アフリカ:気候変動の犠牲者

アフリカは1970年代から気候変動の影響を受け続けてきた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告は、今後もっとも影響を受ける地域にアフリカ大陸を挙げている。

予測されるアフリカの今後

予測される人間の安全保障への影響

気候変動は、アフリカ社会に上記のような影響をもたらすと考えられている。

2008年5月28日から30日に開催された第4回アフリカ開発会議で、アフリカ諸国の首脳たちは、気候変動がもたらす被害への懸念を表明した。我々は参加国の首脳に直接意見を聞く機会に恵まれた。参照ビデオ →

気候変動により、アフリカでは異常気象(干ばつ、洪水、地滑りなど)や伝染病が増加すると予測されている。アフリカは、世界中でもっとも地球温暖化ガス排出量が少ない地域で、気候変動の対応策も進んでいないため、適応にはもっとも多大な努力が必要となる。今日アフリカはすでに、貧困や紛争に伴う人間の安全保障問題に直面している。

アフリカにおける生産力低迷の大きな原因は干ばつだ。降水量と国内総生産(GDP)、土地劣化と貧困には強い相互関係があり、多くの科学者たちは、気候変動がさらに状況を悪化させると予測している。アフリカ開発には、適応と緩和が必要不可欠なのだ。

対策

アフリカの科学者たちは、バイオ技術を1つの解決法として提議している。注意深く使えば、乾燥した荒地でも収穫率の高い穀物を供給することが可能となり、食糧安全保障にも貢献できる。近年、アフリカでもバイオ技術を用いた穀物生産の事例が見られるようになったが、ラテンアメリカやアジア地域ほど盛んではない。アフリカ大陸では南アフリカだけが唯一、バイオ技術を用いた穀物の商品化に成功している。

中でも興味深いのは、ネリカ米の開発だ。ビル・アンド・メリンダ・ゲーツ基金による、干ばつに強いトウモロコシを作ろうという取り組みはケニアに拠点をおくアフリカ農業技術基金で行われている。アフリカの気候変動に関するバイオ技術の研究と実践は、貴重な機会であり、ゲーツ基金のような慈善団体がその中心的役割を担っている。G8先進国はこの分野でより多くの貢献が可能であり、特にバイオ農業研究が進んでいる日本からの援助が期待されている。(横浜市立大学の木原研究所、筑波大学など)

アフリカ諸国にとって、食糧安全保障が最重要課題であることは明らかだ。国際社会は米の供給や従来とってきた応急措置的アプローチの代わりに、アフリカのバイオ技術研究に投資する、あるいは研究そのものをアフリカに移行して、気候変動に耐え得る穀物生産を目指すべきであろう。

9億人以上の人口を抱えるアフリカは、豊富な自然資源に恵まれ、近年では政治的にも安定してきた。アフリカはグローバル市場として台頭するにつれ、諸外国と対等な関係を築くことを望んでいる。アフリカ独自のイノベーション・システムを理解し、現地の知識、価値感、考え方に適合できる技術提供をしてくれる新しいパートナーを求めているのだ。

高等教育と研究の役割

気候変動に起因する諸問題の解決の鍵を握っているのは、高等教育と研究である。これまで国際社会は、アフリカにおける初等教育を重視してきたが、アフリカ人のニーズは別のところにあった。実のところ、アフリカは自力で初等教育を提供することが可能であり、彼らが真に必要としているは、国際市場で競合するための高等教育と研究技術なのだ。日本は1000校の学校建設に投資するよりも、子供たちのためにラップトップコンピューターに投資すべきである。そうすれば1台につき1000冊分の本を貯蔵することが可能となり、大域幅が広く低料金なインターネットで大学間をつなげることができる。アフリカで新しい知識層が育成され、情報経済や最新の高等知識を共有し合うことが可能となる。

G8は高等教育に投資することで貢献できるはずだ。この見解は、2008年6月15日に沖縄で開催されたG8科学技術大臣会議にも反映され、アフリカの研究者とG8の研究者が互いに訪問し合い、今日のさまざまな問題に関する知識を共有すべきだとする“脳の循環”について協議された。

アフリカに必要なのは能力開発だとする考え方は、むしろマイナス効果を及ぼす。一般に国際社会は、アフリカに必要なのは基礎教育や基本的インプットであり、より専門的な高等教育ではないと考えがちだ。しかし実際、アフリカが援助を必要としているのは、基礎分野ではなく専門分野なのだ。アフリカの高等知識に投資することで、国外移住したアフリカの人々が自国に戻り、彼らの知識と情熱をアフリカ発展のために発揮できる可能性が開ける。

将来の展望

気候変動や開発をはじめとする諸問題の打開策の鍵を握るのは、人材能力の開発だ。そのためには、良質のインターネットアクセスが前提条件となる。知識経済から隔離されていては、最先端科学に携わることは不可能だ。気候変動がアフリカにもたらす影響の底深さと幅広さに対応するためには、最新科学/リープフロッグ科学と起業家が不可欠となる。

今日、債務負担の減少と外国直接投資の増加によって、アフリカの多くの国々が6%台の経済成長率を謳歌できるようになった。アフリカのハイテク開発、科学、イノベーションの分野で期待がもてる、と国際的にも評価され始めている。このことは、日本政府がアフリカに4億ドルのソフトローン支援計画を発表したことからも裏付けられている。

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アフリカ:気候変動の犠牲者 by テン・ハーフェ クラウディア is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License.
Based on a work at http://ourworld.unu.edu/en/africa-and-climate-change/.

著者

クラウディア・テン・ハーフェは、国連大学高等研究所(UNU-IAS)のアソシエイトフェロー及び持続可能な開発のガバナンスプログラムのコーディネーター。

地球環境及び持続可能な開発のガバナンスを中心に研究に取り組んでおり、中でも特に気候変動に重点を置いています。国連環境計画の地球環境概況 4 (GEO-4)の執筆責任者。また、カナダのEarth Negotiations Bulletin (ENB) の執筆者でもあり、環境ガバナンスとアフリカにおける持続可能な開発に力を注いでいます。

ジャーナリズム、政治学、国際関係論の学位の他にも、行政学の博士号を国際基督教大学で取得しています。