵庫、電気調理器具、電子レンジなどを喜んで手放すような人はいない。そんなことをしなくても、それらの機器の効率を上げればすむではないかと期待する。しかし、これだけのものを持ち続けながら、エネルギー消費を今の約5分の1にまで減らすのは、きわめて困難と言わざるをえない。

経済への影響はどうだろうか。電力会社は消費者に電気の消費量を減らしてほしいなどとは思っていない。利益が下がり、投資に回す資金も減るからだ。産業界もエネルギー使用量の削減を歓迎しておらず、そのような対策は経済を麻痺させると政治家に早々に働きかけている。こうして私たちは、唯一の選択肢はエネルギーの需要と供給を今後も増やすことだというシナリオにはまり、身動きが取れなくなっている。

すべての人のためのエネルギーはどうすれば達成できるのか?

Our World 2.0の読者の多くは、世界的な石油生産のピークといった問題に高い関心を寄せている。皆さんが最も懸念するのは、この事象もまた、私たちの現在のクオリティ・オブ・ライフを引き下げるのではないかということだ。一方、トランジション・ムーブメントに関わっているような人々は、これらの問題に取り組むと同時に、石油の使用量を減らした場合の生活への良い面(コミュニティの再活性化、食料生産の現地化など)にも目を向けている。

ここである事実を指摘したい。先進国に住む人々には想像し難いことかもしれないが、世界では14億人の人々が、今も電気を使わずに生活している(サハラ以南のアフリカおよび南アジアの農村地域が中心だ)。さらに、25億人が調理に専らバイオマスを使っている。どうすれば私たちはこの状況を変えられるだろうか?

この難題に応えるために、国連は、すべての人のための持続可能エネルギーの国際年を通して、世界規模のエネルギー政策の策定を呼びかけている。再生可能エネルギーを推進する一方で、新興国については、2030年までに既存のエネルギーサービスに広くアクセスできるようにすることを目標に掲げている。

このゴールを達成するには、主に4つの目標を成し遂げる必要がある。1つめは、最貧困人口層のニーズに応える製品を開発することだ。2つめは、農村地域のオフグリッド技術(マイクロ水力発電、バイオマスガスストーブ、家庭用風力タービン、村落単位の小規模電力網、家庭用ソーラーシステム)のコストを下げ、競争力を持たせることだ。3つめは、ターゲット人口層に合わせてエネルギーコストを下げる方法を見つけることだ。4つめとしては、新興国の農村部において再生可能エネルギーの安定した市場を創出するために、より良質で強力な技術協力が必要となる。これらはすべて高潔で必要不可欠な目標であり、いずれも実行されなければならない。

だが国連は世界規模のエネルギー政策を策定する役割に適任か?

宣言では、再生可能エネルギーの推進に向けた世界規模の制度的枠組みを強化する努力が行われる主な場として、リオ+20サミット(正式名称は「2012年国連持続可能な開発会議」)に重点が置かれている。

最大の問題は、エネルギー問題における国連の権限が弱いことだ。宣言では、2009年に国連事務総長によって創設されたエネルギーと気候変動に関する諮問グループについて言及がある。2010年4月に発表された同グループのレポートは、2012年の国際年制定に向けて総会で行われた議論の基礎となった。課題は、同グループの提言を実行し、真の変革につなげることだ。では、必要な資金はどこから得られるだろうか?

