オンライン気候変動活動家の台頭

今年12月にコペンハーゲンにて開催される第15回締約国会議(COP15)は、アクティビズムの急激な高まりを促したようだ。特にソーシャルメディアを通じた活動が著しい。

COP15は歴史的な会議であり、「成功するか干上がるか」の会議と呼ぶ者もいる。当会議が近づくにつれ、世界中の新旧の環境運動団体によって、インターネットを利用したプロジェクトが次々と生み出されている。会議前に気候変動に対する世界の認識を高め、各国指導者たちに影響を与えようというのだ。

そのような活動の中で私たちのお気に入りの一つが、世界を救うための1分というビデオ・コンペティション&フェスティバルである。気候変動に対する作者の考えを表現した映画を募集している。名前からもわかるように、映画の長さは1分間。イギリスの組織WeCANが始めたコンペだ。エントリー作品は著名な科学者・作家・映画プロデューサーからなるグループによって審査され、15の入賞作品が選ばれる。回顧的ドキュメンタリー映画「エイジ・オブ・ステューピッド(the Age of Stupid)」のフラニー・アームストロング監督も審査員の一人だ。

地球市民であるあなた方にも、映画を審査するチャンスがある。気に入ったエントリー作品にオンラインで一票を投じることができるのだ。あなた方の投票でさらに5作品が選ばれる。そして計20の入賞作品の中から最終的に3作品が選ばれ、コペンハーゲンの会議でスクリーン上映される。新進の映画作家たちは急いだ方がいい。コンペは10月30日が締め切りだ。ウェブサイトにはすでに、楽しめて考えさせられる作品がたくさんアップされているので、是非ともサイトを訪れてみてほしい。

他に注目したいプロジェクトとして、ノーベル賞受賞者ラジェンドラ・パチャウリ博士が主催者の一人となるEarth Journalism Awardsがある。パチャウリ博士はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の議長だ。

「Seal the Deal(協定に合意を)」決着の時迫る

国連もまたCOP15の進行役として、非常に活発な独自のサイト「Climate Change Gateway」を通じてコペンハーゲンへの準備を進めている。当サイトに含まれている国連唯一の気候変動ブログ(これ!)も、当然ながら是非推薦したいお勧めのウェブページである。

国連は「協定に合意を!(Seal the Deal!)」という、タイトルからして精力的な請願書を開始し、コペンハーゲンでの公正な合意達成を求めている。当イベントを始めて数か月経つが、残念ながら世界中でまだ7万人に満たない署名が集まったにすぎず(この記事を発表する現時点において)、当キャンペーンが目的とする影響を与えるには、まだ課題が山ほど残っているといえよう。

幸いなことに、インターネット上の活動家が署名できる請願書は、Seal the Dealだけに限らない。国際的な市民支援団体であるAVAAZ(最近あちこちで耳にする「Global Wake-up Call」を仕掛けた団体)は、グリーンピースやアムネスティー・インターナショナルなどの団体と共にTckTckTckというキャンペーンに関わっている活動団体の一つだ。TckTckTckもまた請願書によってコペンハーゲンでの公正かつ拘束力のある協定を求めており、これまでに100万人以上の署名を集めている。

しかしながら、ここで生じる一つの問題は、「公正かつ拘束力のある」という表現が非常に曖昧であるため、基本的に誰でも署名できてしまうという事実だ。TckTckTckキャンペーンの政策提案がいかに詳細を欠き不適切であるかを論じたアレックス・エヴァンス氏の批評(NGOs and climate change: shall we all just go home?)は一読の価値がある。

また同じくTckTckTckのパートナー団体である350.orgは、地球規模の温室効果ガス排出量を350ppm(一般的に「安全」と見なされる、大気中のCO2濃度レベル)に削減するための集団的行動の必要性を呼びかける。連携のネットワークを世界中に広げようとする350.orgの試みは確実に前進している。彼らの世界地図「アクション・マップ」を見てもわかるように、10月24日のInternational Day of Climate Action(インターナショナル・クライメート・アクションの日)に向けアフリカやアジア諸国で様々なアクティビズムが起きている。

