NCDs(生活習慣病)の問題はヘビー級

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現在、感染症疾患がもはや世界の低・中所得国における主要な死亡原因でないということは、広く共有された認識である。

60歳未満では、心血管疾患、がん、糖尿病などの非感染症疾患(いわゆる生活習慣病。NCDs)による死亡者数が、感染症による死亡者数を上回っている。

NCDsの罹患やこれによる死亡は、公衆衛生上の重大な危機を招くものとして、数十年にわたり積み重ねられてきた低・中所得国の社会的、経済的発展を損なうだけでなく、最悪の場合には、これを水泡に帰させる恐れさえある。

世界保健機関(WHO)が発表した「非感染性疾患の予防とコントロールのための世界行動計画2013–2020」では、2008年における世界の全死亡者数5,700万人のうち、推定で3,600万人(63%)の死亡原因が非感染症疾患であり、その内訳は、最多が心血管疾患(非感染症疾患を死亡原因とする件数の48%)、続いてがん(21%)、慢性呼吸器疾患(12%)、糖尿病(3.5%)となっている。

これらのNCDsには共通した4つの行動リスク要因、すなわち、喫煙、不健康な食事、運動不足、過度の飲酒が関係している。これらのリスク要因の中でも、とくに食事と栄養は、生涯を通して健康を促進、維持していくうえで非常に重要な要素である。

特に子どもたちは、NCDsによる死亡リスクにさらされている。WHOが指摘するように、「非感染症疾患に罹患し、これを原因として死亡に至るのは、主に大人になってからではあるが、リスク要因の影響を受け始めるのは幼少期の段階である」

WHOの小児肥満撲滅委員会の見解では、「もしも健康促進、疾患予防への取り組み、総合的な医療サービスの提供などを行わない場合」、子どもたちがリウマチ心疾患、1型糖尿病、ぜんそく、白血病といった治療可能なNCDsを原因として死亡するリスクは高まるとしている。

NCDsのリスク要因であり、かつ主要因でもある肥満について世界的に見た場合、地域や、社会的状況、経済的状況の違いを背景に、その様相はさまざまである。しかし、東南アジア地域の大部分において現れつつある肥満生成環境(obesogenic environment)が、政策的な困難や複雑さを伴った課題を生んでおり、差し迫ったNCDsまん延対策としての、的を絞った協調的な公衆衛生介入が求められている。

もし公衆衛生対策および革新が経済成長のペースに遅れを取れば、雇用創出や成長促進を目的とする貿易と直接投資の拡大によって、NCDsの問題には深刻な結果がもたらされるであろう

経済的に見ると、東南アジアを形成するのは、急速な工業化を遂げたシンガポール、経済成長を続けるタイ、ベトナム、マレーシアなどの低・中所得国、あらゆる経済指標分析によって世界の後発開発途上国(LDC)に分類される貧困国であり、域内の経済格差は大きい。

東南アジアの経済発展が加速する中、グローバル化が複雑な形で不健康な食事と生活スタイルの拡大にさらに拍車を掛けている。

マレーシアのように自国のビジョン2020に従って完全な工業化を進める国があるほか、同地域の他の国々も開発の階段を上ろうと取り組んでいる中、もし公衆衛生対策および革新が経済成長のペースに遅れを取れば、雇用創出や成長促進を目的とする貿易と直接投資の拡大によって、NCDsの問題には深刻な結果がもたらされるであろう。

ニューヨークに拠点を置くシンクタンクの外交問題評議会では、次のような見解を示している。「都市化、貿易、世界の消費者市場の一体化によって開発途上国が受けてきた恩恵は極めて大きなものであり、具体的には、食糧生産と流通は拡大し、衛生状況が改善し、革新的医療も普及し、平均寿命が延びたほか、何百万人もの人々が極貧生活からの脱却を果たしている」

しかしその一方、「こうした動向によってNCDsと関連リスク要因の拡大に拍車が掛かり、その対策に必要な医療制度や規制制度の整備を図る低・中所得国の取り組みが追いつかない状況となっている」

WHOの小児肥満撲滅委員会による報告書、非感染性疾患の予防とコントロールのための世界行動計画、食事、身体活動、健康に関する世界戦略、第2回国際栄養会議(ICN2)ローマ宣言には、政策提言が盛り込まれており、その多くは、経済成長と健康推進の取り組みの間に生じている摩擦の問題に重点を置いている。

さまざまな国の政策上の不備を解消するには、クアラルンプールに拠点を持つ国連大学グローバルヘルス研究所(UNU-IIGH)を始めとしたシンクタンクが、東南アジアの主要な大学、研究機関などの知識共同体と連携し、とりわけ以下の課題に取り組むための戦略に改めて焦点を合わせる必要がある。その課題とはすなわち、NCDsの拡大要因である貿易・投資・グローバル化の政策上の影響、肥満の予防および管理ツールとしての持続可能な開発目標(SDGs)の可能性と限界、自発的に行う塩分(ナトリウム)摂取量の30%削減や飽和脂肪を不飽和脂肪に置き換える慣行といった拘束力を持たない目標達成に向けた意識啓発プログラム・健康教育・推進活動・戦略、民間部門(食品・たばこ産業)・市民社会・専門機関の参加促進、健康的な食事と栄養管理を目指す官民パートーシップ構築の課題への取り組みである。

こうした方法により、現実離れした研究室的な思考の枠を抜け出し、東南アジア地域で浮上しつつある肥満危機への対策に取り組む各国政府の支援に向けた実際的かつ政策重視の提言の創出に注力することができる。

国連大学グローバルヘルス研究所は最近、前進に向けた最初の一歩として、東南アジア地域での肥満状況に関する問題点、課題、政策方針について協議するための国際フォーラムを開催した。東南アジア地域内外の多くの国が、「すべての人に健康と福祉を」との目標を始めとする2030年までのSDGs達成に向けた長く険しい道のりを歩むな中、こうした戦略のさらなる拡大が求められている。

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著者

国連大学国際グローバルヘルス研究所(クアラルンプール)の副所長であり、シニア・リサーチ・フェロー兼グローバルヘルスガバナンス部門長も務めている。