国連はリーダーとしての役割を果たしうるが、そのためには国連機関の連携をより良くすることが必要となる。その推進のために、研究を行い、さまざまなゴールを明らかにするUN Energy(国連エネルギー)という機関間の連携メカニズムがある。同機関は知識を創出するが、実際に変革を起こすだけの権限とリソースは持ち合わせていない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と国連気候変動枠組条約も同様だ。両者とも、気候変動およびエネルギーの問題に全体としてどうアプローチできるかを検討している。

先進国以外のエネルギーシステムの構造変革にあたって実際的な力を手にしているのは、世界銀行やアジア開発銀行などの国際金融機関、加えてその他の開発金融機関だ。しかし、世界銀行がエネルギー関連プロジェクトへの投資のために新興国に行ってきた融資の方向性は一定していない。たとえば、持続可能エネルギー国際年の宣言では、以下のように触れられている。

「世界銀行グループは2010年、エネルギー部門に総額130億ドルの融資を行った。低炭素エネルギープロジェクトおよびプログラムへの貸付は初めて55億ドルを越えた」

残りはご想像の通り、高炭素エネルギープロジェクトに充てられたのだ。

まだ表舞台にあまり登場していない新しい機関としては、アブダビを本部として2009年に設立された国際再生可能エネルギー機関 (IRENA)がある。同機関の役割は、再生可能エネルギーの導入を推進することだが、主な手段は情報の普及である。

かつてOur World 2.0で議論した通り、世界のエネルギー分野で圧倒的な力を持っているのは、経済協力開発機構(OECD)に加盟する国々を取りまとめている国際エネルギー機関(IEA)、そして石油輸出国機構(OPEC)である。石油の問題になると、これらの2つのグループは、さらに消費国と生産国に分けられる。だが、これでもまだ、中国やブラジル、インドなどの重要な経済国、それに全ての途上国が抜け落ちている。

ピークオイルを世界エネルギー戦略に含めること

グローバル規模のエネルギー戦略を推進するには、これまで挙げたような機関の結束が不可欠であり、そのゴールは低エネルギー計画の策定とすべきである。低エネルギー計画とは、各国がどのように協調して石油枯渇の問題に取り組むかを規定した石油減耗議定書のようなものだ。

皆さんもお気づきかもしれないが、概して国連は文書でピークオイルに言及することはなく、どちらかといえばエネルギー安全保障という言葉を好んで使う。そこでシャロン・アスティーク氏のような論者は、なぜ国連はエネルギー枯渇問題について考えないのかと疑問を投げかけている。同氏は次のように論じている。「現時点において国連は、エネルギー資源とその将来について包括的な研究を行っていない。これは恥ずべき問題だ。私たちは自らを取り巻く真の問題を明確に理解することもなく、来る世紀に備えている」

アスティーク氏は次のように述べている。「私たちは、グローバル化が進む社会ではなく、むしろグローバル化に逆行する社会に向けて備えなければならない。それは、気候変動とピークオイルが同時にやってくることにより、新たな場所で新たな貧困と闘う社会だ。あらゆる人権は迫り来る変化の影響を免れないだろう。エネルギー枯渇に不意打ちを食らって手にしているものを失うのが嫌なら、低エネルギー社会でそれらを持ち続けられるように準備しなければならない」

彼女は、国連がエネルギー枯渇に関してリーダーシップの役割を担うことを期待している。なぜなら、国連は「世界の政策に影響を及ぼせる最も強力な機関の1つであり……国連の活動は、女性の権利から内戦、水資源から世界の飢餓といった一連の問題に対して、各国政府やNGOがどのように取り組むべきかを教えてくれる」からだ。

つまり、アスティーク氏によれば、国連が「エネルギーと資源の問題をもっと全体的に理解し、すべての組織にそれを浸透させること」が不可欠である。同氏は、「気候変動と同様に、ピークオイルも私たちの社会を大きく変える。それにどう対処していくかについて、私たちはあまりにも知らなさすぎる」と言う。

2012年すべきこと

ピークオイルの始まりに備えることを含め、世界的なエネルギー問題に真剣に対応しようとするのであれば、最善の方法は、「エネルギー枯渇とすべての人のためのエネルギーアクセスに関する国際タスクフォース」のようなものを設立することかもしれない。この2つは相反するものと見なしてはならない。