香港だけでなく北京や広州にもオフィスを構えるグリーンピース・チャイナは、8月28日に、コペンハーゲンでの会議まであと100日であることを記すため、北京に100体の氷像を設置した。氷像は、揚子江、黄河、ガンジス川の氷河が溶けた水から造られ、氷像の溶けていく様は、溶けつつあるヒマラヤ氷河の深刻な状況を象徴している。

よく知られている国際的なキャンペーン(もちろん英語で書かれたもの)は、今のところ、そのほとんどがアメリカ合衆国かイギリスで始まったものだ。しかし世界中の団体が気候行動ネットワーク(CAN)を通じて連携し始めており、現在CANは450以上の参加団体を誇る。

システムを変える

これまで言及した動きのほとんどは、おおまかにまとめると、主にインターネットを通じた連携と、各国指導者たちを行動へと動かす支援運動によって、内側からシステムを変えようとするものだ。それに対しClimate Justice Actionなど、より反対意識の強いグループは、抗議者の心得を用意し、コペンハーゲンで各国指導者に対して昔ながらの街頭抗議を起こそうと準備している。

破たんしたシステムを直そうとするのではなく、以下のことをすべきであるというのが彼らの主張だ。

これらはどれも非常に崇高な目標ではあるが、問題はこれらをどうやって実行するかということだ。どれくらい早急に化学燃料離れをするべきなのか。エネルギーを分散化するのにどのくらいの時間がかかるのか。世界の人口は2050年には90億人になっているといわれているが、リローカライズした食糧生産システムでそれだけの人々にいかに食糧を供給するのか。

皮肉なことに、地球上のどこかに必要最低限の人数を集めて抗議団体を組織しようとする際、すべての人をその場所に結集させるために大量の温室効果ガスが排出される。公正を期していうならば、Climate Justice Actionネットワークは、可能な限り飛行機の利用を避け、より持続可能な交通手段を使うよう呼びかけている。COP15に参加する何百人もの政府関係者および国連代表団の人たちにとって、信頼性の問題はさらに深刻だ。彼ら自身が会議への往復に(会議中の移動にも)大量のCO2を排出することになるのだ。これでは会議で実質的な結果を生まないことには、世界の人々は当然納得しないであろう。

気候変動とCOP15により、何よりも、アクティビストの新しい世代の運動を後押しした。African Youth Initiative on Climate Changeも、そのような若者たちの活動の一つだ。しかし、彼らへの資金援助は明らかに不足している。南半球の開発途上国における非政府団体によるアクティビズムを維持し、そのようなグループが集まりに出席し、ウェブサイトを更新するために必要な資金である。ひとつ確かなのは、様々なオンラインの通信手段によって、先進国と開発途上国の若いアクティビスト間の連携の可能性が生まれ、実際それが行われていることだ。イギリスとケニアのコペンハーゲン青年代表団同士の協力によって、共同資金集めが成功し、12月の話し合いの場にイギリスと並んでケニアのグループも参加できるようになることを期待したい。

もちろん今回の記事ではCOP15に向けた数多くのプロジェクトの中から、ごく一部を取り上げたにすぎない。もし他にも注目すべきプロジェクトがあれば、是非このサイトの読者のみなさんに紹介してほしい。また、みなさんご自身の意見も歓迎する。これらのキャンペーンは、コペンハーゲンでの交渉に影響を及ぼすと思われただろうか、それともそうは思われなかっただろうか。この記事を読んで、なにかの活動組織に参加したり、請願書にサインしたりしたい気になっただろうか。みなさんのコメントを楽しみにしている。

12月7日に始まる重大な会議へのカウントダウンをしつつ、私たちはこれからもコペンハーゲン関係のレポートを発信していくつもりだ。どうかよろしく。

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著者

マーク・ノタラスは2009年~2012年まで国連大学メディアセンターのOur World 2.0 のライター兼編集者であり、また国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)の研究員であった。オーストラリア国立大学とオスロのPeace Research Institute (PRIO) にて国際関係学(平和紛争分野を専攻)の修士号を取得し、2013年にはバンコクのChulalpngkorn 大学にてロータリーの平和フェローシップを修了している。現在彼は東ティモールのNGOでコミュニティーで行う農業や紛争解決のプロジェクトのアドバイザーとして活躍している。