少なくなった修理屋さん

私の家族の誰もが等しく愛用している電子機器が我が家に1台あるとしたら、それはステレオだ。音楽やラジオを聴くことは私たちの最大の楽しみの1つである。夫のボブと私は結婚して間もない頃、お祝い金でこのステレオを買った。私たちは製品を吟味し、この国で作られたステレオを選んだ。それは50年間は持つだろうと思われた製品だった。

結局、持ったのは10年だった。まずは操作ボタンが利かなくなり、次にスピーカーのワイヤーが何本かショートした。今年、私たちは修理に出すことにした。そこでメーカーに問い合わせてみた。

「その製品はもう修理できません」とメーカーの担当者が私に告げた。ところがボブと私にとってはラッキーなことに、その会社は「グリーンな」企業イメージにこだわっていて、自社の古い電子製品の下取りプログラムを実施している。我が家のステレオを下取りし、新製品を500ドル値引きしてくれるのだ。私は、新しい製品もまだ国内で製造されているのか尋ねた。社員は口ごもりながら答えた。「実は、違うんです……」

私たちは家庭用の娯楽機器を専門に扱う近所の個人商店を訪ねてみた。ステレオ、それも良質のステレオを探していると店員に説明した。すると私たちは、ステレオが過去の遺物であることを知らされた。今や、コンピューターと直接連動した新しいBluetoothワイヤレス・スピーカーで音楽を聴かなくてはならないそうだ。そのシステムはインターネットを通じて音楽やラジオを流すという。つまり、私たちは古いステレオを捨てて、新しいテクノロジーを買うべきなのだ。

「でも、うちのインターネット回線はすごく遅いんです」、私は説明し始めた。「それに、家の中でも私たちの部屋がある側には回線が通っていません」。店員は私の話を遮って話し始めた。彼の答えは、無線信号を強め、私たちの部屋まで信号が届くようにする別売りの電子装置という解決策だった。

「でもラジオを聴いている間、コンピューターやインターネットをつないだままにするのは嫌なんです。それに、私たちの部屋側にインターネットは欲しくありません」。変人と呼ばれてもいい。私は四六時中「オンライン」でいたくないのだ。しかも、たかだか放送波に乗った地元のフォーク音楽を聴くために、電子機器を4台も(ルーター、コンピューター、無線ブースター、Bluetoothサウンド・システム)使いたくない。

「お客さん、アーミッシュですか? 時代は変わっているんですよ」。店員は辛らつな言葉を私に投げつけた。

言うまでもなく、彼は商品を私たちに売ることはできなかった。

クラインバーガーさんに電話すべきだと教えてくれたのは母だった。長年クラインバーガー夫妻は、コブルスキルのメーン・ストリートで電気店を開いていた。私は幼い頃にその店に行ったのを覚えている。店には2~3台のテレビがあり、ラジオも3~4台あったかもしれない。クラインバーガーさんは新製品の販売には力を入れていなかった。彼の本当の収入源は電子機器の修理だった。テレビ、ラジオ、ビデオデッキ、電気フェンス用充電器など、ありとあらゆる電子機器の修理である。しかし徐々に、修理の仕事は減っていった。

「工場はもう修理業者を公認していないんだよ」。クラインバーガーさんは電話で私に説明してくれた。「昔はメーカーが自社製品の修理やメンテナンスの訓練を私たちに行っていた。そんな会社はどこにもなくなってしまったよ。メーカーは顧客に次の新製品を売りたいんだ。君のステレオを見てあげるけど、直せる約束はできないな」、と彼は言った。

ボブと私はダメで元々だと考えた。ステレオをクラインバーガーさんの農場まで持っていくと、彼はキッチンカウンターの上へ置いていくようにと言った。そこには近所の農民たちが持ち込んだ電気フェンス用充電器が山のように置かれていた。

数週間後、私はクラインバーガーさんに電話で進捗状況を尋ねた。「メーカーの誰も、私とまともに話をしようとしないんだ」と彼は不満をもらした。「ステレオのケースを壊さずに開く方法を知りたくて、メーカーに2度電話したけれど、情報を開示しないように厳しく指示されていると言われた。でも、君が新製品を買いたいなら、古いステレオを買い取ってくれるよ。もったいないけどね。このケースを開けられれば、ほんの数ドルの部品交換でまず間違いなく修理できるからさ。新しいステレオは数千ドルもする」

クラインバーガーさんは諦めなかった。彼はメーカーに電話をかけ続けた。しかも何度も。数週間前のある日、私の電話が鳴った。電話に出ると、クラシック音楽が聞こえてきた。

「聞こえるかい?」電話の向こう側からクラインバーガーさんの声が聞こえた。「君のステレオの音だよ。これは実に素晴らしい逸品だ。部品は1つ残らず標準的なアメリカ製で、簡単に交換できたよ」