このようなタスクフォースがリオ+20に合わせて会合を開き、これまでに述べたすべての関係機関を一堂に集めることもできる。その中には、国連の関係機関のほか、世界銀行などの金融機関、IEA、OPEC、IRENA、さらにはIPCC、大手エネルギー企業、国際NGOなどの関係機関が含まれる。

2012年1月にアブダビで開催されるワールド・フューチャー・エナジー・サミットは重要な会合だ。これは、すべての人のための持続可能エネルギー国際年の幕開けを公式に告げるものであり、重要人物がスピーカーに名を連ね、多くの主要団体が参加を表明している。サミットの終わりに発表されるThe World Future Energy Outlook(ワールド・フューチャー・エナジー・アウトルック)は有益な文書になるだろう。IEAの主席エコノミストでピークオイルについて公の場で語っている数少ない高官の1人であるファティー・ビロル氏が基調講演を行い、自身の懸念を語ることになっている。おそらくAssociation for the Study of Peak Oil and Gas(ピークオイルおよびガス研究協会)のメンバーもアブダビに姿を見せ、会議に参加するだろう。その中には、私たちはすでにピークを越えていると考える人も多い。会合が実りあるものになることを願いたい。

2012年に目指すべきゴールの1つは、私たちを取り巻く困難なエネルギーの状況を、国際社会ができるだけ明確に理解することだ。関連するエネルギーのデータソースはすべてリオ+20に提出して、検討を行うべきである。その中には、IEA、米国エネルギー情報局、BP世界エネルギー統計などによるものが含まれる。将来のエネルギー情勢に関する予測は共有し、その際にはすべてのデータと仮定条件を公表して、他の人たちも分析ができるようにする。また、英国エネルギー研究センターによる2009年世界の石油枯渇問題に関するレポートのような研究は、すべての参加者の必読資料にすべきだ。

2012年は、私たちが直面しているエネルギー問題の現実を、国際社会がついに認め、多くの国が行動を起こすことを決意する年になるだろうか?

「そんなことは絶対に起こらない」と思われるかもしれない。南アフリカのダーバンで行われた気候変動会議で起こったことに目を向けてみるといい。COP17とは、気候変動枠組条約の締約国が話し合いを続けて17年目を迎えたということだ。急激に進行する気候変動をどのように阻止すべきかについてさえ、各国は合意できないのに、グローバル規模のエネルギー戦略で足並みを揃えることなどできるだろうか? そう考えるのも無理はない。

しかし実は、先に述べたようなタスクフォースの会合がリオ+20と同時に開催されるだけでも大きな意義がある。それによって世界のリーダーは、私たちを取り巻く困難なエネルギー状況の現実を、今は都合よく無視できる(実際に無視している)にしても、目を覚まさざるをえないだろう。

さらに言えば、このエネルギー問題は、石油価格の高騰という形で私たちが抱える金融や経済の問題の核心近くに位置しており、景気後退が続く原因になっている。また、この問題は、より低エネルギーの未来、よりグリーンな経済、すべての人へのエネルギー提供、貧困の根絶に向けて私たちがどのように歩み始めるかにおいても鍵となっている。後者については、すべての人のための持続可能エネルギーの国際年は、エネルギー問題とその他の問題を結びつける絶好の機会だ。しかし、正しい方向に進み始めるためには、私たちはまず、エネルギーの未来には制約があることを認め、その制約と折り合いをつけていくことを計画しなければならない。

間違ったやり方をすれば、残された資源を奪い合うということになりかねない。そのような争いの結果は間違いなく悲惨なものになる。

だが、今、手を携えて行動すれば、私たちは気候変動を悪化させることなく、持ちうる限られたエネルギーで、すべての人のクオリティ・オブ・ライフを高めることを目指していける。皆さんは、2012年、どのようなことが起こってほしいと思われるだろうか?

翻訳:ユニカルインターナショナル

Creative Commons License
すべての人のための持続可能エネルギー by ブレンダン・バレット is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

ディスカッションに参加しよう

著者

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

ディスカッションに参加しよう