サウジアラビアの石油埋蔵量は
過大評価と暴露

リヤドのアメリカ大使館発の機密文書によると、世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアは石油価格の高騰を防ぐほどの埋蔵量を持たないかもしれず、アメリカがその状況を憂慮しているという。

ウィキリークスによって公開された文書は、サウジアラビア国営石油会社の上級責任者を務めた人物による警告を深刻に受け止めるようにアメリカ政府に強く促している。その警告の内容は、サウジアラビアの原油埋蔵量は実際よりも最大3000億バレル、すなわち40パーセント近く多く評価されているかもしれないというものだ。

この数週間、石油価格は世界的な需要増加と緊迫した中東情勢を受けて1バレル当たり100ドル以上の値上がりを見せており、その状況下で情報が暴露された。多くのアナリストは、石油価格の高騰により需要が落ち込む恐れが生じた場合、サウジアラビアや石油輸出国機構(OPEC)加盟諸国によるカルテルは石油生産量を増やすだろうと予測している。

しかし地理学者で、サウジアラビアの石油専売会社サウジ・アラムコ社の元油田開発部長であるサダド・アル・フセイニ氏は2007年11月、リヤドでアメリカ総領事と面会し、価格上昇の抑制に必要な日量1250万バレルをサウジ・アラムコ社が生産するのは不可能だとアメリカ外交官に話した。

真実を傍受する

複数の公電は2007~2009年の間に発信されたもので、サウジアラビアは10年後には日量1200万バレルの生産量に到達できるかもしれないが、それよりも前に(早ければ2012年にも)世界の石油生産量は最大ポイントに達するだろうとフセイニ氏が語ったとされている。この転機は「ピークオイル」として知られている。

フセイニ氏は、サウジアラビアのエネルギー産業は外国投資を刺激するために採掘可能な埋蔵量を過大評価しているため、ピークオイルを迎えた時点でサウジ・アラムコ社が世界的な石油価格の上昇を食い止めるのは不可能だろうと語った。また、サウジ・アラムコ社は新たな石油を準備するのに必要な時間を大幅に少なく見積もったと主張した。

“私たちは車のハンドルを握ったまま眠っているのです。つまり私たちは、信用危機と同じくらい厄介な、あるいはそれよりもたちの悪い世界経済への脅威を無視することを選んでいるのです。”

UK Industry Taskforce on Peak Oil and Energy Securityのメンバー、ジェレミー・レゲット氏

公電の1つは次のように記している。「アル・フセイニ氏によれば、この問題の重要なポイントは2点ある。まず、サウジアラビアの石油埋蔵量は時として言われているほど豊富ではないこと。そして、生産に必要な時間はサウジ・アラムコ社やエネルギー分野の楽観主義者たちが思い描きたいほど無制限ではないということだ」

同公電はさらに次のように続く。「あるプレゼンテーションにおいて、サウジ・アラムコ社の現副社長アブドラ・アル・サイフ氏は、同社の総埋蔵量は7160億バレルであり、そのうち51パーセントは採掘可能で、20年後の埋蔵量は9000億バレルになると報告した」

「アル・フセイニ氏はこの分析を支持しておらず、アラムコ社の埋蔵量は最大3000億バレルを水増しして評価されていると考えている。彼の意見では、当初証明されていた埋蔵量の50パーセントが採掘された時点で……生産量は着実な減少傾向をたどり、どれほど対策を講じてもその傾向を止めることはできない。総生産量はまず高原状態となり、それが約15年間続いた後、減少していくだろうという」

矛盾だらけの王国

その後、アメリカ総領事はワシントンに次のように報告した。「アル・フセイニ氏は基本的にサウジ・アラムコ社の主張を否定しているが、やみくもに破滅の日を信じるような人物ではない。彼の素性、経験、見解を考慮した場合、彼の予測は徹底的に検討すべきものである」

その7カ月後、リヤドのアメリカ大使館はさらに2通の公電を発信した。「現在私たちは、サウジアラビアが現実的にどの程度の影響を長期的に原油市場に及ぼすことになるのかを問う必要がある。明らかに彼らは価格を上昇させることができるが、問題なのは、今の彼らには長期的に価格を抑制する力があるのかという点である」

2009年10月付けの4通目の公電では、サウジアラビア国内の電力需要の増大が同国の石油輸出をさらに抑制するかもしれないと主張している。「人口増加と経済成長の結果、今後10年間で(電力)需要は年に10パーセント増大すると予測される。その結果、同国は現在の発電量を倍増し、2018年には6万8000メガワットまで増やさなくてはならないだろう」と記している。

また同文書では、主要なプロジェクトの遅れや事故を「サウジ・アラムコ社が現在の地位を維持するためには、より一層の努力を傾けて現在の生産減少を改めなくてはならない現状を示す証拠」だと報告している。早まった「ピークオイル」とサウジアラビアの石油生産問題への懸念は過去にも示されたことがあったが、アメリカ政府関係者が公言したことはない。

過去2年間にわたり、上級エネルギー分析家たちはフセイニ氏を支持してきた。国際エネルギー機関の上級エコノミストであるファティ・ビロル氏は、一般原油の生産量は2020年に頭打ちになり、世界にとって「吉報ではない」開発は依然として石油に大きく依存していると昨年ガーディアン紙に語った。

UK Industry Taskforce on Peak Oil and Energy Security(ピークオイルとエネルギー安全保障に関する英国産業タスクフォース)のメンバー、ジェレミー・レゲット氏は次のように語った。「私たちは車のハンドルを握ったまま眠っているのです。つまり私たちは、信用危機と同じくらい厄介な、あるいはそれよりもたちの悪い世界経済への脅威を無視することを選んでいるのです」

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この記事は2011年2月8日火曜日にguardian.co.ukで公表したものです。

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著者

ジョン・ヴィダル氏は英紙「ガーディアン」の環境部門の編集者である。フランス通信社(AFP)、ノースウェールズ新聞社、カンバーランド・ニュース新聞社を経て、1995年にガーディアンに入社。「マック名誉毀損:バーガー文化体験 (1998)」の著者であり、湾岸戦争、新たなヨーロッパ、開発などをテーマとする書籍に寄稿している。

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  • Kaori Shimada

    世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアの原油埋蔵量は、石油価格の高騰を防ぐほど十分ではなく、埋蔵量の評価も40%近く水増しされている可能性があるとこの記事は述べている。これは、エネルギー自給率が4%(2006年時点、原子力を国産とした場合によるもの。経済産業省資源エネルギー庁「日本のエネルギー事情(2009)」http://www.enecho.meti.go.jp/topics/energy-in-japan/energy2009html/japan/index.htm)と世界的に見ても低い水準にある日本にとってもよい話ではない。
     私たちは依然として化石燃料に依存した生活を続けており、石油価格の高騰は人々の生活に影響を及ぼす切迫した問題である。しかし、近年の中東の政情不安や、ピークオイルなどを考慮すると、私たちがこのまま石油に依存した社会を続けるべきではないことは明らかである。原油市場や石油製品の生産に携わる人々を含め、私たちにとって石油資源の埋蔵量に関するこの記事はインパクトのあるものであり、代替エネルギーへの移行や開発に関する動きをより一層活発にしそうである。石油に依存した開発を続けられなくなったとき、世界はうまく対処することができるだろうか。現在の資源枯渇問題を克服していくことが今後も人類にとって課題となりそうである。