アフリカと国連気候変動会議:気候の公平性

アフリカ、カトヴィツェ会議、そして気候の公平性

2018年12月の国連気候変動会議、通称カトヴィツェ会議(ポーランド)で見られた、科学を結果論として退ける主張は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書『1.5°Cの地球温暖化』をもってしても「今までどおりの政治」を断ち切ることができないと痛感させた。地球温暖化を摂氏1.5°C度以内に抑えられる時間的余裕は12年しかない。しかも、これを0.5°C逸脱するだけで、アフリカのような脆弱な地域でさらに気候危機が発生するだろうという、IPCCの厳しい警告も、完全に無視されてしまった。

1.5°Cは相対的指標である。換金作物(自給用ではなく、売買を目的に作られる農作物)の収入によって経済が大幅に左右されるアフリカにとって、これは収益と費用の差額がマイナスなるという損失を意味する。ガーナでは、異常な気温と季節的に襲う干ばつが、約80万人の農民を雇用し、毎年20億米ドルの外貨を稼ぎ出すココア産業を脅かしている。アフリカには多額の負債を負った国が多く、サハラ以南アフリカの平均公的債務額は2017年の時点でGDPの57%でる。これは、2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)、特に気候変動対策に対する目標を達成するうえで大きな課題となっている。

カトヴィツェ会議に対して、どこかで見たような気がする理由

これは公平性の問題だろうか。おそらく、完全にそうとは言い切れないだろう。民主化されたボトムアップ型のプロセスでさえ、私利私欲をめぐる絶え間ない言い争いが、根底に強く残っている。2015年のパリ協定は、言葉が具体的行動に移されたという意味で、共同体の勝利だった。「自国が決定する約束草案(INDC)」から「自国が決定する貢献(NDC)」への移行は、新しい動きの始まりだった。

多くの開発途上国は、自国で費用を賄えないほど野心的なNDCを掲げた。これは、ドナーからの拠出を受けずに気候変動対策費を賄うという無条件のNDCに表れている。それでも、IPCCの1.5°C報告書は、1.5°Cの地球温暖化が世界の弱者層、先住民、農業や沿海漁業に生計を依存する地域社会を不当に厳しい苦境に陥れると明言している。

例えば西アフリカは、作物の収量と生産の減少から大きな影響を受ける公算が高く、気候変動のホットスポットとされている。カトヴィツェ会議は気候正義(先進国が化石燃料を大量消費することで生じた気候変動への責任を果たし、途上国が被害を被っている不公平さを正すという考え方)を再び強制的にメニューに載せた。これは、選択肢としてではなく、「前菜」を「主食」から外したままにすると、交渉が何年も続いた不毛な政治的逆向時代に戻ってしまうという、鋭い警告を意味している。

作物に水をやるブルキナファソの農民 — 「私はできた作物をすべて売ることで、家族を養っている。それで幸せだ。雨季には去年と同じように雨が降ってくれるとよいのだが」 Photo: Ollivier Girard/CIFOR, Creative Commons BY-ND-NC 2.0

富める者と貧しい者 — 古い争いの新たな線引き

気候変動交渉では、問題を作り出した者と、解決の責任を負うべき人々との間で、二元的アプローチが取られてきた。産業革命はまず、産業革命の前後とその最中に周縁化されていた国々から、、一次産品と原材料を「採取」することによって支えられた。そして、産業革命の恩恵は当然のごとく、労働者階級を低開発状態から救えるだけの購買力を持った国にしか及ばなかったのである。つまり、周縁化された国々は、二重の意味で代償を払わされているのだ。

先進工業国による古くからの温室効果ガス排出とカーボン・フットプリントは、新たな開発モデルを構成し直す能力や、自らの空を再設計する能力が最も乏しい人々に、甚大な被害を及ぼしてきた。経済開発の端に置かれているアフリカ諸国は、十数カ国で経済成長が見られるものの、気候変動の壊滅的な影響を受け、低迷し続けることになるだろう。多くの国は今から気候変動対策の競争に参加しても、これに勝つために必要な財力やインフラ、技術、情報、知識で経済を保護できないだろう。

カトヴィツェ会議は旧来の議論を公にし、どのような気候変動対策にも関連する要素としての公平性を改めて印象づけた。パリ協定署名国は未だ、金融・政治経済的な観点にこだわっており、集団的責任はしばしば、中身のない言葉で表現されている。公平性と相関関係の強い気候変動ファイナンスは依然として、重大な論点となったままだ。

「駄目なことが分かっているアイディアで前進する」か、新たな声を聞くための場を作るか

IPCC 1.5°C報告書による緊急対策の呼びかけが無視され、パリ協定のルールブックに関する合意さえ、ぎりぎりで成立したカトヴィツェ会議の不十分な成果を見る限り、楽観的になることは難しい。グレタ・サンバーグ(カトヴィツェ会議で演説をした15歳)が述べているとおり、「サイドブレーキを引く以外に、理に適った行動はないのにもかかわらず、これまでの問題の原因となり、駄目なことが分かっているアイディアで前進することだけを論じている」のが現状だ。

我々は一歩下がって、交渉において非現実的となっている手段を再検討する必要がある。NDCを例にしてみよう。アフリカ開発銀行(AfDB)の最新報告書によると、アフリカ54カ国のうち49カ国はNDCを批准しているが、2030年までに適応と緩和のターゲットを達成するためのコストは、4兆米ドルに上ると見られている。誰がこの費用を負担するのだろうか。NDCと国際的行動との間に矛盾があることは、明らかだ。結局、パリ協定に拘束力はない。

気候変動対策のリーダーシップは、西側諸国にのみ裁量権があるわけではない。アフリカには1.5°C報告書の調査結果を、より安全な成長に向けて活用できるチャンスがある。この大陸には、豊かさと両立する気候変動対策の策定を恐れない、強いリーダーが必要だ。都市化や人口構成、若年雇用に関連する昨今の大きな潮流を考えると、気候変動によって生じかねない悪影響をよりよく予測できれば、アフリカは新たな気候変動対策への弾みによって大きな利益を得ることができる。大陸全土で、創意工夫とイノベーションが大きな高まりを見せている。インターネットとモバイルの接続性がこれまでにないレベルに達したことで、テクノロジー拠点が急増しており、アフリカ大陸では現在、442箇所の拠点が活動しているほか、新種の起業家も生まれており、アフリカの若者の10人に7人は現時点で自営業者となっている。

個々人が地球で生きる時間には限りがある。我々は地球の「管理人」として、次世代の管理者に引き継がねばならない。アフリカの数カ国は新たな油田やガス田の発見を切望している。しかし、化石燃料を原動力とする経済的繁栄は、あらゆる面から課題がある。すぐに行動を起こし、民間セクターや若者をはじめとする「新旧」のステークホルダーが活躍できる空間を広げる責任は、気候変動それ自体と同じくらい重くなっている。この要請を無視すれば、自分たちの危険が高まるだけだ。

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