1.5度の気温上昇で永久凍土がとける?

「世界の平均気温が1.5度上昇するだけでシベリアの永久凍土の融解が始まるだろう」と2月21日、科学者たちが警告した。

シベリアの永久凍土内の広範囲の融解は、気候変動に深刻な影響を及ぼす可能性がある。永久凍土は北半球の陸地面積の約24%を占めており、広範囲の融解は数百ギガトンの二酸化炭素とメタンを大気中に放出し、大規模な温暖化効果をもたらすだろう。

しかし、そのような融解は数十年もかかるため、温室効果ガスの放出は最初のうちはおそらくはるかに小さな規模になるだろう。

オックスフォード大学の専門家を中心とする研究者たちは、シベリアの洞窟で数十万年かけて形成された鍾乳石や石筍を検証した。鍾乳石や石筍は、氷が徐々に融解する時期に雪解け水が洞窟の中に滴下して形成され、再び気温が下がり永久凍土がまた凍った時に成長が止まったものである。科学者は、鍾乳石や石筍の地球史上の様々な時代に対応する部分を切断してその成長や停止を測定することができる。

連続永久凍土の境界上にある1つの極北の洞窟の鍾乳石は、40万年前のある時期に成長したことがわかった。その時代の気温は産業革命以前に比べて1.5℃高かった。つまり、その時代に永久凍土が融解しつつあったということで、再び気温が同じレベルに上昇すれば、再び融解が始まる可能性があるというわけだ。

「1.5度を閾値にして、(今後)連続永久凍土の境界沿いで融解が始まるだろうと予測しています」と今回の研究を率いたオックスフォード大学の地球科学部のアントン・バクス氏は述べている。この地域では12万年前の時代には近代より気温が0.5〜1度高かったのだが、その時代にずっと南のバイカル湖付近の石筍は成長していたことがわかる。つまり融解していたということだ。

一方、同時期にはるか北の洞窟(北緯60度のレンスクの街の近くにあるレジャナーヤ・レンスカヤ[Ledyanaya Lenskaya]と呼ばれる洞窟)の鍾乳洞は成長していない。この気温では永久凍土は融解しなかったのである。「このことから、1.5度がどうやら転換点のようなのです」とバクス氏は推測する。

現在、世界の平均気温は産業革命前より0.6〜0.7度ほど高くなっている。バクス氏に言わせれば、気候モデル研究者は永久凍土の融解が始まる可能性をモデルに組み込むべきである。

モンゴル、ロシア、スイス、そしてイギリスの科学者のチームは放射年代測定法を用いて、洞窟内の構造を調べた。その研究は2月21日付けのScience Expressで発表されている。

バクス氏は、調査結果はこの地域に深刻な影響を及ぼすかもしれないと述べる。永久凍土の融解は天然ガスの炭鉱やパイプラインだけではなく、他のインフラにも影響を与えるからである。また、より広範な波及効果を及ぼす可能性もある。「主要課題だったわけではありませんが、研究結果によると、もし平均気温が1.5度上昇すると(それは極寒凍土まで解かす気温ですが)、隣接地域にも多大な変化が及ぶことも分かりました。モンゴルのゴビ砂漠も今日より多湿になり(得るし)、非常に乾燥した地域でも、現在のアジアの大草原地帯のようになる可能性もあります」

バスク氏はまた、気温の上昇に伴う、より正確な溶融の速度と規模を知るためにはより多くの研究が必要であるとも述べている。

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この記事は2013年2月21日に  the Guardianで公表されたものです。

翻訳:石原明子

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