クラインバーガーさんは修理に至るまでの経緯を話してくれた。彼はメーカーに6回、電話をかけ、そのたびに同じ情報を得ようとした。ケースを壊さずに開く方法だ。

毎回、メーカー側の答えは同じだった。「そのステレオはすでにサービス対象外で、お問い合わせの情報はご提供できません。ですが、弊社の下取りサービスについてなら、喜んでご紹介いたします」最終的に、話し好きのクラインバーガーさんは、おしゃべりで相手を根負けさせることにした。「私の全人生を話してやったよ」と彼は言った。彼の修理店のこと、奥さんのこと、奥さんはアルツハイマー病で彼が介護していること。また、自分の家で電子機器を修理していること。電子機器の修理の歴史やアメリカの製造業のこと、彼が飼っているネコたちのこと。

「相手をイラつかせてやろうと思ったんだ」と彼は言った。彼の笑顔が受話器越しに見えるような気がした。「そうすれば、他の担当者に電話をつないでくれるかもしれないと思った。実際、そうなったよ。私は電話の相手が変わるたびに同じことをやり続けた。だけど、最初に必ず『あなたはこの会社に勤めて何年になります?』と尋ねたよ。最後に電話に出た男がジョシュだった。君があのステレオを買った頃から会社にいた人物だ。それまでに電話に出た担当者の誰よりも、ジョシュとは長く話したよ。彼なら助けてくれると思った。彼はステレオがアメリカで製造されていた時代を覚えていたんだ」

ジョシュさんは関連情報を開示する権限を持っていなかった。しかし、クラインバーガーさんと同じように、彼も電子機器を愛していた。彼らの愛情は、あまりに多くの人々に不要な品々を買いに走らせるようなテクノロジーへの偏狭な執着心とは違った。ジョシュさんとクラインバーガーさんには共通の情熱があった。それは物作りや、適切な部品が質の高い機器を生み出すことや、問題を解明し修理方法を編み出す喜びに対する情熱である。ジョシュさんは限界まで粘った。情報を開示するなと厳しい指示を受けている旨をクラインバーガーさんに再度伝えた。下取りサービスについても話した。しかし2人が共有する情熱のおかげで、クラインバーガーさんが必要な情報は次第に明らかになった。そして、ステレオは直ったのだ。

最近、私はジョシュさんとクラインバーガーさんのことをよく考える。毎朝、私のメール受信箱は緊急メッセージで一杯だ。例えば、生態学的に有害な慣習の停止を求めるオンライン嘆願書、地球を守るための政策変更のオンライン嘆願書、ホッキョクグマの保護を求めるオンライン嘆願書などだ。ところが、ジョシュさんやクラインバーガーさんのような人たちの保護を求めるオンライン嘆願書は見たことがない。私はホッキョクグマのことも心配だが(そしてもちろん、私はその嘆願書に署名する)、ジョシュさんやクラインバーガーさんらは、その存在自体、絶滅の危機に直面した人々であり、私たちが注意を向ける価値のある存在なのだ。

ホッキョクグマは私たちの生活様式や環境破壊、使い捨ての消費文化のせいで危機にさらされている。そしてジョシュさんとクラインバーガーさんは全く同じ問題と闘っており、彼らは陰のヒーローなのだ。彼らは、物を修理して使い続ける文化の根強い名残である。そして、私たちはそのような人々をコミュニティーに取り戻す必要がある。

「下取り」サービスを実施するメーカーは、消費者市場では地球に優しい企業のように映る。しかし実際には、より多くの消費を促しているだけだ。より市民的で、生態学的に健全なアプローチとは、個人の修理業者に再び仕事を依頼することだ。

地元に修理店があれば、地域内で金銭が循環するだけでなく、住民は生活費を抑えることができる。しかも大量消費のレベルを抑制できる。

修理ができる人々が近くにいれば、私のステレオは今から優に50年……、ひょっとしたらそれ以上、持つかもしれない。でもどうだろう。残念ながら、ステレオどころか、そういう人々も、この国は作らなくなってしまったようだ。

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本稿はYes! Magazineのご厚意で掲載されました。

翻訳:髙﨑文子

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少なくなった修理屋さん by シャノン・ヘイズ is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
Based on a work at http://www.yesmagazine.org/blogs/shannon-hayes/the-endangered-repairman.

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著者

シャノン・ヘイズ氏は『Radical Homemakers: Reclaiming Domesticity from a Consumer Culture(急進的な主婦:消費者文化から家庭生活を取り戻す)』、『The Grassfed Gourmet Cookbook(草で育てられた肉のグルメ料理本)』、『The Farmer and the Grill(農民とグリル)』の著者である。近著に『Long Way on a Little: An Earth Lover’s Companion for Enjoying Meat, Pinching Pennies and Living Deliciously(小さな工夫で違いを生む:肉料理を楽しみ、出費を切り詰め、おいしい食生活を送るための地球を愛する人のガイドブック)』がある。シャノンはGrassfedcooking.comとRadicalHomemakers.comを運営し、家族と共にニューヨーク州北部のサップ・ブッシュ・ホロウ農場で生活し働いている。

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