21世紀水の展望

水の確保は21世紀の世界的緊急課題のひとつだ。人口が増加し人々がより豊かになるにつれ、水の需要は大いに高まるが、それと同時に水へのアクセスとその質にますます大きな負担がかかっている。その背景には、気候変動やエネルギー不足、土地活用の問題、また産業プロセスや鉱石の加工過程で水が必要とされることがある。

増加する人口に対応するため、そして次世代へ蓄えを残すために必要なのは、現在私たちが行っている真水の利用をより良い方法で管理し、将来に向けて状況に適した利用環境を整えることだ。

水の計量

地球の人口67億人が1年間に消費する真水の量は約4,500 km3 (4.5兆リットル)。おおよその消費内訳は、家事に約10%、食品生産に約70%、産業プロセスに約20%である。この数字は、年間の降水利用が5%にも満たないことを意味する。

地球上に存在する水のうち、真水は全体の約2.5%、約3,500万km3(1 km3 = 264.2 x 109 米ガロン)でしかない。そのうちの95%は氷河や氷冠として凝固(今のところは)しているか、地下深く(地表から約1km未満)にある。残りの2.5%は雨として地上に降るが、川などに流れ込み地表水として利用できるのはその24%ほどでしかない。

さらに、雨水として地上に降ってもそのほとんどが遠隔地であるため、人間の生活に利用しやすいかたちで得られる水の量は陸地への降雨量全体の10%ほど(約 9,000–12,000 km3)しかないのである。

影響

真水の利用にマイナス影響を与える3つの大きな要因がある。第一に、気候変動による氷河の縮小だ。氷河から溶け出す水の利用機会を減らし、海面上昇による地表水の塩化を引き起こし、膨大な量の水を有する森林は、野火の増加で危機にさらされている。

第二は、人口の増加と急激な都市化により消費が伸び、水の需要が増えたこと。第三は、例えば肉の消費の増加など、現代のライフスタイルが大量の真水を必要とする行動を増進させるものであるということ。米を生産する伝統的な文化にも同じような傾向が見られるケースがある。

伸び続ける水の需要を目の当たりにする一方で、私たちは厳しい供給上の制約にも直面している。世界資源研究所の調査では、世界人口の41%にあたる23億人は頻繁に水不足に陥る地域に住んでいることが明らかになった。こういった地域では年間1人当たりに供給される水の量が1,700 m3(1,700,000リットル)以下となっており、水不足被害地域と定義されている。

水 = エネルギー

エネルギーのおかげで、水はほぼ普遍的に手に入る。水を得るために掘削し、井戸や地表水域から水を汲み上げ、処理施設に送り、濾過・浄化して消費者に運ぶためにエネルギーが使われている。時には源泉から消費者に届くまで何百キロメートルもかけて運ばなければいけないこともある。長距離になればそれだけ必要なエネルギー量もかさむ。

逆に、エネルギーを生産する際に水が不可欠となる場合もある。その1つが熱電気発電所における冷却水としての需要。ニーズは大いに伸び始めている。

エネルギーと水の関係について理解を深めるには、それぞれの使用をフットプリンティング(使用量の測定)することが有効だろう。フットプリンティングは水またはエネルギーの必要量について様々な選択肢を比較する良い手段になりうる。また、援助するにあたりふさわしい技術と戦略を検討する上でも意思決定をする人々の役に立つ。

確かに、風力や太陽光など、水の消費が少なくすむエネルギー設備へ大々的な転換を図れば相当量の水を節約できる。フットプリントの測定を試みることは可能だが、明らかに今より多くのデータが必要だ。

持続可能な水の管理をするにあたり、土壌水分や地下水などに注目した自然の水循環も考慮するべきである。また、特に都市中心部を対象に、飲料用とその他の目的別に水の供給を分ける計画を検討することも革新的なアプローチだ。

水の供給と処理を集中化すれば、その運営とメンテナンスにおける不具合のリスクを低減することができ、公的に管理しやすくなる。そのためには、産業プロセスにおける水のリサイクル利用も含め、より綿密な水の管理が必要となる。さらに、雨水の回収、排水の分別回収、水の再利用をすることで、よりよい計画とそのオプションを将来に向けて提示できる。

仮想水

需要供給分析をより複雑にするのが仮想水取引だ。製造の過程で水が使われた商品がある所(地域または国)から別のところに輸出される取引だ。仮想水は特に世界の農産品貿易において重要である。また、度々勃発が予測された「水戦争」がほとんどの場合実現しなかったのも仮想水が主な理由かもしれない。キングス・カレッジ・ロンドンの社会科学者トニー・アラン氏は、国が豊かになるとより多くの水を必要とするが今日では水の不足分を食糧の輸入で補うことができるということを明らかにした。

いづれにしても、仮想水取引は持続可能な水の管理を複雑にしてしまう。なぜなら、仮想水取引には河川の流域や特定できない場所など、様々な方法で水の提供を試みる水供給のプランナーや政府のコントロールが及ばない地域が関わってくるからだ。

これからの流れ

持続可能な水の管理には優れたバランスが必要だ。供給と需要、来年と何十年先の未来、水の量と水の質、それらを保つバランスである。これは容易なことではないが、水管理の専門家にとっては精通した問題だ。

これらの複雑な事態は問題のほんの一部にすぎない。水の供給がその他資源(エネルギー、土地、鉱物)の供給と相互作用することからも制約が生じる可能性があるのだ。

このような作用は持続可能な水管理をする上で新たな障害をもたらす。そこには科学と政府機関をまたぐ相互協力関係が必要だ。21世紀はダイナミックに展開し始めた。これは非常に難しい課題ではあるが、問題をなおざりにすることは水管理の失策を結論付けてしまうようなものなのだ。

翻訳:浜井華子

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著者

この記事は、Thomas E. Graedel氏とEster van der Voet氏により編集された近日出版予定の書籍「Linkages of Sustainability (持続可能性の連鎖)」(Massachussetts Institute of Technology Press、2010年)第17章「Stocks, Flows and Prospects of Water(水の貯え・循環・展望)」に基づき書かれています。著者の全リストは上記のリンクから章をダウンロードしてご覧下さい。この書籍には2008年にフランクフルトで開催されたErnst Strüngmann Forumの内容が収められています。

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  • 川端 紀子

    水に関する産業の発生した理由はなんだったのでしょうか。
    自然環境に恵まれた地域が、経済発展を実現した地域へ享受している資源を提供することで、相互に発達する機会を共有できるのが理想です。

    水が産業として生活を潤し、新たな産業が発生し、
    それを巡る都市計画も発達し、大きく飛躍するチャンスが生まれるのならば、
    素敵なことだと考えます。