ジャガイモ、トウモロコシ、米の収穫量下落

気温上昇と予測不可能な降雨量は、開発途上諸国におけるトウモロコシ、米、小麦の収穫の急落を招く。そのため、農民は異なる作物を育てる必要に迫られるだろうと農業専門家たちは予測している。

上記の3作物は世界の主要な摂取カロリー源である。しかし今後は、何を栽培し、何を食べるかに関するアプローチをすべての地域が変えなくてはならないと、研究者たちは報告書『Recalibrating food production in the developing world(開発途上諸国における食料生産の再調整)』 で述べた。同報告書は、世界で最も重要な商品のうち22品目に気候変動が与えかねない影響を分析している。

国際農業研究協議グループ(CGIAR) のアナリストたちによると、農業と食料生産は最高で1万7000メガトンの二酸化炭素(世界の温室効果ガス排出量の29パーセント)を放出しているという。しかし、私たちは食料生産に関連した排出量を削減しなければならないと同時に、気候変動によって、特定の作物や家畜が育てられている地域に関する「根本的な再調整」を迫られるだろうと、同報告書は述べている。

「食料関連の温室効果ガス排出と、翻って言えば気候変動が農業と食料システムに与える影響によって、私たちは食料の生産方法を大幅に変更しなければならないでしょう。こうした変更の影響は世界の地域によって劇的に異なりますが、どの地域も、何を栽培し、何を食べるかに関するアプローチを変えなければならなくなるでしょう」と、CGIARの気候変動プログラムで研究主任を務めるソンジャ・ヴェルミューレン氏 は語った。

CGIARの研究者たちによると、気候変動の影響で、開発途上諸国におけるかんがい農地での小麦の収穫量は13パーセント減少する可能性がある。かんがいは厳しい環境条件下での小麦の生育を助けるかもしれない。しかしそのために必要な水の量は、水資源に持続不可能な負担を強いる。農業はすでに世界の淡水使用量の70パーセントを占めている。

貧困諸国における水稲の生産量は15パーセント減少する可能性がある。アフリカでは、トウモロコシの収穫量は10~20パーセント減少する可能性がある。トウモロコシは高温にあまり適さないためだ。世界第4位の食用作物であるジャガイモは、涼しい気候条件が最も適しているため、このまま気温が上昇していけば、基本的な栄養摂取がすでに困難な地域での収穫量は減少する可能性が高い。世界のジャガイモ収穫量の半分以上はインドや中国といった開発途上国で生産されている。

気候変動によって栽培条件が不安定になる中、世界の人口は2050年までに70億人から90億人に増えるため、農民は生産量を増大しなければならない。つまり、農民は収穫量を増やしつつ、温室効果ガスの排出量を削減しなくてはならず、そうしなければ食料生産はさらに脅かされるという状況だ。

報告書は、数種の丈夫な作物を挙げ、気候変動に影響を受けやすい作物に代わるものとして検討しなければならないかもしれないと述べている。大麦は高温や干ばつに強い上に土壌の塩分への耐性があるため、魅力的な選択肢である。しかし、どの程度の悪条件に耐えられるかを見極めるためにさらなる研究が必要だ。キビ、ササゲ、レンズマメも、厳しい環境条件に耐えられる栄養価の高い食料だが、乾燥への耐性は限られている。

「要するに大規模な調査を行い、気候変動の影響を考慮に入れて農業生産を再調整する、対象を絞った地域別のアプローチを開発する必要がある。場合によっては、農業従事者は全く新しい作物を取り入れる必要が生じる可能性がある」と報告書は述べている。

しかし、新しい作物への転向は人々の好みには合わないかもしれない。例えばケニアの人々はトウモロコシ(イギリス人が馬の飼料として持ち込んだ作物)の味を好む。彼らがトウモロコシではなくキビやキャッサバで作ったウガリポレンタに似た料理)を食べるには、説得が必要かもしれない。「こうした文化的課題は、気候変動の適応策が持つもう1つの側面であり、作物の栽培と同等の注意を向けるべきである」と報告書は述べた。

「農民や食料生産者が今すぐ適応策を講じれば、今回の調査で明らかになった食料生産や配分に関する暗澹たるシナリオの一部から、かろうじて逃れることができるという点は朗報です。しかし、作物や地域によって異なる、複雑で相互に関連した諸問題に、農民や食料生産者が単独で立ち向かうことはできません。彼らにはトップレベルからの支援が必要なのです」と、報告書の筆者であるフィリップ・ソーントン氏 は語った。

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この記事は2012年10月31日にguardian.co.ukで公表したものです。

翻訳:髙﨑文子

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著者

マーク・トラン氏は国際ニュースのレポーターであり、ガーディアン紙の特派員記者としてワシントン(1984~1990年)およびニューヨーク(1990~1999年)で活動した経歴を持つ。

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